2022 Fiscal Year Research-status Report
身体挙動と脳活動を踏まえた無信号交差点通過時の空間認知モデル構築の試み
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21K04297
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Research Institution | Toyota Transportation Research Institute |
Principal Investigator |
三村 泰広 公益財団法人豊田都市交通研究所, その他部局等, 主幹研究員 (20450877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 無信号交差点 / 高齢運転者 / 身体挙動 / 脳活動 / 空間認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は,無信号交差点通過時の視線挙動・身体挙動・脳活動の実態について把握した.被験者は,高齢者(高齢者講習受講年齢である70歳以上)30名,非高齢者(70歳未満)32名の合計62名であった.実験では,360度カメラにより撮影された無信号交差点の通過映像を自身が運転しているという想定で視聴してもらった.視聴した交差点通過映像は,先行研究(三村, 2020)で出会い頭事故の発生と有意に関連の見られた枝数,接続角度に加え,先行研究で加味できなかった交通条件(歩行者,他車両の存在)の要因を踏まえたものを実験計画法(L9:4要因・3水準)により用意した.視線挙動は,視線追従機能を備えたヘッドマウントディスプレイ(FOVE 0)により映像視聴時の注視位置を計測した.身体挙動は,当初想定した接触タイプのモーションキャプチャ(Notch Pioneer)の入手が困難となったことから,非接触タイプのモーションキャプチャ(Vision Pose)により映像視聴時の体幹・上肢の動きを計測した.脳活動はウェアラブルデバイス(HOT-2000)を装着し,注意・集中を司る前頭前野の血流量変化を計測した.身体機能は,視機能(静止視力,視野,UFOV),柔軟性(長座体前屈&中指-中指間距離),平衡性(開眼片足立ち),俊敏性(座位両足開閉ステッピングテスト&全身反応時間)に加え,影響が予想された体成分(体重・筋肉量・体脂肪率)を計測した. 現在,視線挙動部分のみ解析が進んでおり,分析対象区間別の視線移動距離(水平方向)は,当初想定した空間構造の違いによる加齢の影響がみられなかった.この原因について,被験者に対して実施した映像視認時の妥当性確認の影響(30%程度が「(実際のように)あまりうまく視認出来なかった」と回答)や,身体機能による差の調整を実施し,出力結果の信頼性の向上を試みる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した【狙い1:交差点特徴別(交差角,施設立地,土地利用等),交通条件別(他車の有無,等),走行位置別(停止線前,停止中,停止線-交差点内進入前,交差点通過中,等)といった視点で,年齢別及び身体機能別の視線挙動,身体挙動,脳活動を明らかにする】については,調査,分析について,概ね想定どおり実施できている.さらに反応時間は当初の棒反応時間によるものから精度の高い全身反応時間計測装置を,視機能についても,夜間視力計(コーワ),視野計(imo)などの医療機器として使用される水準のもので計測することができた.他方,当初想定した【狙い2:実走行で取得した身体挙動,脳活動と同一空間で作成した映像の視聴により取得した同データを対比し,本研究で提案する手法の有効性を検証する】は,実験負荷の上昇によって被験者調整が叶わず,実施できなかった.この点について,実験参加被験者を対象としない形での検証(任意実験協力者による検証)を,令和5年度に検討する予定である.以上から,総合的に判断し,「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,視線・身体挙動,脳活動を踏まえた無信号交差点の認知モデルの構築を行う.具体的には,視線挙動,身体挙動,脳活動を踏まえた無信号交差点の認知モデルについて,共分散構造モデルを通じた構築を試みる.視線挙動,身体挙動,脳機能により構成される「空間の認知」といった潜在変数を設定し,被験者の身体機能,通行空間の状況(接続角度,交通条件等)を説明変数とするモデルを構築する.モデルは高齢運転者モデル,非高齢運転者モデルの2種類を構築する. また,上述のように,令和4年度に実施できなかった実走行により取得されるデータとの検証について,条件を限定しつつ実施する予定である. 以上を通じて,特に高齢運転者においてどのような身体機能や通行空間の状況が「空間の認知」に顕著な影響与えるかを明らかにするものである.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:大きく,次の2点である.(1)旅費:当初想定した国際学会での研究成果報告についてCOVID-19の影響により渡航が困難となったため.(2)人件費・謝金及びその他:被験者調整が難航し,当初想定した実空間での走行計測によるデータ検証が困難となったため. 使用計画:(1)旅費:令和4年度に予定した国際学会での研究成果報告を令和5年度に計画し,実施するものである.(2)人件費・謝金及びその他:令和4年度に予定した実空間での走行計測によるデータ検証を令和5年度に計画し,実施するものである.
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