2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K04367
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
郡 公子 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 名誉教授 (20153504)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ファサード / 高性能窓システム / 自然換気 / 外気冷房 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ファサード性能評価のための熱負荷計算法の改良:ファサードの高性能化による非空調隣室からの熱負荷低減効果を適切に予測できる計算法を提案した。従来の隣室温度差係数法に対して、空調室と接する非空調室の室温を計算対象に加えた上で、(A)その他の非空調諸室を外皮に置換する方法、(B)その他諸室用の隣室温度差係数を熱損失係数から算出する方法を考案した。比較の結果、精度上は(A)が優れているが、実用性も考慮すると(B)がよいとの結論が得られた。 (2)自然換気制御の計算法の検討:多様な空調システムと建築の熱平衡計算に適するエクスプリシット法による計算は、自然換気により多量の外気が室内に侵入する場合解が得られないという限界がある。これに対して、便宜的定常状態を仮定する解法を導入して解決した。また、自然換気の下限室温制御や冷房中の自然換気禁止制御は冷房制御と干渉を引き起こす恐れがあり、これを防ぐ制御法と計算法を提案し妥当性を確認した。 (3)オフィスビルのファサードの地域適合性の評価法:地域により変わる高性能ファサードと自然換気・外気冷房の複合効果の評価法を提案した。無限量の換気が可能なときの熱負荷低減量に対する達成率を新たに定義した。ファサードを高性能化すると、自然換気条件が同じでも達成率が高くなること、暑熱地は、24時間可能な自然換気に比べ、外気冷房採用時の達成率が低く熱負荷低減量も低いことがわかった。 (4)住宅の外皮性能評価法の検討:高断熱外皮と暑熱対策の組合せの効果を、木造、RC造戸建て住宅に関して自然室温を用いて評価した。木造住宅は、冬の低室温発生を防ぐためにはRC造より高断熱とする必要があるが、夏により高温となるので自然換気量を増やす工夫も必要となる。RC造は室温の安定性が高く木造より室内環境がよい傾向にあるが、暑熱対策による日中の室温低下効果は木造より小さい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定の研究項目全てについて、多角的な研究を実施し成果を得られた。成果をまとめて、学会発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)高性能ファサードと外気導入制御の複合効果の評価法の開発:外気導入制御には、外気冷房のほかに、最小外気量制御、全熱交換器による熱回収があり、これらは自然換気と同様に、組み合わせるファサードの熱性能により効果が変わり、どのようなコントロール法を利用するかも重要である。高性能ファサードと外気導入制御の複合効果の実用的な推定法・評価法を開発し、その有効性を確認する。 (2)高性能ファサードをもつ環境建築のための設計用気象データの開発:気温上昇、日射量増加、湿度上昇などの気象の変化が進み、最近の気象の特徴を反映した設計用気象データは、高性能ファサードとこれと調和する空調システムの設計になくてはならないものである。1990~2020年の気象観測値にもとづく拡張アメダス実在年気象データの整備が終了し公開されたことから、これを用いて国内約840地点の設計用気象データを作成して公開し、地域気候に適する設計を可能とする。 (3)外部日除けをもつファサードの評価法の提案:近年、冷房負荷を抑制するために、Low-E複層ガラスとルーバーやバルコニーを組合せるファサードが増えている。ルーバーは複雑形状であることも多く、その最適設計が可能な熱負荷計算が求められている。そこで、複雑形状のルーバーの日射遮蔽効果をRadianceなどの詳細光計算ツールにより定量化し、その結果を一般的な熱負荷計算に反映可能とする方法を提案する。具体的には、光計算ツールにより求めて熱負荷計算に利用できる外部日除けの日射遮蔽効果の指標とその計算法・利用法を検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度に続き、コロナ禍で、研究発表の出張や建築調査を控えたために、次年度使用額が生じた。次年度の旅費として使用するほか、書籍・物品の購入に支出する予定である。
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Research Products
(6 results)