2021 Fiscal Year Research-status Report
Modeling of Stochastic Behavior of ReRAM Devices for Neuromorphic Applications
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21K04186
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
鎌倉 良成 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (70294022)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ReRAM / モンテカルロシミュレーション / 回路シミュレーション / ニューロモルフィック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、抵抗変化型メモリ(ReRAM)の回路シミュレーション用コンパクトモデルを開発する。ニューロモルフィックコンピューティングにReRAMを活用する際に要求されるアナログメモリとしての特性再現を主要な目的とし、ReRAMの動作機構が本質的に内在する「ゆらぎ」の統計性を正確に反映することを目指す。研究手法として、(1)ReRAM内部に形成される導電性フィラメントの挙動を原子論的に模擬することができるKinetic Monte Carlo (KMC)法を基にしたシミュレーション解析、および(2)ReRAM素子の電気的振る舞いを長期にわたり実測する時系列分析、を2つの柱とし、時間的(Cycle-to-Cycle)あるいは空間的(Device-to-Device)な特性ゆらぎの特徴抽出、機構理解、モデリングにつなげる計画である。 2021年度は、先行研究の理論モデルを参考にしながら、ReRAM構造内部を2次元の格子状に分割し原子の挙動を・モンテカルロ法で追跡するKMCシミュレータを作成した。電圧印加により上下電極間を結ぶ導電性フィラメントが形成される過程を再現するため、(1)イオンが格子間を移動、(2)金属原子がイオンへ遷移、(3)金属イオンが原子へ遷移する過程を考慮した。また、隣接する金属原子間を低抵抗、それ以外の部分を高抵抗と仮定した上でReRAM内部を抵抗回路網で表し、その合成コンダクタンスをキルヒホフの法則に基づき算出する機能を付与した。 作成したシミュレーションを用いて、ReRAMの電流-電圧特性にみられるヒステリシス特性を解析したところ、実測結果に現れるヒステリシス特性の再現に成功し、シミュレータの妥当性を検証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究遂行に必要なシミュレーションツールのコーディングおよびそのデバッグを行った。特に中心的役割を果たすKMCシミュレータにおいては、必要な基本機能を組み込むことができ、電流-電圧特性の測定値に見られるヒステリシス挙動を定性的に再現することができた。さらに、内部の原子挙動やフィラメント形成の様子をリアルタイムに観察することのできるアニメーション表示機能を持たせるなど、ReRAM動作機構の理解を深めるためのユーザインタフェースにも配慮した。なお現状、シミュレーション対象は、近似的な2次元系のシミュレーションにとどまっており、当初の研究計画で予定していた3次元シミュレーションについては、コードの改良作業が遅れている。系内に形成される導電性フィラメントが複雑な形状となることも予想され、その可視化手法についても検討を進めている。 一方、実験の準備状況であるが、Pythonを用いてPC制御を行う測定系の整備が完了し、それを用いて多数回(>100,000回)の電圧掃引サイクル実験を行った。ヒステリシス特性がサイクル毎に変動すること、また掃引を繰り返すことで徐々にヒステリシスの大きさが縮小する長期的劣化の傾向があること、などを実験的に確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
KMCシミュレーションの対象を3次元系にも対応できるようプログラムを改良し、より現実的なRaRAM特性解析を行うことのできるフレームワークの完成を目指す。ユーザがフィラメントの3次元的形状およびその動的挙動を観察できるようにするため、没入型VRディスプレイを用いた可視化システムを利用することを計画している。 さらに、KMCシミュレーションの結果と実験値との間の橋渡しをするため、回路シミュレーションを実施する予定である。LT-SPICEのサブサーキット機能を利用することで、ReRAMのコンパクトモデルを組み込んだ回路シミュレーションを行い、Cycle-to-Cycle特性ゆらぎの挙動を実験値と比較する。さらに、そのような特性ゆらぎがReRAMを用いた回路動作(ニューロモルフィック応用を想定したアナログメモリ回路など)に及ぼす影響についても検討を開始する。
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Causes of Carryover |
出張を行わず、学会参加のための旅費が不要となったため。本年度は、オンライン以外の形式で開催される学会に参加して外部研究者と対面でのディスカッションを行いたい。そのための旅費に使用する予定である。
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