2021 Fiscal Year Research-status Report
含水率の影響を受けない表面吸水試験によるコンクリート構造物の耐久性評価手法の確立
Project/Area Number |
21K04210
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
細田 暁 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (50374153)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 表面吸水試験 / コンクリート構造物 / 耐久性 / 吸水抵抗性 / 含水率 / 品質評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らが開発したコンクリート構造物用の表面吸水試験(SWAT)は,完全非破壊でコンクリート構造物の吸水抵抗性を評価できる。吸水試験はコンクリートの含水率の影響を大きく受けることが,広い普及を阻んできた。申請者のこれまでの研究により,ある含水率の範囲では測定結果がほとんど含水率の影響を受けないことが分かってきた。本研究では,その範囲で含水率の影響を受けないメカニズムを解明し,その範囲で計測された吸水抵抗性がコンクリート構造物の耐久性を評価するために最適な指標であることを明らかにする。その上で,SWATを用いた実際のコンクリート構造物の耐久性評価手法を確立する。 種々の配合のコンクリートに対して、コンクリートの含水率を変化させて、実験と数値シミュレーションにより表面吸水試験での吸水試験を実施した。数値シミュレーションには、前川宏一教授らにより開発されてきたDuCOMを用いた。実験と数値シミュレーションの双方により、吸水試験の結果がコンクリートの含水率の影響をほとんど受けない領域(台地ゾーン)があることが明らかとなった。この領域よりも含水率が高いと吸水しにくくなり、含水率が低いと吸水しやすくなる。また、数値シミュレーションにより、10分程度の短時間の吸水試験において、「台地ゾーン」が確認され、4時間程度の比較的長時間の吸水試験では、「台地ゾーン」が消失することが判明した。 今後の研究により、台地ゾーンが存在するメカニズムのさらなる分析と、台地ゾーンにより計測された吸水抵抗性が、コンクリート構造物の耐久性を適切に評価できる指標であることを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種々の配合のコンクリートに対して、コンクリートの含水率を変化させて、実験と数値シミュレーションにより表面吸水試験での吸水試験を実施した。数値シミュレーションには、前川宏一教授らにより開発されてきたDuCOMを用いた。実験と数値シミュレーションの双方において、吸水試験の結果がコンクリートの含水率の影響をほとんど受けない領域(台地ゾーン)があることを明らかにすることができた。コンクリート構造物の吸水試験において、「台地ゾーン」の存在があることを明瞭に指摘した研究は過去に存在しない。コンクリート構造物の耐久性を評価するための非破壊の透気試験・透水試験・吸水試験等については、過去に膨大な研究がなされているが、それらの実装に対して、コンクリートの含水率の影響が常に障害として立ちはだかってきたと言える。本研究で得られた知見は、この障害を乗り越えるための貴重な成果であると考えている。 コンクリート構造物は表面から奥行に向かって含水状態が異なる場合がほとんどであり、小型の試験体でない構造物で表面吸水試験を実施する際に、計測対象のコンクリートが台地ゾーンにあるか否かをどのように事前に把握するかが大きな課題である。そのための手法(非破壊の含水計)の候補があり、今後の研究でこの手法の妥当性を検証する。 また、今後の研究により、台地ゾーンが存在するメカニズムのさらなる分析と、台地ゾーンにより計測された吸水抵抗性が、コンクリート構造物の耐久性を適切に評価できる指標であることを明らかにする予定である。 以上により、研究申請時に掲げた目標はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験と数値シミュレーションの双方において、吸水試験の結果がコンクリートの含水率の影響をほとんど受けない領域(台地ゾーン)があることを明らかにすることができた。 コンクリート構造物は表面から奥行に向かって含水状態が異なる場合がほとんどであり、小型の試験体でない構造物で表面吸水試験を実施する際に、計測対象のコンクリートが台地ゾーンにあるか否かをどのように事前に把握するかが大きな課題である。そのための手法として、道路のコンクリート床版上面用に開発された非破壊の含水計を使用することを検討している。この含水計は、コンクリートの表面で計測を行うが、表面吸水試験の計測深さ(表面から10~20mm程度)における含水率を敏感に検出していると考えており、構造物ののコンクリートの計測領域が台地ゾーンの含水率にあることを把握できると考えている。この検証を2年目に実施する予定である。 また、今後の研究により、台地ゾーンが存在するメカニズムのさらなる分析と、台地ゾーンにより計測された吸水抵抗性が、コンクリート構造物の耐久性を適切に評価できる指標であることを明らかにする予定である。特に、土木学会規準による水分浸透速度係数と表面吸水試験の相関について、データの数が十分に蓄積されていないため、種々の配合のコンクリートについて、データを蓄積する予定である。社会の生産性向上の観点から、プレキャストコンクリート製品の有効活用が望まれているが、蒸気養生の影響を受けるプレキャストコンクリートについても、水分浸透抵抗性と表面吸水試験の試験データを蓄積する予定である。
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Research Products
(4 results)