2023 Fiscal Year Research-status Report
人工知能技術を応用した骨組構造物の冗長性設計法に関する研究
Project/Area Number |
21K04339
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
高田 豊文 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (90242932)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人工知能 / 機械学習 / トラス・トポロジー最適化 / 線形最適化 / 深層学習 / U-Net |
Outline of Annual Research Achievements |
トラス・トポロジー最適化問題は,グランドストラクチャと呼ばれる高次不静定トラスから,部材断面の変更を繰り返すことで最適トラス・トポロジー(最適解)を得るのが一般的である.2023年度は,前年度に引き続き,2次元トラス・トポロジー最適化問題を対象として,最適トラス・トポロジーの軸力分布(最適解)を機械学習によって効率的に予測する方法について検討した.前年度では,U-Netと呼ばれる畳み込み深層学習法を用いたモデルが,最も精度よく最適解を予測できることが明らかとなったが,真の最適解が得られない場合もあった.また,節点数・部材数の多い大きな設計対象を解析するためには,更なる計算効率の向上が必要であった.そこで2023年度は,解精度の向上と解探索過程の更なる効率化を目指し,深層学習U-Netと数理最適化手法である線形最適化法との併用による解析手法について詳細に検討した.具体的には,U-Netモデルから得られたトラス・トポロジーの軸力分布(予測解)を利用して,元のグランドストラクチャの部材数・節点数を減らし,そこに線形最適化法を適用することで,U-Netだけを用いるよりも高精度で効率よく最適解を求める方法を提案した.様々な解析例題に提案手法を適用した結果,①線形最適化法とU-Netを併用させることで計算効率が格段に向上し,これまでよりも短時間で最適解・準最適解を求めることができること,②元のグランドストラクチャの部材数・節点数を減らす際の閾値を変化させることで,「最適解の精度」と「解を得るために要する計算時間」のいずれを優先させるかをコントロールできること,などを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までは,深層学習U-Netによって,部材数が1000程度のトラス・トポロジー最適化が可能となったが,真の最適解が得られないこと(解の精度)と計算効率の向上が問題であった.2023年度は,これらの問題点を,数理最適化法(線形最適化法)の併用という方法で解決し,部材数が1000程度のトラス・トポロジー最適化であっても,瞬時に(計算時間1秒未満)に最適解を求めることができるようになった.また,未知(未学習)の問題(荷重条件)であっても,真の最適解あるいは目的関数値が非常に近い準最適解が得られる.U-Netと線形最適化法の併用によって,未知の問題でも精度の良い最適解を効率的に求められる点は評価できるが,当初,本研究課題が目指した冗長性を有するトラスの生成には至っていない.以上の観点から,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
深層学習U-Netと数理最適化法を併用することで,既知のデータ(最適解)から未知の問題の最適解・準最適解を効率的にかつ精度よく得られることが明らかとなった.このことは設計規模が大きくなると解析負荷が莫大となるトラス・トポロジー最適化問題に対して,小規模な既知の最適解を利用してより大規模な解を得られる可能性があることを示唆している.また,教師データの作成やニューラル・ネットワーク・モデルの学習等を含めると相当の計算時間を要するが,本研究で得られた学習済みモデルを,別のトラス・トポロジー最適化問題(例えば冗長性を考慮した問題)に転用できる可能性もある.そのため,様々なトラス・トポロジー最適化問題への適用は今後の検討課題である.
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Causes of Carryover |
2023年度は,研究代表者が所属大学の学科主任を務めたことや学会委員会での出版準備など業務が多忙となったこと,身内(実母)の不幸があったことで,研究遂行に想定以上に時間を要した.そのため,当初予定していた研究成果発表のための査読付き論文の投稿も遅れた.ただし,論文は既に受理されており,2024年度に開催される発表会で口頭発表での旅費として,次年度使用額を使用する計画である.さらに,現在の研究を継続させるため,使用ソフトウエアMathematicaの保守料にも充てる計画である.
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