2021 Fiscal Year Research-status Report
新たな実験モデル構築による嫌気性廃水処理システム活性化を担う嫌気性原虫の機能解明
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21K04317
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
塩浜 康雄 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, ポスドク研究員 (40715017)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嫌気性繊毛虫 / 嫌気性微生物 / 嫌気性廃水(排水)処理 / メタン生成 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、実験室環境で培養樹立した嫌気性繊毛虫、嫌気性細菌およびメタン菌を用いた新たなメタン発酵槽モデルを構築して、嫌気性繊毛虫が嫌気性廃水処理システムのメタン産生量を増加させるメカニズムを明らかにすることを目的としている。
初年度では、モデル構築を目指す実際のメタン発酵槽の細菌叢を明らかにするために、下水(廃水)処理場採取サンプルと嫌気ボトル(窒素・炭酸混合ガス充填バイアル瓶)継代培養サンプルの16S rRNAメタゲノム解析を行い、97%相同性によるOTU (Operational Taxonomic Units)解析を実施した。その結果、嫌気性細菌叢とメタン菌叢のパターンが異なる嫌気ボトル継代培養サンプルが複数本得られたことを確認できたことから、これらの嫌気ボトル継代培養サンプルを次年度以降の実験に用いる。また、合わせて実施した嫌気性繊毛虫GW7株の共生細菌Ca. Hydrogenosomobacter endosymbioticusのメタゲノム解析により、その全ゲノムとコードされる遺伝子を明らかにした。これらの成果は多くの嫌気性微生物研究へ活用できるようにDDBJデータベースへ登録し、さらにオープンアクセスジャーナルによりその詳細を報告した。
さらに、次年度に予定している嫌気性繊毛虫の共生メタン菌によるメタン産生量の評価実験では、共生メタン菌の同定が必要となる。そこで実験に使用する嫌気性繊毛虫の共生メタン菌の16S rRNA遺伝子配列を解読し、その16S rRNA配列に特異的な蛍光プローブを用いてFISH解析(蛍光in situハイブリダイゼーション)を行い、最終的に共生メタン菌の同定に成功した。また、FISH解析の際、既に報告のあるメタン菌の細胞壁に特異的な溶菌作用を持つ酵素であるPei (Pseudomurein endoisopeptidase)を組み合わせて用いることで、不安定であった共生メタン菌のFISH解析を安定して実施することを可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画した下水(廃水)処理場採取サンプルと嫌気ボトル継代培養サンプルの16S rRNAメタゲノム解析を実施し、今後の実験に使用する嫌気ボトル継代培養サンプルの選定ができたことに加えて、次年度に予定している未同定であった嫌気性繊毛虫の共生メタン菌を同定することができたことから今回の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の計画目標とした下水(廃水)処理場採取サンプルと嫌気ボトル継代培養サンプルの16S rRNAメタゲノム解析と今後の実験計画で使用するの嫌気ボトル培養サンプルの選定が行えたことから、次年度以降も当初の実施計画に従って研究を実施する。
具体的には、初年度で選定した嫌気ボトル継代培養サンプルのメタン産生量をガスクロマトグラフィーで定量解析して、「嫌気性繊毛虫が存在する場合」にメタン産生量の増加が見られる嫌気ボトル継代培養サンプルをさらに選定する。選定した嫌気ボトル継代培養サンプルへ「共生メタン菌を保持する嫌気性繊毛虫」と「共生メタン菌を保持しない嫌気性繊毛虫」をそれぞれ加えた場合のメタン産生量を評価して、共生メタン菌を保持する、または保持しない嫌気性繊毛虫の役割について検証する。
また、次年度に予定する共生メタン菌単位あたりのメタン産生量の算出実験に用いる嫌気性繊毛虫のセルソーター単離培養法は、まだソーティング精度に課題が残るものの、実際の下水処理場採取サンプル中から嫌気性繊毛虫をセルソーティングすることも可能であった。そこで、嫌気性繊毛虫のセルソーター単離培養法をさらに改善して、実際の下水処理場採取サンプル中の嫌気性繊毛虫のゲノム解析や遺伝子発現解析に加えて、嫌気性繊毛虫に共生する細菌やメタン菌解析への応用についても検証する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により実験備品の納品について一部遅延が生じた。そのため、納品遅延分の実験備品については次年度に改めて購入する予定である。また、次年度分として請求した助成金については当初の使用計画に従って使用することを予定している。
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