2022 Fiscal Year Research-status Report
閉じ込め構造圧電装荷デバイスによるレーザ誘起強力弾性表面波発生と皮内投与への挑戦
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21K04202
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
會澤 康治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40222450)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レーザ / 弾性表面波 / Lamb波 / 圧電体 / 皮内投与 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、薬剤透過を促進できる強力な弾性表面波の発生と人工皮膚表面への高効率な物質導入を可能にするデバイスの開発を目的とする。令和4年度は、前年度に構築したレーザ光学系および弾性表面波検出系を使って弾性表面波発生に有効な構造およびパルスレーザを照射で発生・伝搬する弾性表面波の特性などについて重点的に調べた。この調査の過程でパルスレーザを球殻に照射して発生させたLamb波を人工皮膚表面に結合させるといった当初に計画に無い新しいアイデアを創出したのでこれについても検討した。 実験では、Nd:YAGレーザの第2高調波(波長532nm、最大パルスエネルギー約100 mJ)を黒色ポリプロピレン製の球殻(直径40mm)に照射する。発生したレーザ誘起Lamb波強度は、レーザ照射点の反対側にエアプローブをターゲット表面から2 mm離れた位置に設置し空中に漏洩した音波強度を検出した。 波形データの周波数スペクトルとレーザエネルギーの関係を3つの周波数帯(0~2 kHz, 2 kHz~20 kHz, 20 kHz~)にわけて各領域での最大値を評価した。結果として、周波数帯が0~2 kHzでの最大値はレーザエネルギーに依存しないが、周波数帯が2 kHz~20 kHz,と20 kHz~における最大値はレーザエネルギー依存性があった。この結果は照射エネルギー密度が異なっても同じ傾向であった。このことからレーザ誘起Lamb波の周波数成分は2 kHz以上にあることが分かった。さらに球体に接着した黒色ゴム(FKM)にパルスレーザを照射することで安定したLamb波の発生を確認できた。また球殻に接着した黒色ゴムを水中に沈めパルスレーザを照射するとレーザプラズマの閉じ込め効果によりLamb波強度が増大することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は既設のQスイッチパルスレーザを利用したレーザ誘起弾性表面波の伝搬特性の解明と弾性表面波増強を試みた。この過程で球殻上に発生させたレーザ誘起Lamb波の適用についても検討し、その発生と伝搬特性を調べた。これまでのところ概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本事業の最終年度に当たる令和5年度は、前年度までに構築したレーザ光学系および弾性表面波検出系を使い弾性表面波あるいはLamb波の生体ファントム表面への結合方法および弾性表面波あるいはLamb波が印加された人工皮膚を模した生体ファントム表面付近の物質透過性について重点的に調べる。具体的には、生体ファントムを接触させた圧電材料(ポリフッ化ビニリデン)に黒色ゴムからなる球体(直径40mm)表面に発生させたレーザ誘起弾性表面波あるいは黒色ポリプロピレン製の球殻(直径40mm)上に発生させたレーザ誘起Lamb波を伝搬させ生体ファントム表面に音響結合させる。この際の弾性波強度はポリフッ化ビニリデンの圧電効果で発生した電荷量から見積もる。また蛍光物質を生体ファントムとポリフッ化ビニリデン間に挿入し弾性波印加によって生体ファントム表面から蛍光物質の導入を試みる。具体的には弾性波印加後に生体ファントム断面の蛍光顕微鏡観察を行い蛍光物質の表面からの侵入深さを測定することで照射レーザエネルギーと侵入深さとの関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
レーザ誘起Lamb波の測定を実施したことで当初予定していた材料費等に変更があったため消耗品費相当額が次年度使用額として生じた。
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