2021 Fiscal Year Research-status Report
非線形挙動に対するトポロジー最適設計の新展開:統計的推論と加速最適化法を軸として
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21K04351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寒野 善博 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (10378812)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 最適設計 / 構造最適化 / 凸最適化 / 双対性 / 加速勾配法 / 信頼性最適設計 / データ駆動型計算力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
構造物の最適設計は,数理工学における最適化手法を基盤技術として,設計者の意思決定をさまざまな形で支援する方法論である.トポロジー最適化は,最適設計の中で最も自由度が高く,高い性能をもつ構造物を設計するための創造的な技術として重要である.この研究課題では,トポロジー最適化をはじめとするさまざまな最適設計問題に対して,従来よりも高速な解法を開発することを目的としている.その際に,データ科学の分野で注目を集めている最適化の加速法を1つの指導原理とする.また,種々の最適設計問題の定式化そのものを工夫することで,加速の効果をより高めることを狙っている.さらに,これらを推論や予測の手法と組み合わせることで,新たな一連の解法を開発することを目標としている. 今年度は,主に,信頼性最適設計における新たな定式化の開発と,構造実験のデータから構造物の挙動を予測するデータ駆動型の手法の開発の2つをテーマとして,研究を展開した. 信頼性最適設計は,不確かさを考慮した最適設計法の1つである.信頼性最適設計では,不確かなパラメータが従う確率分布(入力分布)を仮定し,構造物が制約を満たす確率の下限値(信頼性)を指定した下で,最適化を行う.この研究課題では,入力分布の期待値と分散がある集合の中の任意の値をとり得るという新しい問題設定を提案し,その最悪値に対する信頼性制約を考えた.そして,この制約が,確率変数を含まない有限個の制約に帰着できることを示した. 構造力学では,通常,材料に固有の構成則を仮定して釣合い解析などを行う.ここで,構成則は実験データをもとに作られる経験的なモデルであるが,近年,このような経験的な手法にかえて材料実験のデータを直接的に利用することで釣合い解析を行う手法が注目を集めている.この研究課題では,カーネル法に基づき,ある構造実験のデータから別の構造物の釣合い挙動を推論する手法を開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べた信頼性最適設計は,最適設計の中でも難しいとされる問題である.この研究課題では,入力分布が不確かであるという,さらに複雑な問題設定を扱っている.最悪の入力分布に対する信頼性制約は,無限個の信頼性制約と等価であり,そのままの形で扱うことは非常に難しい.これに対して,この研究課題では,確率変数を含まない有限個の制約に帰着できることを示しており,最適設計の高速化に貢献していると言える.また,データ駆動型の計算力学の既存手法の多くは,1つのデータ点の情報を利用する形式をとっている.これに対して,この研究課題で開発した手法はデータに含まれる複数のデータ点の情報を利用しており,このため既存の手法よりも高い予測精度をもつと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな制約をもつ最適設計問題の解法の基盤として,非線形の種々の力学の問題に対する効率的な解法の開発を引き続き行う.また,不確かさを考慮した最適設計問題に対しては,信頼性最適設計と並ぶもう1つの柱であるロバスト最適設計についても同様の取り組みを行う.これらを通じて,この研究課題で開発目標としている解法を整備していく.
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会や研究集会が,オンライン化されたり中止になったために,学会参加費や旅費の計上額と今年度の使用額に大きな差が生じた.また,今年度の研究テーマの1つである信頼性最適設計について,当初に検討していた解法だけでは十分な規模の問題が解けない可能性があることが明らかになった.このため,解法の実装を行う前に,別の解法の候補を検討する必要が生じた.このため,研究計画を変更し,実装および数値実験を次年度としたため,その結果として次年度使用額が生じた.
次年度は,今年度の研究で得られた成果を論文および学会発表により公表する活動を行う.また,上記の新たな解法の候補の検討を引き続きを行う.そして,開発した手法の性能を評価するために必要な計算機関連の物品を購入し,成果の発表および情報収集のための学会参加費および旅費として研究費を使用する計画である.
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Research Products
(6 results)