2022 Fiscal Year Research-status Report
新たな実験モデル構築による嫌気性廃水処理システム活性化を担う嫌気性原虫の機能解明
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21K04317
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
塩浜 康雄 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40715017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新里 尚也 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (00381252)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 嫌気性微生物 / 嫌気性繊毛虫 / 嫌気性細菌 / メタン菌 / 嫌気性廃水(排水)処理 / メタン生成 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、実験室環境で培養樹立した嫌気性繊毛虫、嫌気性細菌およびメタン菌を用いた新たなメタン発酵槽モデルを構築して、嫌気性繊毛虫が嫌気性廃水処理システムのメタン産生量を増加させるメカニズムを明らかにする。 次年度では、初年度で明らかにした嫌気性繊毛虫の共生細菌Ca. Hydrogenosomobacter endosymbioticusの完全長ゲノムより、共生細菌が宿主嫌気性繊毛虫へ与える影響についてバイオデータベースならびにバイオインフォマティクスツールを用いて解析した。その結果、共生細菌Ca. Hydrogenosomobacter endosymbioticusのゲノム上にコードされるATP/ADP translocaseが構造的な健全性を保ち、酵素活性を有している可能性が高いことを明らかにした。共生細菌Ca. Hydrogenosomobacter endosymbioticusはATP合成オルガネラであるヒドロゲノソームに密着して存在していることや、そのジーン・レパートリーより糖やアミノ酸の発酵代謝、水素や低級脂肪酸等の利用も困難であることから、宿主嫌気性繊毛虫のATPを搾取して生育している可能性が高いと考えられた。その一方で、抗生物質で共生細菌Ca. Hydrogenosomobacter endosymbioticusを除くと宿主嫌気性繊毛虫は生育できないことから、共生細菌Ca. Hydrogenosomobacter endosymbioticusは宿主嫌気性繊毛虫の生存に必須のなんらかの機能を担っていることが推測された。今後の研究実施計画では、さらに詳細に共生細菌の代謝経路を解析することにより、共生菌が宿主嫌気性繊毛虫の生存や代謝に果たす役割を明らかにし、嫌気性繊毛虫が嫌気性廃水処理システムのメタン産生量を増加させるメカニズムについて解析を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次年度中の所属機関変更に伴い、新たに実験環境を整備する必要性が生じたため実験計画に遅延が生じた。そこで、前所属機関の研究者を研究分担者として新たに追加し、これまでの実験環境(実験条件の変更なし)で培養実験や次世代シーケンサー解析用サンプル調製を継続して実施可能な体制を構築し、現在の所属機関においても支障なく研究実施計画を遂行できる体制を整備した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果より、共生メタン菌に加えて共生細菌も宿主嫌気性繊毛虫の生存や代謝に重要な役割を担うことが示唆された。そこで、最終年度では当初の研究実施計画に加えて、共生細菌の代謝経路詳細や宿主嫌気性繊毛虫へ与える影響の解析を含めて、嫌気性繊毛虫が嫌気性廃水処理システムのメタン産生量を増加させるメカニズムについて解析を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
自身の所属機関変更に伴い、実験計画を遂行する上で前所属機関の研究者1名を新たに研究分担者として追加した。その際に行った研究実施計画の見直しより実験試薬や器具等の購入準備に遅延が生じたため、次年度使用が生じた。翌年度分として請求した助成金については、当初の実験計画に従って使用することを予定している。
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Research Products
(2 results)