2021 Fiscal Year Research-status Report
高酸素腐食促進試験法を用いた亜鉛めっき鉄筋の長期腐食進行メカニズムの解明
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21K04226
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
土井 康太郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 独立研究者 (80772889)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腐食 / 亜鉛めっき / 表面処理 / 酸素還元 / 高酸素反応促進 / コンクリート / カルシウムハイドロキシジンケート |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、亜鉛めっきを施した鉄筋がコンクリート中でカルシウムイオンと反応し、高耐食性を示すカルシウムハイドロキシジンケート(以下、CHZと表記)を形成することが報告され、亜鉛めっき鉄筋の耐食鉄筋としての使用が期待されている。亜鉛めっき鉄筋には他の耐食鉄筋と比較して低コストで作製可能、加工性に優れる、取り扱いが容易などのメリットがあるため、亜鉛めっきのコンクリート中における腐食挙動を正しく理解することは我が国のインフラ技術を支える上で必須の命題であると言える。そこで本研究では、CHZの加速形成手法および亜鉛めっき鉄筋の腐食加速試験法を確立し、コンクリート中における亜鉛めっき鉄筋の長期腐食メカニズムを数ヶ月程度の比較的短期間の実験により明らかにすることを目的としている。本年度は、CHZの加速形成手法の確立と乾湿繰返し腐食試験によるCHZに覆われた亜鉛の耐食性評価を行なった。CHZの形成は、亜鉛試料を供給酸素分圧を変化させた飽和水酸化カルシウム溶液(以下、試験溶液と表記)に浸漬させることで行なった。その結果、以下の結論を得た。 1. CHZの形成は酸素還元律速であり、試験溶液への供給酸素分圧の増加に伴ってCHZ形成が加速される。 2. CHZの形成過程として、初めに鱗片状のCHZの核が亜鉛表面に点状に形成する。その後も新たなCHZの核生成およびCHZ核の成長が続き、ち密なCHZ層へと成長する。ただし、CHZ核の生成およびCHZ結晶の成長に伴い亜鉛の露出面積が減少するため、徐々にCHZ形成反応は抑制される。 3. 研磨ままの亜鉛と比較してち密なCHZ層に覆われた亜鉛は高い耐食性を発揮する。例えば試験溶液に0.5 MPaのガス圧で酸素を供給した条件では、研磨ままの亜鉛と比較して分極曲線から導出した腐食電流密度が約1/5, 乾湿繰返し腐食試験による重量変化(腐食量に相当)が約1/10に低減した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はCHZの形成が試験溶液への供給酸素分圧の増加により加速することを明らかにできた。本手法の開発により、安価かつ簡便、短時間でCHZの形成が可能になり、今後のCHZ形成した亜鉛めっき鉄筋のコンクリート中における腐食挙動を検討する上で重要な足掛かりを築くことができた。一方で、CHZの成長挙動および劣化挙動に関しては不明な点が残されており、残り2年の研究期間で明らかにしていく。CHZの加速形成に関する知見は特許申請、学会発表、論文誌への掲載を通じて外部に発信しており、本研究は研究期間全体を通じて順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した手法を用いて、CHZを加速形成させた亜鉛めっき鉄筋をコンクリート試験体中に埋設し長期腐食挙動を検討する。腐食検討には、我々が過去に開発した「高酸素腐食促進試験法」を用いて短期間で実環境と同様の腐食を再現することで行う。並行して、CHZの成長挙動に及ぼす溶出イオンの拡散の影響や亜鉛表面状態の影響および、劣化挙動に及ぼす腐食因子(塩化物イオン、pH、溶存酸素濃度、水分量など)の影響を明らかにし、亜鉛めっき鉄筋のコンクリート中における挙動に関する理解を深める。
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