2021 Fiscal Year Research-status Report
パワー半導体デバイスダイアタッチ接合部の疲労き裂ネットワーク破壊寿命予測法の確立
Project/Area Number |
21K04182
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
苅谷 義治 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60354130)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | パワーサイクル / ダイアタッチ / 熱疲労破壊 / 等2軸応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,パワー半導体ダイアタッチ接合部のパワーサイクル試験同様の負荷を与える等2軸応力熱疲労試験方法として,低熱膨張材料のスーパーインバーにダイアタッチ材料を接合した試験片に短周期型パワーサイクル同様の高速温度サイクルを与える試験法を提案し,装置を試作,また,その装置を用いてAgナノ粒子焼結材の熱疲労挙動を確認した.高速温度サイクルを与える試験装置は,本研究で独自に考案し,水冷式アルミニウムヒートシンク上に放熱シートを介して窒化アルミニウムヒーターを設置し,その上に熱伝導グリースを介して試験片を設置,ヒートシンクの温度を一定に保ち,ヒーターの短周期On・Offを繰り返すことでパワーサイクル試験同様の高速温度サイクル試験を実現する.この試験により高温ダイアタッチ材として期待されるAgナノ粒子焼結材の等2軸熱疲労挙動を確認した.試験片は平均粒径100nmのAgナノ粒子ペーストをスーパーインバー上に,厚さ20ミクロン塗布し,無加圧,大気圧環境下にて焼結温度473Kで30分保持することで焼結して得た.温度条件は,最低温度323K,最高温度498Kとして,それぞれの温度に9秒,11秒で到達するようにヒーターの出力を制御した.等2軸応力下における熱疲労試験の結果,試験片全域において,初期に存在する微小な欠陥からランダムな方向にダイアタッチ鉛直方向の疲労き裂が発生・進展することが観察され,等2軸応力であるため,き裂の進展方向はランダムであり,破壊が進めば,各き裂同士が連結し,き裂ネットワークを形成すると予想される結果が得られた.この試験によりパワーサイクルで発生するダイアタッチ材の疲労破壊を解析できる指針が得られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のとおり,パワー半導体ダイアタッチ接合部のパワーサイクル試験同様の負荷を与える等2軸応力熱疲労試験方法を考案し,装置の作成,また,疲労試験の実施を行った.疲労試験の結果,事前のFEMシミュレーションどおり,パワー半導体ダイアタッチ接合部の短周期パワーサイクル試験で起こるダイアタッチ材料に鉛直方向のき裂が発生,進展することが確認された.この開発した試験法によりダイアタッチ接合部のパワーサイクル破壊の解析が比較的容易に行うことが可能となり,次年度以降の研究を予定どおりに進める指針が得られたため,概ね順当に進展しているとした.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,開発した試験法により,高温ダイアタッチ材として期待されるAgナノ粒子焼結材など複数種のダイアタッチ材料に関して,複数条件で高速温度サイクル試験を実施する.この試験により得られた結果から,疲労き裂ネットワーク破壊のメカニズムについて解析するとともに,疲労寿命予測に必要なき裂発生のデータおよび 疲労き裂進展のデータを取得する.また,これらのデータは,統計手法により整理し,これまでとは異なる複数箇所で発生したき裂からの損傷発展を予測する新たな疲労寿命予測方法の検討を行うことを計画する.
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症蔓延のため,予定していた学会がオンライン開催となり,旅費の支出がゼロであったため,その旅費を試験機作成の物品費に用いたが,若干の残額が生じたため.
|