2021 Fiscal Year Research-status Report
パイピング現象を考慮した微視的アプローチに基づく新たな斜面崩壊予知手法
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21K04263
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
荒木 功平 徳山工業高等専門学校, 土木建築工学科, 准教授 (00600339)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土砂災害 / 斜面崩壊 / 安全率 / 現地観測 / 粘着力 / 飽和度 / IoT / リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地域発信型土砂災害予知システムの開発に向け,IoT技術の導入を意識し,オンライン計測機器を用いた実現象の把握,急傾斜地等の健全度~時間関係のGISによる地理的評価を試みた.第一に,徳山高専北側斜面で現地観測用斜面を造成し,監視カメラを設置することで,2021年6月4日午前2時頃~午前3時頃に小規模な斜面崩壊の発生を捉えた.また,降水量及び土中水分(体積含水率)を計測し,体積含水率30%以上での急激な増加が斜面崩壊の一因として考えた.第二に,斜面崩壊危険指標(安全率,斜面崩壊確率,リスク)の開発を行った.松尾稔(1984)の方式により粘着力変化を想定した.①現地観測データを使用した現地実験斜面の安定解析,②松尾の実験値を代表値として徳山高専敷地周辺の安定解析を行った.①現地実験斜面安定解析では,崩壊が発生したと考えられる時間帯に崩壊確率が60%以上を示し,体積含水率の変化により解析結果が変動した.含水率が約35%以上の時に崩壊確率が70%以上になることが分かった.②徳山高専敷地周辺解析では,Q-GISを用いて,解析結果(体積含水率20~45%)をマッピングした.体積含水率25%で安全率1.5未満になり,崩壊確率が増加し始めた.安全率が1に近づくと崩壊確率の増加が顕著になることが分かった.地域発信型土砂災害予知システムの開発に向けて,継続的に現地観測・現地実験を行い,データを収集する必要がある.合わせて,降水量と土中水分から斜面崩壊確率を求め,崩壊発生時刻を予知する手法,発生規模(リスク)を評価する手法を精査し,確立していく必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土砂災害警戒区域に指定されている徳山工業高等専門学校の北側斜面を実証的研究・検証の場として,現地実験斜面を造成・整備した.地山を成型し,斜面勾配30度,斜面高5mの人工斜面を造成した.成型後の地山上に表土(真砂土(客土))を,幅0.9m,厚さ0.1mで設置した.スマートフォンやパソコンの専用アプリと連携させることで,オンライン上で現地斜面の様子を24時間リアルタイムで観察できる.また,カメラの向き,ズーム等遠隔操作が可能である.斜面が崩壊するか否か,健全度・危険度は土中水分に大きく依存する.言い換えれば,土中水分を計測することが斜面の健全度・危険度を評価する上で重要である.土中水分計(EC-5 土壌水分センサー,METER社製),データロガー(Em50 データロガー,METER社製)を斜面法尻から約1mに埋設深さ約10cmで水平に土中水分計を設置し,その計測値をデータロガーで収集できた.雨量計(転倒ます式雨量計)を現地設置して約1時間ごとに計測した.したがって、雨量や土中水分等の観測データを入手出来ている。それとともに、それらに基づいて、GISにより、安全率分布・崩壊確率分布図等を作成できている。2022年度の土砂災害シンポジウム、2023年度の国際会議(CREST20223)に向けて論文を執筆している。
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Strategy for Future Research Activity |
地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されている。特に近年、九州・中国・四国地方で斜面災害が多発している。これまで複数の災害調査を行って、滑落崖でパイピングの痕跡を観察してきた。また、土質数値力学モデルの開発、斜面安定度評価の手法提案、それに基づく危険斜面の抽出、抽出斜面での現地観測を行い、降水(降雨・降雪)による斜面崩壊の撮影に成功してきた。本研究では、パイピング現象に焦点を当てた上で、力学的アプローチと確率的手法に基づく表層すべり型斜面崩壊の予知システムを確立する。以下の3つを新たな開発目的とする。 ・降水に伴いパイピングが微視的に発達していく過程を解析的に評価する手法を開発する。 ・パイピングが引き起こす巨視的な斜面崩壊現象を解析的に評価する。 ・降水~地盤挙動(斜面内挙動)の実現象を観測し、開発モデルの妥当性を検討する。
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Causes of Carryover |
2021年度について新型コロナ等のため、打合せや学会参加について、延期やオンライン対応が多く発生し、旅費・その他について使用額が著しく少なくなった。また、協力企業(日本工営株式会社、多機能フィルター株式会社など)に無償で積極的に協力していただいたため、少なくなった。2022年度は土砂災害シンポジウム(熊本県)に論文投稿・発表検討中(2編)である。また、2023年度の国際会議(CREST2023)に向けて論文投稿・発表検討中(2編)である。その他、土木学会全国大会、土木学会中国支部、地盤工学会全国大会への学会発表を予定している。研究は順調に進んでいるため、積極的に国内外の学会にて発表していきたい。また、まだ新型コロナの影響が予想されるため、遠隔対応用の機器(現地観測機器・オンライン打合せ用機器など)等を検討していくとともに、参考図書・資料等を追加検討し、最先端の研究成果を取り入れつつ、高度化を検討していきたい。
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