2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of rainfall-runoff and flood inundation integrated analysis model and parameter optimization method for basinwide comprehensive flood disaster prevention
Project/Area Number |
21K04277
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
重枝 未玲 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70380730)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 流域治水 / 降雨流出・洪水氾濫一体解析モデル / パラメータ最適化 / 令和2年7月豪雨 / 球磨川流域 / 実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,流域での地中・地表面流,河道・氾濫原での洪水氾濫流を一体的に取り扱うことで,流域全体の雨水の挙動を把握し,流域治水に供する「降雨流出・洪水氾濫一体解析モデル」の開発を目的としている.当該年度では,以下の(1)~(5)を実施した. (1)降雨流出・洪水氾濫一体解析モデルの計算効率の改善:昨年度構築した同モデルについて,ドライ・ウェット状態が混在する箇所で計算が不安定になる状況が確認された.そのため,昨年度改良したドライ・ウェット状態の数値流束の取り扱いについて,プログラムの見直しを行った.その結果,以前のプログラムに比べ安定した解析が実行可能となり,計算効率が向上した.(2)ベイズ最適化による地中流の解析パラメータの推定法の構築:ベイズ最適化に基づく,地中流の透水係数や空隙率のパラメータ推定法を構築した.(3)モデル土壌での地中・地表面流の実験および(2)の最適化法の検証:モデル土壌での地中・地表面流の実験を実施し,地中・地表面流の水深や流量の経時変化の実験データを収集した.これに基づき,(1)の解析モデルが実験結果を再現できること,(2)の推定法が地中流と地表面流が発生する場合には妥当なパラメータを推定できることを示した.(4)水位情報に基づく分流河道の予測精度の検証:昨年度取得した水位を与条件とした分流河道の実験結果に基づき,降雨流出・洪水氾濫一体解析モデルが,水位や流量ハイドログラフを再現できることを示した. (5)河道・氾濫原データの作成方法の検討と実流域への適用:河道線形や堤防線形・氾濫原の平面形状をより詳細に再現できる計算格子の作成法を検討した.同方法と降雨流出・洪水氾濫一体解析モデルを球磨川流域に適用し,実現象の再現精度の検証と支川流域での地中流や地表面流の雨水の収支の把握を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では,(A)流域の解析パラメータの最適化法の開発,(B)モデル土壌での地中流・地表面流の実験結果の収集とモデルの予測精度の検証,(C)河道・氾濫原の解析データの効率の良い作成方法の検討を行う予定であった. (A)については,研究実績の(2)の記載の通り,ベイズ最適法を用いたパラメータ推定法を構築した.(B)については,研究実績の(3)の記載の通り,地中流・地表面流の水深や流量ハイドログラフの実験データの収集し,これに基づき,降雨流出・洪水氾濫一体解析モデルの再現性とパラメータ推定法の妥当性を示した.(C)については,研究実績の(5)の記載の通り,河道線形や堤防線形・氾濫原の平面形状をより詳細に再現できる計算格子の作成法を検討し,これに基づき球磨川流域のデータを作成した.このデータに基づき,降雨流出・洪水氾濫一体解析モデルで解析を行なったところ,同解析で実現象を概ね再現でき,支川流域での地中流や地表面流の雨水の収支の把握が可能であることが確認された.一方で,河道湾曲部が連続する区間では再現精度が低下し,数値地図標高の5mメッシュデータが存在する高水敷と比較して,横断面データしかない低水路データの作成方法については課題が残った. また,研究実績の(4)で記載したように,昨年度,実施が十分でなかった分流河道の実験結果に基づくモデルの検証を実施した.一方で,研究実績の(1)で記載したように,本年度プログラムの見直しを行なったために,画像処理装置による並列計算の導入が遅れている. このように,画像処理装置による並列計算の導入には遅れが生じているが,実流域への適用等については早めに実施されている状況であり,本年度の進捗状況は概ね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,中央処理装置と画像演算装置による並列計算を,「降雨流出・洪水氾濫一体解析モデル」へ導入し,計算効率の向上を行う.画像演算装置によるプログラミングについては,CUDAやMETAL等のプログラム言語だけでなく,機械学習に用いられているTensor Flowなどの行列計算ライブラリを用いたコーディングも念頭に入れて,保守や改善のしやすいプログラムを作成する予定である. 次に,昨年度・本年度で開発した河道・流域のモデルパラメータの推定法について,実流域への適用し,その妥当性を検討する.その際,リアルタイムに入手が可能な観測水位に基づき,河道の抵抗や流域のパラメータの推定可能性について検討する.また,ベイズ最適化法を用いたパラメータ推定においても,解析の実行回数は多くなることから,支配的なパラメータの抽出方法や効率的な手順について検討する. 実流域への適用については,河道低水路のデータ作成法の見直しや,流域の治水施設による市街地の被害軽減効果が把握できるように,国土地理院の道路線形等のデータを用いて,氾濫原の市街地構造を考慮でき効率よくデータを作成できる手法について検討する. 最後に,球磨川流域を対象にデータの作成と最適パラメータを用いた解析を実行し,その予測精度を検証するとともに,流域治水を検討する上で不可欠な流域での雨水貯留特性を把握し,これを見える化しより分かりやすい情報提供のあり方を検討する.
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Causes of Carryover |
実験に使用する消耗品に予想以上の予算が必要となった.そのため,年度末にデータバックアップ用にメディアを購入する予定であったが,残金が十分ではなく,次年度使用額が生じた.未使用額については,データバックアップ用のメディア購入に充てる予定である.
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