2021 Fiscal Year Research-status Report
CLTの蟻害に対する劣化抵抗性評価と補修・補強方法の確立
Project/Area Number |
21K04341
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
今本 啓一 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (60337300)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 千鶴 東京理科大学, 工学部建築学科, 助教 (00284787)
大塚 亜希子 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (00825101)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | CLT / 蟻害 / 劣化 / 補強 / 補修 |
Outline of Annual Research Achievements |
CLT建築物を長期にわたって利用していくためには,CLT の耐久性に関する研究が必要不可欠である。特にCLT という材料の構成上,側面に劣化因子の侵入口となりやすい木口面が現れてしまうため,耐久性能に独自の課題を抱えているといえる。そこで本稿では,生物劣化の1つである蟻害に着目し,CLTの蟻害劣化状況の把握を行うこととした。 CLTは木口面の向きが層ごとに直交しているため,外部に晒されている木口面が無垢材の2面に対して,4面全側面に存在している。食害の進行は木口面から起こりやすいため,4面に木口面を持つCLTは食害による食痕の形状が複雑化することが懸念される。そのため本試験では,CLTを食害暴露させることによって,実際の食痕の形状を把握することとした。3層CLTの6か月暴露の撮影結果より,木口面から食害が進行していることが確認できた。3層CLT(暴露12か月)ならびに5層模擬CLTの写真より,各層の木口面から食害が発生し,柔らかい早材を中心に食害が進行し,そのまま同一層の対面の木口面まで食痕が貫通あるいは消失していた。このように各層での食痕は確認できるが,隣接する層との相互関係は確認できない。この結果から,接着剤の有無に関わらず,層を跨いで移動するような食害は起こりづらいことが示唆された。総括として,本年度は以下の知見を得た。 1)CLTの蟻害では各層の木口面から食害が発生し,無垢材に比べて試験体内部の食害率の変動が小さいことや隣接する層に繋がる食痕は確認できないことが分かった。 2)圧縮試験より,模擬欠損CLTに比べて食害暴露CLTは食害率に対するヤング係数の低下率が大きいことが確認できた。今後も引き続き,蟻害劣化を受けたCLTの劣化特性に関するデータを収集するとともに,補強方法などについても検討していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずはCLTにおいて蟻害の被害が生じるか否かが研究の成否の大きなポイントであったと考えていたが,この点を自然暴露によって確認でき,CLTならではの蟻害特性をCTスキャンによる画像解析により把握ができたたことは何にもまして大きな進展であったと考える。 さらには力学特性の減少の程度も食害率との関係において評価することもできた。 本研究の目的の一つとして,蟻害による力学特性の回復を検証することがあり,今後はそれに向けた検討を進めてゆきたい。 研究の進展は順調であるが,まだ最終目標に到達していない,という自己評価により区分を(2)とさせていただきました。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的の一つとして,蟻害による力学特性の回復を検証することがあり,今後も引き続き,蟻害劣化を受けたCLTの劣化特性に関するデータを収集するとともに,補修・補強方法に関する検討を行う必要がある。 特に補修・補強においては,CLTが建築物においてどのように構成されているかを調査し,その構法に則った部材試験に基づいて補修・補強方法の検討を行ってゆきたい。
|
Causes of Carryover |
蟻害フィールへの暴露試験などは,かなりの移動を伴う作業であったりするが,コロナ禍の為この行動を制約せざるを得なかったことから派生した諸所の費用支出が遅れたことが原因と考える。
|
Research Products
(4 results)