2021 Fiscal Year Research-status Report
バルクハウゼンノイズ磁気センシングを用いた鋼構造用高力ボルトの緩み評価
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21K04246
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
山浦 真一 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50323100)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バルクハウゼンノイズ / 非破壊検査 / 高力ボルト / 鋼構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、橋梁等に使用する高力ボルトの締付状態を磁気バルクハウゼンノイズを用いて評価し、被災による過大な荷重・高温や経年劣化による鋼構造高力ボルト継手部の締結力低下を簡便迅速に判断する非破壊検査手法の確立を目指す。磁性材料が磁化する際の磁壁移動に伴って発生するバルクハウゼンノイズ信号が応力に敏感であることに着目し、ボルト部(およびその近接部)の高応力分布領域からのバルクハウゼンノイズ信号を検出し、信号中に含まれる周波数成分から応力信号成分および各種材料欠陥・材料組織由来の信号成分を分離してそれぞれの分布状況を高精度に推定することで、簡便迅速かつ非破壊・低コストな高力ボルトの緩み評価技術の確立を目的としている。 今年度(2021年度)は、高力ボルトに各種熱処理(673K焼鈍・炉冷、873K焼鈍・炉冷、1073K焼鈍・炉冷、1073K焼鈍・水焼入れ)を施し、微細組織変化、機械的特性、バルクハウゼンノイズ間の関係を調べた。その結果、まず炉冷試料では焼鈍温度が上昇するにつれてバルクハウゼンノイズ信号のピーク値は徐々に上昇した一方で、水焼入れ試料ではピーク値は大きく低下した。これらのことから、バルクハウゼンノイズ信号は熱処理による素材の微細組織変化に敏感であることが分かった。 さらに高力ボルトを締め付けながら、同時にバルクハウゼンノイズ信号を取得した。その結果、高力ボルトの締付力が上昇するほど、バルクハウゼンノイズ信号のピーク値、実効計算値ともに上昇し、高力ボルトのバルクハウゼンノイズ信号は締付力とも相関関係があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度(2021年度)は、まず始めとして高力ボルト素材の熱処理による微細組織の変化とそれに伴うバルクハウゼンノイズ信号の変化、およびボルト締付力とバルクハウゼンノイズ信号の関係について調べた。 M16高力ボルト(低炭素ボロン添加鋼)を673K、873K、1073Kの温度で4時間保持し、その後、炉冷した。さらに1073Kの温度で4時間保持した後に水焼入れした試料も作製した。高力ボルトは通常、製造時に焼入れされ、その後に693K前後の温度で焼戻しされているため、673K焼鈍・炉冷した試料では微細組織の変化はほとんど見られずトルースタイト組織であった一方、873Kで焼鈍・炉冷した試料では、微細なセメンタイトが析出し始め、ソルバイト組織となった。さらに温度を上げて1073Kで焼鈍・炉冷した試料では、フェライトとパーライトの混相組織となっていた。また、同じく1073Kで焼鈍後に水焼入れした試料では、マルテンサイト様の組織に変化した。これらの試料のバルクハウゼンノイズ信号を測定したところ、焼鈍温度が上昇するにつれてバルクハウゼンノイズ信号のピーク値は徐々に低下したが、水焼入れ試料のみはピーク値が大きく低下した。従って、高力ボルト継手部が被災し、高温を受けた場合は、何度に加熱されたかを推定することが非常に重要であることが分かった。 さらにM16高力ボルトを締め付けながらバルクハウゼンノイズ信号を測定したところ、ボルト締付力が上昇するにつれて、バルクハウゼンノイズ信号のピーク値も上昇した。また、ノイズ実効値を計算し比較しても、同様の傾向が得られた。現段階での実験結果からは、高力ボルトを締め付けるほど、バルクハウゼンノイズ信号が増加傾向にあることが分かってきた。 研究進捗としては、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに高精度な実験を行い、高力ボルトの熱処理条件と微細組織、機械的特性、バルクハウゼンノイズ信号の間の関係をより詳細に検討する。得られたデータからバルクハウゼンノイズ発生メカニズム・要因を精査し、ノイズ波形の詳細な解析を行い、微細組織におけるバルクハウゼンノイズ発生サイト(析出物、材料欠陥、応力等)の分布状況を詳細に調べ、微細組織とボルト締付力のそれぞれに由来するバルクハウゼンノイズ波形成分を特定・分離し、ボルト締付力の定量評価を試みる。そのため、ボルト周辺の締付応力をより精度良く調べるためにセンサヘッド部の形状を工夫し、ノイズセンサ部を試作する。加えて、高力ボルト継手部の模擬試験体を実際に製作し、各部の応力測定、温度による応力分布状況の変化等を詳細に調べ、最終的にはバルクハウゼンノイズ信号を用いた鋼構造ボルト継手部のボルト締付力の低下を高精度で測定・評価できる磁気バルクハウゼンノイズ高力ボルト非破壊検査システムの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナウイルス禍の渦中にあり、計上していた外国旅費を使用することが困難であった。国内旅行についても県外への旅行・出張の自粛を求められ、予算執行が困難であった。さらに、本申請者の異動のため、実験開始に多少の遅れが見られた。そのため、バルクハウゼンノイズ計測機器の購入と調整、ノイズ信号の安定的な取得等に多くの時間が割かれ、消耗品購入については必要最小限のものとなった。次年度以降はより詳細な実験を実施し、さらにデータの分析、センサヘッドの試作、高力ボルト接合模擬試験体の作製等、消耗品の購入を進め、研究を鋭意遂行する予定である。
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