2023 Fiscal Year Annual Research Report
身体挙動と脳活動を踏まえた無信号交差点通過時の空間認知モデル構築の試み
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21K04297
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Research Institution | Toyota Transportation Research Institute |
Principal Investigator |
三村 泰広 公益財団法人豊田都市交通研究所, その他部局等, 主幹研究員 (20450877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 無信号交差点 / 高齢運転者 / 身体挙動 / 脳活動 / 空間認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は,令和4年度に収集したデータを使用し,視線挙動・身体挙動・脳活動にかかる分析を実施した.視線挙動では,被験者の身体機能(視機能,柔軟性,平衡性,俊敏性)に加え,交差点形状(枝数と接続角度)と交通条件(歩行者,他の車両の存在)の影響を調整した解析を実施した.8交差点の走行映像の視聴より得られた区間別の空間認知量(単位時間当たりの角速度)を推定するモデルを構築した結果,高齢群の空間認知量は,ほとんどのケースで他の年齢群(若年・中年群)に比べ多いことを示した.他方,身体機能,交差点形状や交通条件を考慮すると,特に鋭角交差点において,交差点内進入直後の空間認知量に課題がみられた.すなわち,他の年代では空間認知量が有意に上昇するのに対し,高齢運転者群では変数にすら選択されなかった.身体挙動では,特定の交差点や被験者といった限定的な結果にとどまったものの,高齢者群,非高齢者群での違いが窺えた.特に,左右肩部の動きの差が高齢群で大きく,特定方向の確認をより大きく行っている一方,他方向の確認範囲が狭くなっている可能性が示唆された.脳活動では,ドライビングシミュレータによる実験空間での走行時の脳血流を計測した.結果,交差点通過直後の脳血流の年齢差が大きく,特に高齢群で大きく低下することを示した.全体として,目的であった高齢運転者の身体機能や道路空間,交通条件を踏まえた無信号交差点通過時の空間認知モデルを構築できたと考える.本成果は,高齢運転者に対する安全運転支援技術の開発ならびに免許更新時等において特に確認すべきポイントの検討に貢献するものと考える.他方,当初想定した身体挙動及び脳活動の本モデルへの反映はデータ・ハンドリングの課題もあり十分な成果が得られなかった.今後は,得られたデータの追加分析を通じて,高齢運転者の安全に資する成果を蓄積していきたいと考えている.
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