2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of aerosol transmission dynamics and estimation of potential risks of transmission using mathematical models.
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21K04377
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
堀 賢 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (80348937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田邉 新一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30188362)
尾方 壮行 東京都立大学, 都市環境学部, 助教 (90778002)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エアロゾル感染 / 水平伝播 / 数理モデル / 換気 / リスク評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
堀(順天堂大学大学院)は、清水建設株式会社技術研究所と早稲田大学田辺らと連携し、エアロゾルが空間に拡散する様式をシミュレートする数値流体解析(CFD)に対して簡易パラメーターを開発し、飛沫核と飛沫による感染確率を予測する手法を開発し、従来法より演算にかかる時間を大幅に低減させつつも、予測値の分布範囲がほぼ同一の予測を得ることが可能になった。この成果は、国際英文誌 Indoor and Built Environmentに投稿した(4月28日にアクセプトの報告があった。来年度の実績として掲載予定)。またこのシミュレーション方法については、特許を出願している 尾方(都立大学)は、Kurabuchi、Tanabeらと共著で、SARS-CoV-2感染症対策のための空調・衛生設備の運用についてまとめ、レビュー論文を出版した(Kurabuchi T, Yanagi U, Ogata M, Otsuka M, Kagi N, Yamamoto Y, Hayashi M, Tanabe S.: Operation of air-conditioning and sanitary equipment for SARS-CoV-2 infectious disease control. Japan Architectural Review. 4(4): 608-620, 2021)(https://doi.org/10.1002/2475-8876.12238)。この内容は、国際的な文献検索をもとにしており、最新の新型コロナウイルス感染症に対する感染制御のエビデンス集とし注目を集めている。 田辺(早稲田大学)は、Morawska Lと他37人の著名な国際的研究者とともに、A paradigm shift to combat indoor respiratory infection: Science, 14th May, 2022(https://doi.org/10.1126/science.abg2025)に屋内における呼吸器感染症対策のパラダイムシフトが起こりつつあることに警鐘を鳴らした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
堀(順天堂大学大学院)は、病原体の担体となったエアロゾル粒子の直径を、感染例の胸部CT画像をもとに好発部位を特定し、病巣周囲の気管支内径から推定を試みた。当初は3D-CT画像の予定であったが、通常のCT画像から好発部位を特定することで、疑似的に気管支内径を推定する方法へ変更した。50例の新型コロナウイルス肺炎では、主に呼吸細気管支から終末細気管支を中心に炎症病変が分布していた。既報から気管支内径は0.5-1.0マイクロメートルの範囲で存在していることがわかった。 尾方(都立大学)は、エアロゾルの挙動と伝播のメカニズムに関する研究調査として、国際誌に投稿された複数のクラスター事例について検証を行い、リスク因子について「COVID-19 infection risk assessment considering concentration distribution in indoor environments」として国際学会Healthy Building 2021-Americaで、「集団感染事例調査に基づく室内用途別感染対策の考察」として空気調和・衛生工学会等の国内学会で発表を行った。(落合、尾方、堀、田辺他)。加えて、エアロゾル制御に関する文献調査により、病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2022(日本医療福祉設備協会刊)のAppendixに「エアロゾル感染対策に関するエビデンス集」として発表した。 田辺(早稲田大学)は、模擬咳発生装置を用いた実験とCFDにより、エアロゾル粒子の動態を解析する予定であったが、堀による感染伝播に寄与する粒子径の特定プロセスが途上であること、模擬咳発生装置(受注生産)の制御部分であるICチップが半導体供給不足の影響を受け納品が遅れたことから、事前の条件検討に留まっている。R4年度から本格的な解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度は、R3年度分に予定していた模擬咳発生装置を用いた実験を行う予定である。 課題(A):エアロゾル感染経路研究 堀は、前半期に肺内の好発領域に到達しうるエアロゾル粒子の粒径を、数値流体解析(CFD)を用いて同定していく予定である。さらに尾方と共同し、有効なエアロゾル伝播防止策をリスクスコアに基づいて選定し仕様を策定する。尾方は、実際に順天堂医院で発生したCOVID-19のクラスター事例についての詳細情報を堀から情報提供を受け、数学的モデルを作成し、CFD解析を使って室内伝播についての建築学的リスク評価を行い比較する予定である。これまでのところ、多床室での院内伝播率は、竣工年が1993年の病棟の方が2015年の病棟よりも高かった。建築的構造が、感染リスクに及ぼす景況について明らかにしていく予定である。田辺は、エアロゾル粒子の動態について、模擬咳発生装置を用いた実験およびCFDにより解析する。さらに、COVID-19重点病棟でPIV(Particle Image Velocimetry)測定等を行いシミュレーションとの差異を検証する。最近研究が進むCO2測定との互換性についても検討する。 課題(B):空気・飛沫・接触感染経路研究 堀・尾方は、エアロゾル以外の感染経路についても「対策を実施した場合」と「しなかった場合」のリスク評価を比較し、有効性の寄与度について定量化を行い、4つの感染経路の感染対策の寄与度について定量化を試み、リスク評価ツールの統合を目指す
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Causes of Carryover |
模擬咳気流発生装置(受注生産)については、制御部分であるICチップが世界的な半導体供給不足の影響を受け納品がR4年度に遅れたことから、次年度の計上となった。 また、新型コロナウイルス感染症の流行の影響により、研究責任者の所属する病院で院内クラスターが続発し、緊急対応のためにエフォートが確保できない期間が3回(都合5か月間)生じたことで、研究の進捗が遅れている。病院の感染対策に関与する人事を手厚くしたので、研究責任者の労務負担が軽減したこと、および新型コロナウイルス感染症の病原性が低下したことで流行の影響が相対的に減少してきており、今後は研究にかかわるエフォートを増やせる見込みがでている
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