2021 Fiscal Year Research-status Report
可視近赤外全域を1台で測定可能な超広波長帯域・小型分光イメージングシステムの実現
Project/Area Number |
21K04187
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
若生 一広 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (90500893)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分光イメージング / 液晶波長可変フィルタ / LCTF / 非破壊非侵襲解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
分光イメージングは、航空宇宙、農林水産、医療、鉱工業など多分野で応用が始まっている。非破壊・非侵襲による解析には、可視域から近赤外域(400nm-2500nm)の波長が極めて有効であるが、特徴毎の波長帯域が重なる場合が多く、加えて水素結合/分子間相互作用によるバンドシフトがあるため、現場の動的環境では広い波長帯域を一度に細かく測定できることが精度向上のために重要となる。そのため、可視近赤外全域(400nm-2500nm)を1素子で網羅できる分光イメージング用フィルタの実現が強く望まれている。一方で、波長1600nm-2500nmでの液晶素子電気光学特性は未解明な点が多いため、可視近赤外全域(400nm-2500nm)を1素子で網羅するLCTF設計制御理論が未構築という課題がある。 本研究では以下の2課題を解明し、その結果を基に現場で可視域から近赤外域全ての範囲(400nm-2500nm)を1つのLCTF素子(UWR-LCTF)により2000波長以上撮影可能とする、超広波長帯域・小型高性能分光イメージングシステムを実現し、新たな応用を創出することを目的として研究を進めている。 1.近赤外域、特に1600nm-2500nmにおいて、屈折率異方性や誘電率異方性の異なる数種の液晶材料を用いて液晶素子を試作し、電気光学特性を測定して素子を構成する材料に必要な条件および光学特性を制御する手法を解明・確立する。 2.確立した制御手法を用いて、可視域から近赤外域全ての範囲(400nm-2500nm)で2000以上の透過波長を選択可能なUWR-LCTFを設計し、試作評価を行い実証する。 令和3年度は上記1.について実施した。その結果、素子を構成する材料について候補となる材料を選定でき、それらの材料を用いて光学特性を制御する手法について解明・確立した。以上より、当初計画通りの進展を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、近赤外域、特に1600nm-2500nmにおいて、屈折率異方性や誘電率異方性の異なる数種の液晶材料を用いて液晶素子を試作し、電気光学特性を測定して、素子を構成する材料に必要な条件および光学特性を制御する手法を解明・確立することを目的として研究を行った。以下の具体的項目について進捗状況を示す。 1)屈折率異方性や誘電率異方性の異なる3種の液晶材料を用いてUWR-LCTF用液晶素子を設計する。→ 候補となる液晶材料3種について、液晶素子を設計した。 2)液晶素子試作は、これまで実績を有する協力企業に外注する。→ 候補液晶材料3種について、液晶素子を試作した。 3)試作液晶素子の電気光学特性を測定して、材料・素子構成の必要条件を明確化する。→ 試作した液晶素子の電気光学特性について測定評価を行った。その結果、候補とした液晶材料3種において、目標とするUWR-LCTF特性を実現可能とする最も特性の良い液晶材料1種を決定した。また、液晶素子を構成する基板・透明電極膜について、良好な透過率特性を得たことにより、適用材料の必要条件を明確化したとともに妥当性を確認した。 4) 得た結果をふまえ最適化設計・改良試作を行い、光学特性制御手法を解明・確立する。→ 2)での試作液晶素子の電気光学特性評価より得た結果をふまえ、最適化設計を実施した。更に、適用材料を用いた光学特性制御手法について明らかにし、確立した。改良試作については、試作外注企業のスケジュールより、次年度(令和4年度)に実施する方針とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度まで研究計画通りに進んでいることより、当初計画に基づき推進する方針である。 令和4年度:UWR-LCTFの設計、試作、特性評価 1)確立した制御手法を用いて、可視域から近赤外域全ての範囲(400nm-2500nm)で2000以上の波長を選択可能なUWR-LCTFを設計する。2)UWR-LCTFの組立、試作は、これまでの研究開発で技術移転した協力企業に外注する。3)試作したUWR-LCTFの特性評価を行い、効果を実証する。 令和5年度:UWR-LCTFによる超広波長帯域・小型高性能分光イメージング技術の確立 1)前年度までに得られたUWR-LCTF測定結果をふまえ、改良試作・特性評価を行う。2)UWR-LCTFを用いた超広波長帯域・小型高性能分光イメージングシステムについて、これまでの研究開発で技術移転した協力企業と連携し設計する。3)設計に基づき、超広波長域・小型高性能分光イメージングシステムを試作し、技術を確立する。本システムの試作は別途予算を手配して行う。
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Causes of Carryover |
当初は令和3年度に液晶素子作成に必要な材料および液晶素子試作費用、旅費を計上していたが、他の予算で液晶素子の作製・評価が実施できた状況である。旅費についてはコロナ禍を受けオンラインでの協議に切り替え対応できた。一方で、次年度(令和4年度)に予定している液晶素子改良試作・UWR-LCTF試作に必要な予算が十分ではないことから、次年度使用額を充当・活用することにより、当初計画以上に効果的に研究を推進することが可能である。
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