2022 Fiscal Year Research-status Report
Research on enhancement of resilience by building monitoring system considering complex disasters.
Project/Area Number |
21K04334
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 皓平 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40648713)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 複合災害 / 浸水 / 地震 / 免震建物 / 流体解析 / 連成解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の気候変動に伴う豪雨災害では、都市部でも建物への浸水被害なども報告されている。基礎免震建物では、免震地下ピットを有することから、このような浸水被害を想定し、排水設備を設けることが一般的である。しかしながら、内水氾濫など想定外の浸水被害が発生した際に地震が発生するマルチハザードのリスクは検討の余地がある。本年度は上記のようなシナリオに対するモニタリングシステムの開発の一環として、免震建物が浸水被害と地震被害を同時に受けた時の免震システムの性能評価を目的として、その解析的検討と振動台実験の計画を行った。 解析的検討では、30m四方程度の免震地下ピットと免震基礎スラブをモデル化し、免震地下ピット内が浸水した状態で、免震地下ピット全体に地震動が作用した時の流体の動きを流体解析のオープンソースプラットフォームであるOpenFOAMにより行った。本来は、地震動によって免震建物である基礎スラブは地震時慣性力によって変形が生じるが、ここでは、基礎スラブを固定、剛壁とみなし、免震基礎スラブに加わる動水圧の評価を行った。これにより、地震荷重を受ける流体のスロッシングによって剛壁に加わる荷重が得られる。さらに、これを多質点モデルの構造解析の外力として作用させることによって、流体の影響を考慮した免震建物の地震時応答を明らかにし、浸水被害を受けている免震建物の地震による挙動から流体が免震建物に及ぼす影響評価を行った。流体の影響により免震性能がやや損なわれ、加速度が増大することを数値解析的に明らかにした。 建物と流体の連成効果について、シミュレーションでの精度検証として実験データは有用であるため、水平方向にある程度柔性を有する免震模型の基礎スラブ相当を流体内に設置し、浸水深の違いが免震性能に及ぼす影響を評価するための実験計画を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で掲げる複合災害に対するモニタリングシステムの構築に向けて、浸水被害と地震入力を同時に考えることで、建物の継続使用性に影響を及ぼす加速度応答や構造性能にどのような変化がみられるのかを解明することが必要である。システム同定問題に関しては、建物内に配置される少数の加速度センサから建物全体の挙動を推定する方法を構築した。具体的には、対象建物の振動解析モデルとして剛性や減衰係数といったモデルパラメータを同定することで、災害時に建物内に生じた最大層間変形や最大絶対加速度などを推定する。さらに、研究実績の概要で述べたシナリオに関しては、解析的な検討として、対象建物のモデル化および基本的な流体解析方法の構築を目指しており、流体解析結果とその分析について概ね計画通りに進展している。振動台実験の実施に向けて、必要な圧力センサなどは購入済で、本研究課題の最終年度内での実施に向けて準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、複合災害として浸水と地震入力が同時に起こった時の建物の構造性能に着目した。このことは、本研究課題である複合災害に対応したモニタリングシステムの開発を行う上でも、災害シナリオの想定の一つとして必要であると考えている。想定シナリオとして基礎免震建物と免震ピット内の浸水と地震動入力を同時に扱う問題を考えると、流体のスロッシング自体が免震基礎スラブの影響を受ける。さらに免震基礎スラブは、流体の存在によって、非浸水時とは異なる動きをすることが考えられる。そこで、このような振動の連成効果をシミュレーションにより検討するために、流体と構造体の連成解析方法を構築する。さらに、構築した連成解析手法を本年度で実施する振動台実験の実験模型に適用することで、実験による実測データ、模型挙動とシミュレーション予測を比較することで、解析方法の妥当性を検証する。さらに、浸水被害を受けた免震建物の機能低下度を定量化することで、地震時の室内被害や構造的損傷リスクの評価を行う。 また、室内被害評価に関しては、画像センサ等を活用した非構造部材のモニタリングシステムにおいて、機械学習やAI手法を取り入れた画像分析により、地震時や浸水時などの異常検知を自動化する方法についても研究開発を続ける。
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Causes of Carryover |
本年度では、複合災害を検討するために、まずはその影響を工学的知見として得ることを目的に、浸水と地震入力を同時に考慮した流体-構造連成解析手法の構築を目指した。当年度では、その解析と実験による検証を計画して、解析ソフトや圧力センサーなどの購入を行ったものの、実験模型の設計には至らず、次年度に行うこととした。また、本年度で画像センシング以外にも他のセンシング方法の検討、研究開発をすることとしていたが、上記のように若干の研究計画変更を行ったため、次年度使用額が生じた。
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