2021 Fiscal Year Research-status Report
鉄道コンテナの貨物需要から貨物車交通の需要を推計するシステムの開発
Project/Area Number |
21K04289
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
秋田 直也 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80304137)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 鉄道コンテナ集配トラック / 貨物車需要推計システム / 鉄道コンテナ貨物需要 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、大阪貨物ターミナル駅を拠点駅とする鉄道コンテナ集配トラックを対象として、デジタル式運行記録計やドライバーの手書きなどよって記録された複数の運行データを包括した統合データを作成した。その上で、2018年11月12日から30日の間の土・日曜日と、取り扱われるコンテナ個数の少ない日を除外した14日間において、12ftコンテナだけを取り扱っている104運行について分析を行った。その結果、132箇所の訪問荷主先に、延べ547個の12ftコンテナが集配送されていた。また、積みと卸しの両方を行っている訪問荷主先において訪問回数と取扱個数が多いこと、走行時間が総運行時間の46%程度であること、訪問荷主先では、積作業時間、卸作業時間、待機時間が主に発生していることなどを把握することができた。 その一方で、既存ソフトウェアで提供されているVRPソルバーを、鉄道コンテナ集配トラックの配車配送問題に援用する方法を検討した。その結果、貨物駅と訪問荷主先との間でコンテナが集配送されている状況や、コンテナ・ラウンドユース輸送が行われている状況を反映した計算結果を得ることができた。 その上で、11月12日の運行について、VRPソルバーを用いた運行シミュレーションの結果と実態とを比較した。その結果、①運行シミュレーションでは、訪問先で取り扱われるコンテナ個数に関係なく、できるだけ積載量の大きなトラックで、近接する訪問荷主先を巡回しているのに対し、実態では、積載量の大きなトラックで、取り扱う個数の多い訪問荷主先のコンテナを、1回の訪問で運ぼうとする傾向がみられることや、②コンテナ・ラウンドユース輸送において、運行シミュレーションでは、最も近接している訪問荷主先同士がマッチングされるのに対し、実態では、取り扱われるコンテナの個数が一致する訪問荷主先同士がマッチングされる傾向にあることが示せた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大阪府内の鉄道コンテナ貨物需要を把握するには、大阪府内に立地する4つの貨物ターミナル駅ごとに、デジタル式運行記録計やドライバーの手書きなどよって記録された複数の運行データを包括した統合データを作成する必要がある。しかし今年度は、大量のデータを整理する方法を確立するのに時間が掛かってしまったため、1駅(大阪貨物ターミナル駅)についてしか作成することができなかった。また今年度は、1種類の大きさのコンテナ(12ft)を取り扱う運行について、既存ソフトウェアのVRPソルバーを用いて運行シミュレーションを行った。しかし、実態では、複数の大きさのコンテナ(12ftと31ft)が、同時に取り扱われているため、これを反映した計算結果が得られるように、援用方法を拡張する必要がある。さらに今年度は、1日のみの運行について、運行シミュレーションと実態との差異を示したが、考察の精度を高めるには、分析対象とする運行日を、さらに増やし、運行日による差異がないかを確認する必要があるといえる。また、今年度は、研究の進捗が遅れたため、国内外での学会等において、研究成果を発表することができなかった。こうした状況をふまえ、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立したデジタル式運行記録計やドライバーの手書きなどよって記録された複数の運行データを包括した統合データを作成する方法を適用して、残り3つの貨物ターミナル駅の統合データを作成する。本統合データは、各駅を拠点とする車両ごとに、1日の運行ルートの実績をダイヤ表として整理するもので、車両ごとの運行実績データベースとなる。その上で、大阪府全域における以下の3つのデータベースを構築する。①積み訪問荷主先・卸し訪問荷主先データベース(立地場所(緯度・経度)や、車両の平均滞在時間などを整理したもの)、②集配コンテナ個数実績データベース(積み訪問荷主先・卸し訪問荷主先ごと、1日ごとに、集配されたコンテナ個数の実績を整理したもの)、③走行距離・走行時間データベース(積み訪問荷主先、卸し訪問荷主先、貨物ターミナル駅間のそれぞれの走行距離と走行時間を整理したもの)。なお、統合データの作成にあたっては、データが大量であるため、研究協力者とともに効率的に行うとともに、分析対象とする日数を5日程度に絞って行うことで対応したい。 また一方で、今年度に検討した既存ソフトウェアのVRPソルバーを、鉄道コンテナ集配トラックの配車配送問題に適用させるための援用方法を、複数の大きさのコンテナ(12ftと31ft)が、同時に取り扱えるように拡張する。 そして最後に、既存のVRPソルバーを用いた運行シミュレーションを、作成したデータベースをもとにした複数の運行日について行い、それら運行シミュレーションの結果と実態との間にみられる乖離と、実態にしかみられない輸送形態を明らかにする。また、それらが生じている原因を研究協力者へのヒアリング等から把握する。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究の進捗が遅れたため、国内外での学会等において、研究成果を発表することができなかったことに加え、新型コロナウイルス感染症による移動制限のため、国内外での学会等がオンラインで開催されたことや、現地調査が行えなかった。このため、「旅費」と「その他」で計上していた費用を使用しなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 次に、使用計画としては、今年度できなかった国内外の学会等での研究成果の発表を行うための旅費と成果発表費用として使用する。また、新型コロナウイルス感染症の状況にもよるが、国内外の学会等で本研究の関連資料の収集を行うための旅費と参加費、さらに、現地調査を行うための旅費として使用する。そしてこれらに加えて、次年度に持ち越しとなった統合データの作成を効率的に行うために、研究協力者への謝金として使用する。
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