2021 Fiscal Year Research-status Report
土砂災害防止に用いる排水用不織布の不均一性と圧縮クリープを考慮した透水係数の評価
| Project/Area Number |
21K04250
|
|---|
| Research Institution | Shinshu University |
|---|
Principal Investigator |
河村 隆 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (50324231)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅崎 健夫 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (50193933)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
| Keywords | 地盤工学 / 土砂災害 / 排水材 / 不織布 / 不均一性 / 間隙比 / クリープ / 透水係数 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
①不織布の初期条件の不均一性の定量評価：不織布のロールから小さく切り出した供試体約600枚に対して，初期状態を測定した．圧縮特性および透水係数の評価において，初期状態の不均一性を考慮するために，初期状態の正規分布とほぼ一致するように供試体を抽出する方法を確立した．
②(a)不均一性を考慮した圧縮クリープ特性の定量評価：圧縮容器を新たに作製し，装置の検定（装置自体の圧縮変形，レーザー変位計のドリフト）を行った．クリープ特性を評価するための基礎データとして，段階載荷圧縮試験を実施した．主な結論は以下のとおりである．(1)初期状態（p=2kN/m2）において間隙比eの最大値と最小値の差は2.4であり，ばらつきが大きい．pが増加するにつれてその差は小さくなり，一様な値に近づく．(2)圧縮過程における不織布ロール（1×1.5m分）のeと間隙率nの分布を定量評価し視覚化した．圧縮性が大きく不均一性を有する不織布の透水係数の評価には，このような分布を考慮することが重要であることを示した．
(b)高温条件における長期圧縮クリープ特性の定量評価：高温促進のための温度制御機構としてラバーヒータを設置した上部盤と下部盤を作製し，温度制御に関する検定を行った．
③(a)面内方向および(b)垂直方向透水係数の定量評価：2種類の透水試験装置（面内方向・垂直方向透水試験装置）を作製した．装置の検定として，等方的な試料（スポンジとガラスビーズ）に対して，透水試験を実施した．主な結論は以下のとおりである．(1)面内方向・垂直方向の試験結果は，JIS法の垂直方向透水試験の結果と同等の透水係数が得られた．(2)厚さ1～10mm程度の薄い供試体に対しても，厚さにかかわらずほぼ同じ透水係数が得られた．(3)以上のことより，本装置は上載圧下において薄く圧縮された不織布の面内方向・垂直方向透水係数を求めることが可能である．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①不織布の初期条件の不均一性の定量評価：初期状態の不均一性を考慮するための供試体抽出法を確立した．ロールから切り出した1×1.5ｍの不織布に対するデータを現場で使用する材料のスケールへの拡張については，次年度以降に検討することとした．
②(a)不均一性を考慮した圧縮クリープ特性の定量評価：当初計画に加えて，クリープ特性を評価するための基礎データとして，段階載荷による圧縮試験を実施した．初期状態の不均一性を考慮したe～logp，n～logp関係について検討し，圧縮過程における不織布全体のeと間隙率nの分布状態を定量評価し視覚化した．また，当初計画通り，1ヶ月以上のクリープ圧縮試験も開始し，継続してデータを取得中である．
(b)高温条件における長期圧縮クリープ特性の定量評価：当初計画通り，高温促進のための温度制御機構を設置した上部盤と下部盤を作製し，温度制御に関する検定を行った．
③(a)面内方向および(b)垂直方向透水係数の定量評価：当初計画通り，2種類の透水試験装置（面内方向・垂直方向透水試験装置）を作製し，装置の検定を行った．作製した装置は上載圧下において薄く圧縮された不織布の面内方向・垂直方向透水係数を求めることが可能であることを示した．
|
| Strategy for Future Research Activity |
①不織布の初期条件の不均一性の定量評価：ロールから切り出した1×1.5ｍの不織布に対するデータを現場で使用する材料のスケールへの拡張について検討する．このとき，最尤法などの母集団を推定するための統計的手法を導入する．
②(a)不均一性を考慮した圧縮クリープ特性の定量評価：不均一性を考慮して抽出した不織布に対して，令和3年度に開始した1ヶ月以上のクリープ圧縮試験を継続して実施する．令和3年度に実施した段階載荷による圧縮試験から得られた結果を踏まえて，不均一性を考慮した圧縮クリープ特性の評価式を提案する．
(b)高温条件における長期圧縮クリープ特性の定量評価：高温促進のための温度制御機構を設置した上部盤と下部盤を用いて，高温促進圧縮クリープ試験を実施する．温度条件の異なる結果と②(a)の結果に基づいて，温度－時間換算則を検証し，圧縮クリープ特性の評価式を10～100年程度の長期間まで拡張する．
③(a)面内方向および(b)垂直方向の透水係数の定量評価：不均一性を考慮して抽出した不織布に対して，2種類の透水試験（面内方向・垂直方向）を実施し，間隙比および間隙率と透水係数（面内方向透水係数kh，垂直方向透水係数kv）の関係を定式化する．
④拘束圧下における透水係数の長期予測式の提案：①～③を踏まえて，予測式の定式化を実施する．
|
| Causes of Carryover |
（次年度使用額が生じた理由）
長期圧縮クリープ試験には，現有のレーザー変位計を使用する予定であったが，非常に薄い材料である不織布の圧縮変形の長期間の計測に対して，計測値のドリフトの影響が無視できないことが判明した．そのため，当初の計画を変更して予算の前倒し支払い申請を行い，ドリフト量の影響を除外できるレーザー変位計を新たに購入した．その残額を次年度に繰り越すこととした．
（使用計画）
次年度使用額は，実験装置の改良と計測機器の追加として使用する．令和4年度請求額は，当初の予定通り，温度制御機器，消耗品費，論文投稿料，旅費，人件費・謝金およびその他の経費として使用する計画である．
|
Research Products
(2 results)
