2022 Fiscal Year Research-status Report
Research for identification of rubber-decomposing gene which is included in rubber-decomposing bacteria
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21K04329
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
笈木 宏和 久留米工業高等専門学校, 生物応用化学科, 教授 (00290825)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゴム分解微生物 / 変異体作製 / リアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゴム分解微生物(Enterobacter MOE-1株、以下MOE-1株と記す)の変異体作製によるゴム分解遺伝子部位の同定、遺伝子組み換えによる機能特定と改良、およびそれを基にした低温でかつ安全に利用することのできる合成ゴム分解バイオリアクターの作製を行うための検討を行う。今年度は昨年度に引き続き、ゴム分解能力喪失変異体の作製を試みた。紫外線を用いてゴム分解微生物にランダムな変異を起こし、得られた複数個の変異体群から、アルデヒドの生成能力の欠落した株を選別していった。ゴム分解能喪失の有無は、昨年度報告したプレート法を用いた。これにより、想定よりも早く変異体の選別が可能となった。 前年度と合わせて、おおよそ1万個のコロニーの分析を行ったが、ゴム分解能欠損株を発見することはできなかった。今年度もコロナの影響により実験が制限されたことも原因として挙げられるが、変異体作成による手法は効率が悪いことから、昨年度後半より、ゴムを分解する酵素のアミノ酸配列による遺伝子部位同定についても並行して実施している。 前年度で報告した通り、最終年度実施予定のゴム分解変異体の大量培養をバッチ式で行うためのリアクター作製を前倒しして平衡実施した。今年度は予備試験として、分解率が向上するための予備試験として、フラスコを用いた小型培養装置による各種条件の振り分けを行った。これより、酸素濃度や培地組成を調整することにより、従来の5~7倍程度の分解率を得ることに成功した。また、各種培養条件でデータをもとに、SVMによるSBR分解率予測モデルの構築を行ったところ、ほとんどの予測モデルにおいて0.7前後の精度を得た。この条件をもとに市販のステンレス容器を加工し、ゴムの分解をバッチ式で行う大型リアクターの構築を行った。次年度、小型装置で得られた結果も参考にしながら、分解条件の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年同様、コロナウイルス蔓延による非常事態宣言に合わせて研究活動に制限が出ており、一部の想定された実験に予想された結果を得ることができなかった。変異体の作製は、予定の半年を大きく過ぎてしまったが、結果的に今年度中に1万個程度のUV照射コロニーを分析することができた。ゴム分解能喪失の有無は、昨年度報告した、マイクロプレートのウェル内にラテックスと菌体を入れて分解の有無を確認するプレート法を用いることにより、想定よりも早く変異体の選別が可能となった。以上の条件にもかかわらず、アルデヒド生産能の低下した可能性のある株は見受けられたものの、明確な変異体が得られなかった。変異体の作製は確率および菌の変異しやすさに左右されるため、今回の実験のように規定に達してもうまくいかない可能性はあり得る。 そのため、昨年度後半より変異体作製と同時進行で、ゴムを分解する酵素の精製を並行して実施している。精製した酵素は、そのアミノ酸配列を決定することにより遺伝子部位を同定することができると思われる。 また、前報にて記載した通り、ゴム分解をバッチ式で行うリアクターの作製を前倒しで実施している。今年度は小型のフラスコを用いた各種条件の検討を中心に行った。実験に用いた培地の組成や分解を促進させるための担体の追加、酸素濃度や温度の変更などの条件を変更させて、その分解率を測定したところ、3日間での培養において、従来の条件に対して5~7倍程度の分解率を得ることに成功した。特に、リン濃度を向上させることによりゴム分解率が飛躍的に向上することが確認できた。この結果をもとに、市販のステンレス容器を加工し、ゴムの分解をバッチ式で行う大型リアクターの構築を行っている。そのため、変異体をもとに作製された組み換え大腸菌が完成した場合に、すぐに実験に取り掛かることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
紫外線照射法によるゴム分解能の欠落した変異体の作製は継続的に実施する。それと同時に、ゴム分解遺伝子部位特定のもう一つの手法となるゴム分解酵素の精製を継続して実施する。ゴム分解菌より、リゾチームで酵素を抽出したのち、硫安沈殿およびCM-Sephadex、Bio-Gel A-0.5mを用いて精製を行い、得られた精製画分を構造解析に供することによりアミノ酸配列を決定し、この結果より塩基配列部位を推定する。ゴム分解菌野生株の全塩基配列はすでに測定済であることから、同配列を検索し、アミノ酸配列より導き出された塩基配列と相同性のある場所を検索することにより、目的部位を特定する。 また、前述の変異体が作製できた場合は、変異体の全塩基配列を測定し、すでに測定している野生株と比較することにより変異の起こった部位を特定する。全塩基配列は、長岡技科大生物機能工学課程の笠井研究室所有の次世代シーケンサーを用いて行う予定である。 ゴムの分解をバッチ式で行うリアクターの試作品作製については前年度で終了しており、今年度はその運用を行う。前年度までに得られた結果をもとに培地濃度、ばっ気量などを変えて培養を行い、その分解率を測定し、これまでの条件と比べてどの程度分解率が向上するかを確認する。それと同時にSVMによるSBR分解率予測モデルの構築についても同様に行う。 無事に変異体部位を特定し、大腸菌への組み込み体が作成できた場合、上記の最適条件でのバッチ式リアクターでの培養を試み、野生株に比べて分解率がどの程度向上したかについて検討する。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記した通り、ゴム分解遺伝子の欠損した変異体の作製が終わっていないため、次の実験に移行できない。そのため、関連物品の購入を止めている。 変異体作製が終了次第、購入を行う予定である。ただし、変異体作製がうまくいかなかった場合を考慮して、現在、ゴム分解遺伝子よりコードされた酵素の精製試験を同時進行で行っている。同酵素のアミノ酸配列より遺伝子配列を測定することが可能なため、今後酵素精製がうまくいった場合、購入機材の変更を行う可能性がある。 また、最終年度に実施予定であったリアクターの作製を前倒しで行っているため、消耗品予算が予定より多くなっている。
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Research Products
(2 results)