2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on asbestos release from weathered asbestos slate roofing materials during rainfall
Project/Area Number |
21K04331
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Research Institution | 大阪市立環境科学研究センター |
Principal Investigator |
板野 泰之 大阪市立環境科学研究センター, その他部局等, 研究主任 (50332432)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アスベスト / 非飛散性建材 / スレート波板 / 劣化 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本においては平成18年9月1日に施行された改正労働安全衛生法施行令により、0.1%を超えてアスベストを含有する全ての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されている。しかしながら、現に使用過程にあった物の継続使用は認められており、現在でも多くのアスベスト含有製品が日常に溢れている。中でも過去の出荷量が多いアスベスト含有スレート板は、工場、倉庫、駐車場、家屋の増築部などの屋根や壁として広く利用されてきた。アスベスト含有スレート板は発じん性が比較的低い「非飛散性建材」に分類されるが、表面が著しく劣化した状態で使用過程にあるものが散見される。 本研究において、過去に分析用検体として搬入された劣化したアスベスト含有スレート波板片の暴露実験を実施したところ、降雨に伴いクリソタイル繊維が飛散すること、スレート片を伝った流水のみならず、雨滴がスレート片表面に衝突して発生する飛沫中にもアスベスト繊維が含まれることを確認した。また、スレート片を電子顕微鏡で観察したところ、表裏で表面状態が大きく異なり、劣化面では表面が粗くアスベスト繊維が露出していたのに対し、裏面はアスベスト繊維が基材内にしっかりと封じられている様子が確認された。 実態調査として、劣化したアスベスト含有スレート板が用いられていると思われる駐車場の側溝堆積物を採取し調査したところ、0.1%を超えるアスベストを検出するなど実際に使用過程にある建築物周辺にアスベスト繊維が飛散している実態を確認した。更に、スレート屋根と隣接する民家の協力を得て調査を実施したところ、窓や網戸に大量のアスベスト繊維が付着し冊子部にはアスベスト繊維を含む粉塵が大量に堆積していることを確認し、1週間程度で相当量のアスベストが付着・堆積することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19まん延の影響で調査を慎重に進めざるをえなかったことに加え、購入予定の高額機器について、要求される感度などの仕様範囲が予想よりも狭く、当初の想定よりも高額となったため初年度予算で購入ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
アスベスト含有スレート波板表面の劣化の程度を定量的に評価する手法を検討する。リバウンド式硬度計を利用し、表面硬度と劣化度の関連を調べる。風雨に暴露されない面はほとんど劣化しないことが初年度の研究により確認されたことから、非劣化面と劣化面の表面硬度をそれぞれ測定し、その比率から劣化度を判定する手法を検討する。併せて、高圧水吹付けによる石綿飛散現象を利用した劣化判定手法を確立する。劣化面に高圧洗浄機により水を噴霧した際のアスベスト飛散の有無および飛散量を調べ、表面劣化の判定根拠にしうるよう各種条件を検討し、試験方法を確立する。 これらに加え、実際に使用過程にある劣化スレート板からのアスベスト飛散実態調査を継続する。特に、雨天時のみならず晴天時におけるアスベスト飛散の有無を確認する。調査に協力いただける建築物の劣化部直近において、環境省のアスベストモニタリングマニュアルに準じた方法で大気試料を捕集し計測を試みる。 上記に加え、初年度に採取した堆積物について含まれるアスベストの形態や密度などを詳しく調べ、再飛散の可能性について言及するための情報を得る。
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Causes of Carryover |
備品として購入予定であった高額機器(ポータブル硬度計)の仕様を実際の試料に照らして再検討した結果、当初予定よりかなり高額になることがわかり、購入が遅れているため。また、COVID-19の影響で学会等がオンライン開催になったこと、調査地点への訪問を制限する必要があったことから旅費の支出が少なかったため。
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