2022 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of simplified chloride ion mapping method by fully utilizing the principle of silver nitrate solution spraying method
Project/Area Number |
21K04224
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
青木 優介 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70360328)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 硝酸銀溶液噴霧法 / 塩化物イオン / マッピング / 紫外線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,硝酸銀溶液噴霧法の原理をフル活用した簡易型の塩化物イオンマッピング法を確立することである。2021年度~2023年度の研究期間では,本方法の技術的課題を解決することを目指している。 2022年度は,2021年度に発見した課題の解決に注力した。具体的には,「試験結果を見やすくするため試験面のpHを低下させるべく酢酸を噴霧すると,その後に噴霧する硝酸銀溶液中の銀イオンと酢酸イオンが化合して酢酸銀の沈殿物が生じ,試験結果を見えにくくしてしまう」という課題の解決に注力した。 解決方法として,「試験面のpHを低下させないまま試験できないか」と考えた。そのため,試験面上に生じる塩化銀・酸化銀の沈殿物の感光性を再確認することとした。試験管内で塩化銀,酸化銀,それらが混合した沈殿を生じさせ。これに自作の紫外線照射装置を用いて紫外線を照射した。結果,①塩化銀沈殿は当初白色だが,紫外線を受ければ数分程度で黒色になる。ただし,徐々に退色し始め,最終的にはほぼ無色になる。②酸化銀沈殿は当初褐色だが,紫外線を受ければ黒色になる。ただし,その速度は塩化銀に比べてかなり遅い。③塩化銀と酸化銀が混合している沈殿物は,当初白色または褐色であっても,紫外線を受ければ数分程度で黒色化する。などの事実が判明した。このことから,「試験面上のpHを低下させずとも,高濃度の硝酸銀溶液を噴霧し,試験面に強い紫外線を照射すれば,数分程度は塩化物イオンが多い部分は黒く,少ない部分は褐色になる」と考えられ,マッピングは可能ではないかと考えられた。 そこで実際に実験を行った結果,塩化物イオンが多い部分での黒色化は確認されたが,少ない部分では褐色と黒色を見分けることが難しいという結果となった。試験面のpHを事前に低下させることが重要であると再認識した。次年度はこの課題解決を行い,試験方法を確立させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通りに課題の解決には至らなかったため,やや遅れていると判断する。しかし,紫外線照射装置の自作を終え,塩化銀および酸化銀沈殿物の感光性に関する基礎的な実験を行ったことで,解決のためのヒントが多数得られた。また,これまで想定していなかった問題(塩化銀に紫外線を当てると,数分程度で黒色化するのは良いが,それ以降徐々に退色してしまうこと)が発見され,ある意味,課題を先回りして回避することができた。これらの成果は,次年度での具体的な課題の解決に向けて大いに役立てるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は上記課題を解決し,試験方法を確立させたい。これまでの検討から,「試験面上のpHを事前に低下させることが必要」,「それを酢酸(や他の強酸液)でやろうとすると銀化合物が生成されて試験結果の視認を阻害する」,「現れた塩化銀は紫外線の照射によって黒色になるが,比較的短い時間で退色し始めるので,試験面を照射後から分単位で撮影し続けることが必要」などが判明した。また,検討に必要となる紫外線照射装置を完成させた。準備は整ってきたと感じている。 4月~6月にかけて,「硝酸を混ぜた硝酸銀溶液」を使用することによって上記課題の解決を試みる。以前,試験面のpHを低下させるために希硝酸を噴霧した際には,のちに噴霧する硝酸銀溶液とは別に噴霧していた。この場合,噴霧する液量が多くなり,コンクリートへの浸透性が低下し,試験面上のpHが低下しにくかった。噴霧する硝酸銀溶液に硝酸を混入させておくことで,この問題を解消できると考えている。またこの場合,余剰の銀イオンと化合して生成されるのは硝酸銀であり,水によく溶けるため,試験結果を阻害しないと考えている。 7月~9月にかけて,いくつかのコンクリート供試体において,上記の方法での試験結果を取得する。その上で,本試験方法の確実な手順や適用範囲などを明確にする。また,本方法の試験結果と電子線マイクロアナライザ(EPMA)での試験結果との比較を行いたいと考えている。 10月~12月にかけて,これらの成果を論文にまとめ,学会等へ投稿する。以降,試験結果を追加して,試験方法のさらなる充実に取り組む。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,初年度(2021年度)に国際学会等への参加の取りやめ等によって旅費などが使用されなかった面が大きいと考えている。また,実験に必要な紫外線照射装置を(必要な性能を備えたうえで)比較的安価に自作できたことも大きかったと考えられる。 本年度は試験方法を確立し,試験結果を電子線マイクロアナライザ(EPMA)での試験結果と比較する予定である。EPMAでの試験は外部の専門機関に発注することになり,1試験体あたり20万円程度の費用を要すると見積もられている。このことに使用額が必要になると考えている。また,新型コロナウィルス対策の緩和も受けて,各学会が対面形式での開催を予定している。これらの学会にも積極的に参加し,研究成果を発表するためにも,旅費等に使用額が必要になると考えている。
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