2022 Fiscal Year Research-status Report
減衰部材を有する鋼構造建物の大地震後の継続利用を志向した合理的設計解導出法
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21K04337
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高木 次郎 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (90512880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大崎 純 京都大学, 工学研究科, 教授 (40176855)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大地震後の継続利用 / 高耐震設計 / 鋼構造 / 最適化 / 座屈拘束ブレース / 優良設計解 / 限界耐力計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
最適化手法を利用して鋼構造建物のコスト最小設計解(優良設計解)を求め、耐震性能や架構型式、構造種別、規模等に応じたコスト変化を分析した。架構型式については、ほぼ全ての柱梁接合部を剛接合とする架構型式(全体型)と外周部に耐震架構を集約する架構型式(集約型)を評価した。構造種別については、純ラーメン構造、座屈拘束ブレース(BRB)あるいは鋼管ブレース(PB)を有するブレース構造などを検討した。純ラーメン構造では柱梁部材の断面寸法を設計変数とし、ブレース構造ではそれに加えて、ブレースの耐力と配置を設計変数とした。BRB(減衰部材)と主架構を同時に最適化して合理的な耐震システムを導出した。最適化の制約条件は、長期荷重と中小地震に対する許容応力度設計を満足することと、大地震に対する設計として限界耐力計算による安全限界の制約を満足することとした。限界耐力計算中の静的増分解析による建物の水平耐力と変形性能の評価により減衰部材による地震エネルギー吸収効果を積極的に評価した。純ラーメン構造では集約型の鋼材量が少ないことやBRBを有するブレース構造では主架構の剛性が相対的に低い全体型が合理的であることなどを確認した。また、集約型の架構型式は米国をはじめとする諸外国で一般的に使われることに着目して、米国の一般的な耐震設計法であるEquivalent Lateral Force (ELF) procedureを満足する全体型と集約型の優良設計解を導出した。日本の設計と比較してELFに準拠した純ラーメン構造の水平剛性が大幅に小さいことなどを確認した。さらに、高層免震構造についても上部構造の応答と免震層の最大変位を制約条件とする優良設計解を導出して、免震装置と上部構造のコストの総和を最小化する優良設計解を導出した。上記の研究により、査読付き論文1編を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進捗は概ね順調である。 当初計画では、高耐震設計解の導出や検討建物の拡充などを2022年度の研究項目としていた。高耐震設計解の導出に関しては、大地震に対する設計に用いた限界耐力計算法における要求耐震性能を1.25倍や1.5倍にした場合の設計解の導出を行い、入力レベルと設計解のコストとの関係を調べた。優良設計解同士の比較による耐震性能とコストの関係性の評価によって、耐震性能に関する費用対効果を理解するための基礎資料を得た。また、検討建物の拡充に関しては、建物の階数を変化させた場合やブレースに座屈拘束ブレース(BRB)の代わりに鋼管ブレースを用いた場合の検討などを行い、建物の規模や構造形式によるコストと鋼材量の違いを確認した。研究成果の発表に関しても、査読付き論文の執筆を進めており、概ね順調な進捗と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、検討建物の拡充と共に最適化設定の検証を進める。これは、概ね申請時に示した通りである。検討建物の拡充については、プログラムの効率化を進めて、様々な規模や用途の優良解を導出する。設計条件に応じた優良設計解のデータを蓄積し、それらの傾向を分析して知見を整理する。最適化設定の検証に関しては、優良設計解の制約条件に対する感度を調べ、制約条件に対してロバストな設計解の傾向を調べる。具体的には、制約条件値の変化に伴う優良設計解の変化を、鋼材量やコストのほか構造特性に着目して定量的に調査し、制約条件値に対して過度に敏感にならないように、制約条件値に幅を持たせるなどの対応を考える。研究成果はこれまで同様に随時査読論文にまとめて発表する。
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Causes of Carryover |
国際会議への参加を予定していたが、コロナ禍の影響で参加を見送った関係で次年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)