2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of simplified chloride ion mapping method by fully utilizing the principle of silver nitrate solution spraying method
Project/Area Number |
21K04224
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
青木 優介 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70360328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 硝酸銀溶液噴霧法 / 塩化物イオン / マッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,硝酸銀溶液噴霧法の原理をフル活用した簡易型塩化物イオンマッピング方法を確立し,社会に実装することである。2021年度~2023年度の研究期間内では,本方法の技術課題を解決し,本方法が実現する塩化物イオンのマッピング精度を検証することを目的としている。 2021年度の計画では,技術課題のうち,①試験面の切断精度の向上,②試験面における骨材の判別,に取り組むことになっていた。そこでまず,基本的な試験結果を得ようと試験を実施したところ,試験面上に白色の生成物が生じ,本来の目的であるマッピング結果を覆ってしまうという事例が確認された。この原因について考察したところ,塩化物イオン量が比較的小さい箇所では,高濃度硝酸銀溶液の噴霧による銀イオンの余剰分が,試験面のpHを7程度に低下させるために試験面に噴霧した酢酸中の酢酸イオンと化合し,白色の酢酸銀沈殿が生じたためと考えた。なお,酢酸銀の溶解度積は塩化銀のそれよりも100倍以上大きいため,試験面上に現れているマッピング結果に大きな影響は生じていないと考えられる。しかし,白色の沈殿が試験面上に現れることでマッピング結果を確認しづらくなることは,本試験方法にとって優先的に解決すべき課題と考えた。 そこで,酢酸の噴霧以外の方法で試験面のpHを7程度に低下させられないかと,「希硝酸の噴霧」「高濃度炭酸ガス環境下への曝露」について検討した。しかし,いずれもpHの低下速度に乏しく,安定した結果が得られなかった。また,H+イオンの供給によって試験面のpHを低下させようとすると,H+イオンと分離した片方の-イオンが硝酸銀溶液中の銀イオンと化合するため,何らかの沈殿が生じることは避けがたいという考えに至った。この問題に対しては,別の角度からの解決が必要と判断した。以上が2021年度の実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた技術課題に取り組めなかったことは,進捗としてマイナス要素と考えられる。しかし,本試験方法の実用を目指す上で解決すべき新たな課題を発見し,その原因も考察できたことは,研究全体から見ればプラス要素と考えられる。また,後述のように,この課題の解決過程において良好な結果が得られれば,当初の技術課題も自動的に解決されることになり,本研究の進捗として大きな前進が得られると考えられる。以上の状況から,上記のような進捗状況の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,冒頭の「研究実績の概要」に挙げた課題を優先的に解決することに取り組みたい。具体的には,試験面のpHを低下させることをせず,高濃度硝酸銀溶液の噴霧によって生じた塩化銀沈殿の量を,スペクトル分析でマッピングできる方法について検討する。スペクトル分析では,塩化物イオン単体でも分析は可能だが,硝酸銀沈殿を分析対象にすることによって,より簡易に,高精度のマッピング結果が得られる可能性があると見込んでいる。なお,本検討で良好な結果が得られれば,2021年度の研究課題に挙げていた「試験面の切断精度の向上」「試験面における骨材の判別」の課題は,自動的に解決されることになると考えられる。
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Causes of Carryover |
2021年度の研究計画では,技術課題の1つである「供試体の切断面の高精度化」に取り組むため,それに必要な高精度切断機を購入する予定であった。しかし,2021年度の研究実績に記したとおり,優先して解決するべき課題が見つかり,その解決のための実験を優先させた。また,この課題が解決されれば,供試体の切断面の高精度化の必要性は,いくぶん低下すると考えられることから,上記切断機の購入を見送った。そのため,次年度使用額が生じたものである。なお,新たに見つかった課題の解決のためには,スペクトル分析器が必要になると考えている。その購入価格は,高精度切断機と同等か,やや上回ると見込まれる。よって,今回生じた次年度使用額は,スペクトル分析器の購入費へと転用させていただきたいと考えている。
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