2021 Fiscal Year Research-status Report
水生生物の生物応答を用いた玉川-田沢湖水系における毒性物質群の動態解明
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21K04325
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
金 主鉉 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20302193)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 玉川温泉 / 田沢湖 / ムレミカヅキモ / ニセネコゼミジンコ / ゼブラフィッシュ / 短期慢性毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
玉川温泉は様々な湧出口があり、大噴と呼ばれている湧出口からは97℃の温泉が毎分1万Lも噴出している。この温泉はpH 1.1の強酸性泉で玉川毒水とも呼ばれている。1939年に電源開発や玉川疎水国営開墾事業を目的とした玉川河水統制計画が策定され、玉川毒水を希釈するため玉川の河水を田沢湖に導水した。これにより玉川・田沢湖は水質で一体化し、田沢湖の酸性化および多くの水生生物の絶滅が進行した。これを解決するため、1991年から玉川中和処理施設において石灰接触による中和処理(目標pH:3.5)が開始されているが、田沢湖のpHは依然として4.9~5.2で推移している。 本研究は以上の背景より、玉川-田沢湖水系における毒性物質群の動態解明を目的として、栄養段階の異なる3種類の水生生物の生物応答を用いた短期慢性毒性評価から、(1)玉川強酸性泉の中和による毒性レベルの軽減効果、(2)田沢湖へ流入するまでの自然緩衝効果による毒性レベルと毒性物質群の変化、(3)田沢湖に残存する毒性物質群の同定を行い、田沢湖の再生に向けた水系全体の水質管理のあり方を検討している。 本年度は(1)玉川強酸性泉の中和による毒性レベルの軽減効果について検討した結果、以下のような結果が得られた。 (1)玉川中和処理施設におけるムレミカヅキモ生長阻害の低減効果は約8倍以上、中和処理水のpHをさらに調整して中性(pH6.8程度)にした場合、EC50は著しく大きくなり改善する。(2)ニセネコゼミジンコ短期慢性毒性試験では、中和処理による毒性低減効果は約4倍以上、中性で16倍以上改善する。(3)ゼブラフィッシュ胚・仔魚を用いた試験では、現状の中和処理により孵化率16倍、致死率2倍の改善効果がみられ、中性の場合は孵化率、致死率への影響はみられなかった。現状の中和処理対策を強化しても藻類、甲殻類への毒性はなくならない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
玉川中和処理施設における玉川強酸性泉の中和による毒性レベルの低減効果について、3種類の水生生物(ムレミカヅキモ、ニセネコゼミジンコ、ゼブラフィッシュ)の生物応答を用いた短期慢性毒性評価によりNOEC、EC50などの定量的評価ができた。また、現状の中和処理水の目標pHは3.5程度と低いため、中和処理対策を強化してpHを6.8にした場合の毒性レベルの低減効果についても検討を加え、藻類、甲殻類への毒性はなくならない可能性を明らかにするなど、これまでの研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は玉川強酸性泉の中和による毒性レベルの低減効果について、重点的に検討を行った。今後は、玉川温泉から田沢湖へ流入するまでの毒性レベルおよび毒性物質群の変化を検討すると同時に、毒性物質群として考えられるアルミニウム、ホウ素、フッ素などが3種類の水生生物(ムレミカヅキモ、ニセネコゼミジンコ、ゼブラフィッシュ)に及ぼす影響について検討を行う。この結果をふまえ、田沢湖における潜在的な毒性物質群の同定試験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ対策として、出張を控えたことや実験に使う水生生物の飼育を研究代表者がほとんど行ったため、人件費の支出が少なかった。今後は実験水槽の整備、水生生物の飼育の補助等で物品費、人件費等が増える見込みである。
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