2022 Fiscal Year Research-status Report
ポスト液状化地盤の長期的回復傾向に関する微視的・巨視的メカニズム解明に関する研究
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21K04264
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中澤 博志 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (20328561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河又 洋介 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震減災実験研究部門, 主任研究員 (90740994)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液状化 / 過剰間隙水圧 / せん断剛性 / S波速度 / 体積ひずみ |
Outline of Annual Research Achievements |
地震時に地盤の液状化が発生すると,過剰間隙水圧の発生により地盤の強度や剛性が消失し,その後,排水に伴う過剰間隙水圧の消散とともに地盤性状は回復すると考えられている.しかし,実際には液状化後の地盤性状の回復は必ずしも過剰間隙水圧消散と同期しないという報告もある.この地盤のポスト液状化挙動に関し,本研究では,地盤性状の液状化後回復遅れに対する巨視的・微視的メカニズムを解明することを目的としている. 初年度の令和3年度は,代表者と分担者がポスト液状化に関する文献調査を行い,また,2016年熊本地震の液状化サイトにおいて,地震後地盤性状回復に関する巨視的評価のための地盤調査を行った.また,2年目の令和4年度にも引き続き,同じサイトにおける継続調査を実施した.この現地調査において,軽量簡易動的コーン貫入実施したが,傾向としては,地震発生後から,緩やかなコーン指数などの回復傾向が得られており,地震前の液状化ポテンシャルしては,地震前の状況に戻っていることがわかった.しかし,液状化指数を地震後から経年的に評価すると,その値が液状化し易くなる増加に転じる傾向もみられることから,地下水位の季節変動の影響も伺え,更なる計測調査の必要性も考えられる結果となった. 令和4年度からは,微視的な液状化地盤の性状を確認するため,室内にて液状化を模したボイリング試験のためのポスト液状化挙動把握用試験装置(円筒形容器)を用い,液状化しやすい豊浦砂とカオリンを準備し,ボイリング実験時の有効拘束圧条件を変えた予備検討を行い,三年目の実験の準備を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体の流れとしては次のとおりである. 一年目(令和3年度)は,代表者と分担者によるポスト液状化に関する文献調査,2016年熊本地震後の地盤調査計画と調査の実施,室内ボイリング試験方法を始めとした研究全体の計画立案,試験装置の設計・製作,および実験資材等の準備としている. 二年目(令和4年度)は,前年度の令和4年度と同様に,代表者と分担者で熊本地震の液状化サイトでポスト液状化挙動把握のための地盤調査を行うと共に,代表者が主体で室内ボイリング試験を実施し,長期養生の下,軽量簡易動的コーン貫入試験による非排水せん断強度の把握と,模型地盤に設置した加速度計によるS波速度の計測および時間経過に伴う液状化後の微視的構造変化を確認することを予定している. 最終年の三年目(令和5年度)は,前年度から引き続きボイリング実験後の調査・計測を一部継続し,室内試験によって得られた微視的な構造の変化や,非破壊状態で得られたS波速度の長期的な変化について,熊本地震後の巨視的に見たポスト液状化挙動の説明を試み体系的なまとめを行うことを予定している. 二年目終了時には,ボイリング試験実施において,軽量簡易動的コーン貫入試験による非排水せん断強度の把握と,模型地盤に設置した加速度計によるS波速度計測を行い液状化後の微視的構造変化を確認することを予定したが,実際には,ボイリングの予備検討に時間を費やしたのが現状であった.実際には,実験実施が年度替わりにずれ込んだが,予備検討が実施でき,観測期間的にも本研究全体に波及することは無く,最終目標である,「微視的構造の変化の把握」,「液状化後の地盤性状回復過程のメカニズム」を明らかにすること,「ポスト液状化挙動予測手法の提案」の検討に向けて,このまま進めることで問題等は発生しないと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は三年目にあたり,現在までの進捗状況を顧みながら,引き続き昨年度からの検討を継続する予定としている. 最初に,代表者と分担者で熊本地震の液状化サイトでポスト液状化挙動把握のための地盤調査を継続し,続いて代表者が主体で室内ボイリング試験を継続し,調査・計測を継続する.特に現地液状化サイトの液状化ポテンシャルは地下水位条件にも影響を受けることから,現地調査の時期も念頭に置いて,慎重に計画して実施したい. 現地調査や実験自体は,同じ調査サイトでの実施,同じ試験体を用いることから,当初の研究計画に対し,最終目標のとりまとめまで完了することが可能であると考えいる.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により,実験に必要な資材の調達が困難になったり,一部,調査計画に狂いが生じ,その他消耗品や旅費の執行が出来なかったことが,次年度使用が生じた理由である.なうことを使用計画としては,現地観測を主に,計画的に複数回行い,研究を完結したいと考える.
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