2022 Fiscal Year Research-status Report
言語バリアフリーと時間短縮を両立する多言語一斉放送システムの高度化に関する研究
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21K04371
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森本 政之 神戸大学, 工学研究科, 名誉教授 (10110800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 逸人 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (30346233)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 言語バリアフリー / 案内放送 |
Outline of Annual Research Achievements |
現状の案内放送の多言語対応では複数言語を順次放送しており,非常時には後から放送される言語を第1言語とする人の初動が遅れてしまう。この課題を解決する手法として,研究代表者らは多言語を同時に拡声するシステムについて検討してきた。2021年度までの研究で,3言語までであれば同時に提示しても高い単語了解度が確保できることが確認できたため,2022年度は2言語および3言語を同時に提示する条件における騒音の影響について,単語了解度試験により検討した。 騒音は公共空間で想定される特性を模擬したものとした。具体的には,時間特性は定常とし,周波数特性は空調機騒音を模した高域減衰型の特性とした。空間特性については,全体から広がって聞こえるように分散配置した5つのスピーカから互いに無相関な騒音を提示した。音声刺激として2021年度の実験で用いた日本語,英語,中国語,韓国語の4言語の単語を用い,2言語(日本語,韓国語)あるいは3言語(日本語,英語,中国語)を同時に聴取者の正面から提示した。聴取者は日本語を第1言語とする学生であり,提示される刺激に含まれる日本語単語を書き取らせた。 実験の結果,第1言語の音声を信号音,騒音と第1言語以外の音声を妨害音とした場合の信号対雑音比(SN比)が-3dB以上であれば,言語数によらず少なくとも80%以上の単語了解度が確保できることを示した。この結果は,許容できる騒音の音圧レベルの上限が,2言語同時の場合はそれぞれの言語の音声と同程度の音圧レベル,3言語同時の場合はそれぞれの言語の音声レベルよりも10dB程度小さい音圧レベルであることを示し,本研究で提案するシステムを実装するための音響設計において重要な知見を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の感染拡大防止の観点から,大規模な聴取者数の実験ができなかったが,最低限の聴取者数での実験は実施できた。また,2022年度は視覚情報を用いてターゲット言語の探索しやすさを向上させる方法を検討するための実験を予定していたが,準備段階に留まった。ただし,騒音の影響に関する実験を先行して実施できたことから,全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度はCOVID-19に関連する制限が大幅に緩和されることが想定されるため,2021年度および2022年度に実施した実験の聴取者数を増やす。また,視覚情報を用いてターゲット言語の探索しやすさを向上させる方法に関する実験と残響音の影響を把握するための実験を実施する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大防止対策による制限で2022年度に実施した心理実験の聴取者数は予定よりも少なくなった。これが次年度使用額が生じた理由である。次年度使用額はこの心理実験の実施のために用いる。
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Research Products
(3 results)