2021 Fiscal Year Research-status Report
その場観察法を用いた有機半導体薄膜の成長メカニズムの解明
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21K04195
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
服部 吉晃 神戸大学, 工学研究科, 助教 (90736654)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機薄膜トランジスタ / UVオゾン処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
フレキシブルデバイスやウェアラブルデバイスを実現するためには、熱に弱い柔軟なフィルム上にトランジスタを安価に作製する技術が必要である。近年、安価で大面積に有機トランジスタを作成する新しい手法として、有機溶媒に有機半導体材料を溶かした溶液をインクとして、印刷技術により基板に塗布し、有機半導体薄膜を製膜する手法が注目されている。この手法では基板に溶液を塗り広げて溶媒を乾燥させることで製膜するため、原理上、親水性の基板が望ましい。しかし、一般的に親水性基板の表面にはトランジスタのキャリア移動度を低下させるキャリアトラップが多数あることから、電子デバイスの観点としては疎水性基板が望ましく、これらを両立することは困難である。そこで、本研究では疎水性の基板を親水化するプロセスの処理時間に着目し、溶液の塗布が可能な最低限の処理を基板に行うことを提案し、検証した。撥水性基板として、絶縁膜の表面に有機単分子膜を製膜し、UVオゾン処理を行うことで親水化させる。有機薄膜はスピンコート法により溶液から製膜した。作製した薄膜を用いて有機トランジスタを作成し、電気特性の評価を行ったところ、UVオゾン処理時間を適切に制御することで、最大で4.76 cm2/(Vs)のキャリア移動度をもつ有機トランジスタが作製された。この値は過去の文献と比較しても、親水性基板を利用し、スピンコート法で作成されたトランジスタとしてはかなり高く、親水性かつトラップサイトの少ない、理想的な界面が形成された可能性がある。有機単分子膜の一部を親水化させる本手法は塗布型有機半導体トランジスタの作成において汎用的に適応可能な技術であり、実用化への貢献が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
塗布型有機薄膜トランジスタの作成において、一般的に困難であると考えられているトラップレスな親水性基板が形成された可能性がある。当初、最終年度に行う予定であった電気的に評価を前倒しして、初年度で行えた点については進展があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究においては、スピンコート法により多結晶の有機薄膜を形成し、トランジスタによって評価を行ったため、電極の接触抵抗や多結晶薄膜内でのキャリア散乱の効果が詳細に排除できていない。今後は、これらの効果を排除し、より本質的な界面の評価を行うことが必要であると考えられる。
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Causes of Carryover |
研究計画当初は、光学的な有機薄膜の評価を行うための装置の予算を計上していたが、電気評価において大きな進展があり、優先的に研究を進めたので次年度の使用が生じた。
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