2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K04184
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
塚本 新 日本大学, 理工学部, 教授 (30318365)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超高速磁化制御 / 全光型磁化反転 / 角運動量流 / フェリ磁性 / 超短パルス光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超短パルス光を原因・手法とし、磁性体内に角運動量流を誘起、副格子磁化構造および多層膜構造による過渡応答の設計と超高速分光計測により探究を進めるのが目的である。 本年度は主に、前年度の知見に基づき、透明誘電体(光学干渉層)/希土類遷移金属フェリ磁性体GdFeCo垂直磁化膜からなる多層膜の、近赤外(中心波長800nm)超短パルス光に対する光学応答の内、光学干渉効果による光吸収特性および実行的磁気円二色性(左右円偏光に対する吸収エネルギー差)に注目し、検討を進めた。得られた注目すべき実験的知見として、光学干渉層厚の増大と共に、多層膜での光吸収エネルギー量が単調に増大する範囲(SiN厚:20~100nm)に於いて、実行的磁気円二色性は中間厚にて符号反転を示す事が明らかとなった。偏光依存型全光型磁化反転現象に対し、前者は超短パルス光誘起磁化反転に要する吸収光エネルギー閾値を、後者は、偏光依存特性の指標となる左右円偏光に対する吸収エネルギー差の強度および入射円偏光のカイラリティおよび磁化ベクトル間の符号関係を決定する性質であり、それらが異なる光学干渉特性を有する事を示す。さらに、全光型磁化反転を誘起可能な高強度超短パルス光に対し、非線形光学効果の寄与が想定されるが、光吸収特性、磁気光学効果への寄与につき検討を行い、比較的小さな水準である事も明らかとなった。 また、異なる光誘起超短時間磁気励起機構の出現を図る多層構造試料として、①スピン軌道相互作用の大きな非磁性重金属層、②遍歴電子磁性を有する3d系金属磁性層、③大きな局在磁気モーメントを有しフェルミレベル付近の状態密度が低い4f系金属磁性層、④ 3d/4f系合金磁性層、の組み合わせからなる種々の多層構造体を作成し、熱平衡下における、磁気光学効果、異常ホール効果、異常ネルンスト効果等を評価し、それらの相関を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究テーマに係る超高速磁気応答材料・構造の探究法として、①磁気系の励起機構、②磁気的過渡応答の制御、の二つのアプローチを複合化する計画である。本年度は、①の主要要素となる磁化過渡応答の光学的励起・計測手法に関し、高強度超短パルスレーザー照射条件下における、光学機能膜付加による磁化反転特定制御の知見の緻密化、②の主要要素となる、異なる光誘起超短時間磁気励起機構の出現を図る多層構造試料の設計・制作および熱平衡下での物性評価、を達成した。これらにより、①②の複合検討が可能となり、本研究の具体的目的達成に向け重要なステップであると考えられる。 本年度中、超短パルスレーザー装置の故障により約半年間超短時間物性評価が実施不可能となる想定外の状況が生じ、極短時間物性に係る検討が当初予定より遅延したが、研究実績の概要でも述べたように、異なる光誘起超短時間磁気励起機構の出現を図る多層構造試料の設計・制作および熱平衡下での物性評価の計画を先行するよう計画を調整する事で、研究計画全体としては概ね予定通りに進める事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度成果である、光金属磁性体の励起制御・光学/磁気光学物性評価法、および、異なる光誘起超短時間磁気励起機構の出現を図り作成・熱平衡下での物性評価を行った種々の多層構造試料に対し、主として超短時間減磁現象と呼ばれる光照射に続く急峻な磁化減少現象を利用した磁気系の励起機構の検討・利用を進める。これらにより、エネルギーおよび角運動量の超高速移行パス・リザーバーを内包する多層構造化により注目磁性薄膜磁化特性の超短時間応答の制御を図る。
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Research Products
(4 results)