2022 Fiscal Year Research-status Report
気候変動適応計画のための波長別日射量を含む過去・現在・将来の長期気候データの開発
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21K04373
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
曽我 和弘 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (00336322)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 波長別日射量 / 長期再解析 / 気候変動シナリオ / 将来気象データ / 基準気候データ / 長期気候データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、気候変動に適応できる建築・設備の計画支援を意図して、気候変動下の室内環境や建築・設備のCO2排出等を予測可能にするため、申請者の将来気象データに、高解像度な過去・現在の長期再解析と将来の気候変動シナリオを合成する。また、これらに紫外から近赤外の波長別日射量を補充して、過去・現在・将来を一体化した長期気候データを作成し、建築環境シミュレーションに応用する。以上により、過去・現在・将来の気候変動下の建築環境シミュレーションを国内の5km格子ごとに実現し、気候変動に適応可能な建築・設備の計画を支援することを目的としている。 本年度は、主に次の1)~5)の研究実績が得られた。1)測定波長範囲が300-2500nmの分光放射計を太陽追尾装置に登載して、任意天候下の波長別全天日射量と全天日射量、および波長別天空日射量と天空日射量の測定を継続するとともに、測定値の信頼性を検証できた。2)任意天候下の波長別天空日射量の推定モデルを開発して、その有効性を検証できた。これにより、波長範囲が300-2500nmの波長別天空日射量を1nmピッチで推定することが可能となった。3)長期再解析であるDSJRA-55の気候要素(気温、湿度、日射量、大気放射量、風)のバイアス補正値に基づいて基準気候データを作成する方法を開発した。4)基準気候データに気候変動シナリオの気候要素の将来変化を合成することで、将来気象データを作成する方法を開発した。さらに、5)任意天候下の斜面波長別全天日射量を推定する基礎的なモデルを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)任意天候下の波長別天空日射量の推定モデルを開発して、その有効性を確認できた。これにより、天空日射量から300-2500nmの波長別天空日射量を推定することが可能となった。この研究成果は、日本建築学会環境系論文集の論文として採択され、2023年6月の論文集に掲載されることが決定した。 2)天空日射量から波長別天空日射量を推定するモデルの検証結果、任意天候下の斜面波長別全天日射量を推定する手法の提案と検証結果を日本建築学会九州支部研究報告会において発表できた。 3)DSJRA-55の気温、湿度、日射量、大気放射量、風のバイアス補正値に基づいて、基準気候データを作成する方法を開発した。さらに、基準気候データに、地球温暖化予測情報第8巻に基づく気温、湿度、日射量、大気放射量、風の将来変化を合成することで、将来気象データを作成する方法を開発した。これらの研究成果は、日本建築学会の九州支部研究報告会において発表できた。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って研究を遂行する。特に、波長別直達日射量の推定モデルと斜面波長別全天日射量の推定モデルの構築に向けて、波長範囲が300-2500nmにおける波長別全天日射量と波長別天空日射量の連続測定を継続し、高品質な測定値の蓄積を図る。
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Causes of Carryover |
分光放射計および日射計の出力の経年変化の影響を分析する必要が生じた。そのため、2022年度中に実施予定であった測定器の校正を2023年度に延期した。それにより、過去2年間における測定器の出力変化を分析する方針とした。そのため、2022年度は校正費用の支出がなかった。次年度は、分光放射計および日射計の校正を実施する。
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