2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of fundamental technologies for practical superconducting terahertz oscillation devices
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21K04189
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
中島 健介 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70198084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 敦 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70313567)
山田 博信 山形大学, 大学院理工学研究科, 助教 (50400411)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 固有ジョセフソン接合 / テラヘルツ波 / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bi-2212薄膜型固有ジョセフソン接合(IJJ)の優れた放熱性を生かし接合構造を最適化する前提となるIJJ実温度とIJJから熱浴への放熱性をIJJの電圧電流特性から評価する手法を提案した。 従来のバルクメサ型IJJは熱浴との間に放熱を妨げる接着層とBi-2212ベーサルクリスタルが存在するため放熱性が低く,接合動作時の発熱が発振動作に悪影響を及ぼす。一方,我々が開発した薄膜段差型IJJはMgO単結晶基板上にBi-2212が直接成膜されているため放熱を妨げる接着層が無く液体窒素温度付近の高温でテラヘルツ波放射に成功しているが,これまでは放熱性の差を評価する手段が無かった。本研究では,Bi-2212の伝熱特性とBi-2212-IJJの構造に着目して,熱源であるIJJから熱浴である冷凍機コールドヘッドへの放熱を単純な一次元熱伝導モデルで表現し,接合の実温度と接合から熱浴への放熱抵抗がIJJの電圧電流特性に与える影響を指標化した。その結果,薄膜段差型の放熱抵抗指標はバルクメサ型のそれと比べ10分の1以下であること,バルクメサ型の接合実温度指標-コールドヘッド温度特性を薄膜段差型のそれと比較したところ,テラヘルツ波放射時の接合実温度が両者でほぼ一致することが明らかとなった。さらに,薄膜段差型IJJにおいて明らかとなった熱浴への低い放熱抵抗がBi-2212薄膜とMgO基板の良好な熱接触にあると示唆されたことから,薄膜段差型よりも構造が単純で製作が容易な薄膜メサ型IJJを新たに製作しその放熱特性を評価した。その結果,薄膜メサ型の放熱性は,薄膜段差型と遜色が無く,高温領域でのテラヘルツ波発振が十分可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Bi-2212薄膜IJJによる実用的なテラヘルツ波出力を得るためには,動作時に接合で発生する熱を効率的にコールドヘッドへ放熱することが重要である。本研究では,一次元熱伝導モデルによる発熱解析に基づいて,単一接合の接合数を含む構造の最適化を最優先課題としている。令和3年度の研究経過は概ね想定どおりであり,個々の接合の電圧電流特性から接合温度と接合からコールドヘッドへの熱抵抗の指標が得られることを明らかにするとともに,新しく開発した薄膜メサ型IJJが良好なテラヘルツ波発振特性を持つ薄膜段差型と遜色の無い放熱性能を有することを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
一次元熱伝導モデルによる熱設計を取り入れた接合構造の最適化を進めるためには,熱抵抗の起源を明らかにする必要がある。そこで,接合の放熱性を支配する要因として熱抵抗Bi-2212自体の異方的熱伝導とBi-2212/MgO界面熱抵抗に着目してそれぞれの影響を明らかにする。 また,単一のIJJには,発熱と放熱のジレンマから,接合数の増加による高出力化に限界がある。そこで,基板の誘電体の効果を含めて複数のIJJを準光学的に結合させるコヒーレント電力合成による高出力化に取り組むとともに,小型パルス管冷凍機によるテラヘルツ波発振動作試験に着手する。
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Causes of Carryover |
研究成果を発表した国際会議(EUCAS)がオンライン開催になったこと並びに研究資料収集に関わる国内出張を自粛したことによる旅費支出の削減したことに加えて,研究計画に沿った極低温実験において液体ヘリウム等の寒剤に代えて無冷媒冷凍機を使用したことにより実験消耗品費が削減できた。
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Research Products
(2 results)