2023 Fiscal Year Research-status Report
New insight into beach response processes based on large-scale data sets
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21K04285
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
伴野 雅之 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (80549204)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 漂砂 / 地形変化 / ディープラーニング / LiDAR / 海面上昇 / 潮汐 / 海浜モニタリング / 海水浸透 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,波の遡上域(汀線付近:陸と海の境界)の海浜地形変化プロセスに主眼をあて,短期から長期に至る様々な地形変化プロセスのメカニズム解明とその重要性の提示を目的としている。 2023年度においては,短期的な地形変化として,潮汐の上げ潮と下げ潮が前浜地形変化に及ぼす影響を現地調査により検討した。具体的には,低コストなモニタリング手法としてグリーンレーザー距離計による定点の地盤高変動を1秒~10秒間間隔で1ヶ月間取得した。水面で反射したデータなどのノイズを除去した上で1分ごとの地盤高の時系列データとして整理し,1回の潮汐(上げ潮と下げ潮)の間に生じる地形変化を解析した。その結果,波の遡上域において,上げ潮時に海水が砂面に浸透することで生じる堆積過程が見られた後,満潮時よりも前に侵食に転じ,その後の下げ潮時において再び堆積過程が見られた。このような地形変動は従来知られていなかったものであり,超高頻度な地形観測を行った本研究で初めて明らかにされたものである。この地形変化がどのようなプロセスで生じているのかについては,今後十分な検討を続ける必要がある。また,LiDARによる観測体制を充実させ,多点でのデータの取得も行う予定である。 また,長期的な地形変化として,海面上昇に対する地形応答をディープニューラルネットワークを用いた地形変化モデルによって検討した。具体的には,長期海浜地形モニタリングデータによって波浪や海面の変動に対する地形の変化ネットワークを学習させ,擬似的な海面上昇を入力値として与えた数値実験によって海面上昇によって生じうる地形変化を予測した。この解析については,まだ過去の地形変化の再現性も不十分であることから,引き続き検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高頻度な海浜地形モニタリングにおいて,潮汐変動に対する新たな地形変化現象の発見に繋がり,想定以上の成果が得られた。一方で,それらの物理プロセスの理解は十分ではなく,さらなる現地データの取得によって明らかにしていく必要がある。海面上昇に対する海浜地形応答についても,精度の向上が課題であり,今後さらなるモデルの改善を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
LiDARにより空間的な地形変化を捉える準備を進め,潮汐変動に対して海浜地形が各高さでどのような変化を示すかを評価する予定である。これにより,数点の地盤高の観測では難しかった地形変化の要因を推定することができると考えられる。ディープニューラルネットワークについては,入力データの見直しやモデル構造の修正などによって予測精度の向上を進める予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査にかかる費用が想定よりも少額で実施できた。そのため,未使用額は追加の現地調査の実施と研究成果の公表に充当する予定である。
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