2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Seismic Response Prediction Method Based on RC Non-Structural Wall Damage Photographs Using Deep Learning
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21K04354
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉岡 智和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (40304852)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 深層学習 / セマンティックセグメンテーション / 地震被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, RC方立壁の地震被害写真から損傷量を画像測定し,その損傷量からそれが経験した最大部材角を推測する技術の確立を目指している。 当該年度は,せん断破壊を想定した実大RC方立壁試験体としてD700試験体(寸法:壁長700mm×壁高800mm×壁厚150mm,せん断スパン比0.57,壁筋:ダブル配筋)を3体,及び昨年度に1体実施したS800試験体(寸法:壁長800mm×壁高800mm×壁厚150mm,せん断スパン比0.5,壁筋:シングル配筋)を追加で2体実施した。得られた実験結果から,損傷量(ひび割れ長さ,コンリート剥落・欠損面積)と部材角の関係に与えるせん断スパン比,壁筋量の影響を確認した。得られた知見として,せん断スパン比の増加に伴い,同一部材角におけるコンクリート剥落・欠損面積は減少する範囲が存在するものの,ひび割れ長さには大きな相違を見られなかった。一方,壁筋量の減少に伴い,同一部材角におけるコンクリート剥落・欠損面積とひび割れ長さが共に減少する傾向が見られた。 さらに,昨年度生成したDeep neural networkモデルを用いたSemantic segmentationによるRC方立壁の損傷検出器の改良を行った。表面気泡を含むコンクリート打放面の画像を十分なエポック数,すなわち検証画像に対する正解率が頭打ちになるまで学習させることで,それをひび割れと誤認識することが大幅に減少した。さらに,極細ひび割れ(幅約0.2mm)の検出するため,損傷画像を拡大(解像度:約0.2mm/画素から約0.1mm/画素)し,さらに512×512画素に損傷画像を分割し検出器に入力する際に,上下・左右で256画素分重複した分割画像を作成し入力した。その結果,検出器による極細ひび割れの検出精度の向上が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施した実大RC方立壁試験体(D800,D700,S800試験体群=総計9体)の水平加力実験結果から,損傷量と部材角の関係式を回帰分析で求める際に,次の点に留意する必要がある事が把握できた。把握できた留意点は次の通りとなる。 (1)ダブル配筋に比較しシングル配筋では,同一部材角でのひび割れ長さ,コンクリート剥落・欠損面積が小さくなるため,両者では異なる関係式が必要となる。(2)最大荷重以降からせん断破壊後に抵抗力を完全に喪失する範囲において,コンクリート剥落・欠損面積から部材角を推測できるものの,せん断スパン比が増加すると共に同一部材角でのコンクリート剥落・欠損面積が減少する傾向を考慮する必要がある。(3)ひび割れ長さと部材角の関係は,せん断スパン比0.5,0.57において,同じ回帰式を利用し評価可能であった。 さらに,昨年度生成したDeep neural networkモデルを用いたSemantic segmentationによるRC方立壁の損傷検出器について,課題となっていた塗装面上の表面気泡(ピンホール)をひび割れとして誤検出する不具合と,極細幅ひび割れの未検出の2点について,学習データを新たに増加させての再学習と入力画像の工夫により概ね改善できた。 以上のことから,当該年度の研究課題は概ね達成できたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,実大RC方立壁試験体の水平加力実験を継続し,ダブル配筋したRC方立壁を対象にせん断スパン比(0.5,0.57,0.67)が損傷量(ひび割れ長さとコンクリート剥落・欠損面積)と部材角の関係に与える影響を把握し,それを考慮したひび割れ長さ及びコンクリート剥落・欠損面積に基づく部材角の推測式を導出する。さらに,Deep neural networkモデルを用いた損傷検出器について,極広幅ひび割れの精度の良い検出,欠損部分と欠損上に壁筋が存在する場合においてコンクリート剥落・欠損領域として検出できない不具合の解決,及びコンクリート打放面上の損傷(ひび割れやコンクリート剥落・欠損)の検出精度の向上を図るために,教師データを再構築し再学習を行うとともに,入力画像への工夫を施す予定である。
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Causes of Carryover |
試験体製作に要する経費を他資金から支出するとともに,鋼製型枠を再利用することでその経費を減額できた。加えて,実験終了後の実大RC方立壁試験体の廃棄を次年度に延期したため,廃棄に係わる費用の支出を行っていない。さらに,当該研究を担当する学生が当初予定より増加したため謝金の支払いが不要となったことにより,助成金の一部を次年度に繰り越した。 実大RC方立壁試験体の製作,加力実験,廃棄に係わる経費,計測機器のひずみユニットの追加,計測アプリケーションの更新,実験結果の分析のための汎用解析アプリケーションの半年間レンタルに充当する予定である。
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