2022 Fiscal Year Research-status Report
液晶と導電性高分子膜による高機能ミリ波制御素子の創製
Project/Area Number |
21K04205
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
田中 将樹 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60353231)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 桂一 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20290702)
河村 希典 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (90312694)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミリ波 / 液晶 / 導電性高分子膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、ミリ波システムの課題である小型・軽量、加工性、低消費電力、低コスト、省スペースを解決するために、液晶と導電性高分子膜を組み合わせたミリ波制御素子の新しい製作方法と新規構造を創製することである。電極材料として導電性高分子膜をミリ波に適用するため、導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)膜のミリ波透過特性の測定を試みた。具体的な数値目標として透過率50~70%を目標とした。 基板材料としてガラス、PET、PC(ポリカーボネート)の樹脂材料を使用し、バーコートによりPEDOT/PSSの塗布を行った。表面処理としてケミカルエッチングを施すことで、製膜の安定化を行った。表面処理、PEDOT/PSS濃度の調整の最適化を試み、表面抵抗80~150Ω/sq程度、光透過率80~90%の比較的低抵抗な透明導電膜が得られた。試作した導電膜の75GHzミリ波透過率は30~50%程度となった。 PEDOT/PSSを塗布したPETおよびPC基板により、液晶セルを試作し、光透過率およびミリ波透過率の測定を行った。セル厚11μmのPET基板による液晶セルで25%程度、PC基板による液晶セルで50%程度の光透過率が得られた。また、セル厚200μmのPET基板による液晶セルで75GHzミリ波で30%程度の透過率が得られた。 また、ミリ波を制御する素子への適用を考え、ミリ波帯フォトニック結晶構造の設計・試作を行った。液晶を封入して試作したPET基板により電圧を印加してミリ波透過率への影響を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
導電性高分子であるPEDOT/PSS膜のミリ波透過特性として数値目標とした透過率50~70%は比較的高抵抗な導電膜では実現できている。製膜条件の最適化を試み、素子への適用として適切な抵抗値を有するPEDOT/PSS膜としては40%程度のミリ波透過率が得られた。目標値よりも低いものの、液晶を駆動する導電膜としては十分と考える。ここで試作した導電膜の膜厚、分光特性等、基礎的特性の測定のすべてはまだ終わっていない。 また、ミリ波制御液晶素子については、素子構造に液晶を適用した素子としてフォトニック結晶構造を試作した。導電性高分子を製膜した樹脂基板を用いてフォトニック結晶構造のミリ波透過特性の変化は確認できたが、素子の更なる構造設計の改良が必要であることがわかった。フォトニック結晶構造以外の素子構造として、液晶レンズへの適用も進めている。当初の計画からは若干遅れているが、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、導電性高分子膜としての試作したPEDOT/PSS膜の膜厚や分光特性、30G~90GHzの広い周波数領域にわたるミリ波透過特性等の基礎特性の測定を引き続き今後も進めていく予定である。また、基板材料として、加工性やミリ波帯における誘電特性も考慮して、ガラス以外の樹脂材料の適用検討も考えている。 さらにミリ波制御素子として、積層型の液晶素子やフレネル液晶レンズの設計・試作および導電性高分子膜の適用を検討していく予定である。制御素子の構造については当初の研究計画で提案したレンズ構造にこだわらず、ミリ波制御素子として、フォトニック結晶構造やメタサーフェスといったフィルタ素子への適用の可能性も模索していく。 これまでの結果における問題点を検証し改善を試み、ミリ波ビーム制御素子の構築の可能性を検討する。そして導電性高分子膜を適用した液晶素子のセンシング等への応用の可能性に向けての検証、総括を行う。
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Causes of Carryover |
学会発表がオンラインやハイブリッド発表となり旅費の支出が少額であった。また、円高の影響もあり、購入予定であったミリ波測定に使用するコンポーネント等の購入計画を見直しをしたため、次年度使用額が生じた。消耗した部品の購入と不足している測定用の装置費用および研究の総括に向けての成果発表費用として、翌年度分として請求した助成金と合わせて購入する予定である。
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