2021 Fiscal Year Research-status Report
瀬戸内海における外洋起源有機物の動態とCODの制御限界
Project/Area Number |
21K04273
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 祐介 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20635164)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 瀬戸内海 / 化学的酸素要求量 / 外洋起源 / 難分解性有機物 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,瀬戸内海における外洋起源有機物の動態を解明し,近年のCOD異変への影響を明らかにすることを目的とする.そのために,河口‐湾灘‐外洋に至るマルチスケールの力学現象をシームレスに解析可能な三次元流動モデルに,有機物を起源別・形態別に分画した物質循環モデルを組み込んだ瀬戸内海COD評価モデルを開発し,瀬戸内海に存在する外洋起源有機物の存在量とその変動を明らかにする.海域CODの制御可能性とその限界を定量的に示すことで,瀬戸内海における今後の水質管理方針の抜本的見直しを提案する. 研究開始1年目である2022年度には,以下の内容に取り組んだ. ・瀬戸内海‐太平洋領域を対象とした高解像度三次元流動モデルを構築し,海域の流動・密度構造について良好なモデル再現性を得た.加えて,瀬戸内海の集水域全域を対象に分布型流出モデルを構築し,海域への淡水流出量を高精度に算定することを可能にした.構築した流動モデルを用いて,難分解性および準易分解性の外洋起源有機物にみたてた保存性トレーサーの挙動解析を行い,瀬戸内海における外洋起源有機物の存在量と変動特性を明らかにした.これにより瀬戸内海におけるCOD濃度のバックグラウンド値を定量的に示すことができた. ・関係機関による瀬戸内海の水質調査データを収集・分析し,COD‐TOC関係の経年変化を湾灘ごとに整理した.COD‐TOC関係には湾灘ごと,観測年によって大きな差異が生じることが確認され,今後その変動要因について分析する必要性が示された. ・流動モデルに物質循環モデルをカップリングし,有機物コンパートメントを起源別・形態別に細分化することで,生物化学過程も考慮した外洋起源有機物の動態を解析可能な瀬戸内海COD評価モデルを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり,1年目(2022年度)には三次元流動モデルを構築し,保存性トレーサ―の挙動解析を実施することができた.また,当初予定にはなかったが,瀬戸内海集水域の水文流出モデルも構築し,淡水流出量をより高精度に算出することを可能にした.得られた成果の一部は国際学会や国内学会で発表するとともに,学術論文としてまとめた(2編,査読中).2年目(2023年度)に予定していた物質循環モデルの開発にも着手し,流動モデルにカップリングするとともに,有機物コンパートメントを細分化するようにプログラムの改修を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って,2年目(2023年度)には物質循環モデルの境界条件の検討およびパラメータチューニングを行い,瀬戸内海の水質構造のモデル再現を図る.構築した瀬戸内海COD評価モデルを用いて,非保存性の栄養塩動態も含めた物質循環解析を行い,湾灘ごと・季節ごとのCOD濃度の起源別内訳を明らかにする.瀬戸内海の水・物質動態は黒潮流路変動や気象擾乱などの外力の影響を受けて変動するため,数十年間にわたる長期再現解析を行い,出力を確率分布として扱い統計的に整理する.
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Causes of Carryover |
ワークステーションを購入する予定であったが,研究効率の観点から解析環境を見直し,大型計算機の使用料に充てることに変更した.また,国内学会にて研究成果を発表する予定であったがcovid-19の影響で中止となり,代わりに国際会議(オンライン)での発表に切り替えた.これらが主な理由となり,未使用額が発生した.これらの理由で発生した未使用額は、次年度導入する計算機の購入費に充てる予定である.
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Research Products
(2 results)