2021 Fiscal Year Research-status Report
Conditions for Actively Selected Behavioral Adaptation Means in Air-Conditioned Offices
Project/Area Number |
21K04378
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中野 淳太 東海大学, 工学部, 准教授 (30350482)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 熱的快適性 / 温熱環境適応 / 行動的適応 / 着衣調節 / 滞在状況 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍でオフィスにおける実測調査が困難であったため、大学キャンパス内の空調されたラウンジにて行動的適応の調査を行った。調査期間は、2021/10/13~12/22までの毎週水曜日の計10日間、11:00~15:00の時間帯に行った。対象空間を見渡せる2階より行動観察を行った。20分間隔で滞在分布を記録した。また、利用者をランダムに抽出し、着席時刻、性別、年齢、グループ人数を記録した。適応行動を起こすたびにその内容と時刻を退席するまで記録した。 室内全域の計12箇所で室内温湿度を測定した。調査時間帯の室温は概ね20℃前後であったが、12月にかけて外気温との温度差が開いていった。10月のエリア内の最大温度差は1.4℃であったが、12月では2.8℃であった。 滞在人数と滞在時間に相関はなく、日によって変動していた。各調査日の滞在時間の中央値は約35分であった。1~3人が約35分であったのに対して4人グループは64分で、有意に滞在時間が長い結果となった。 滞在中の環境適応行動として、上着の着脱、袖まくり、腕さすり、座席移動などが観察され、室温と外気温の差が大きくなる12月以降に増加する傾向が見られた。また、適応行動の種類は、82~94%を着衣調節が占めていた。滞在時間と行動回数には正の相関があり、滞在時間が長いほど適応行動を積極的に行う傾向が見られた。4人の滞在時間が最も長いものの、行動回数は1~2人グループより有意に減少しており、大人数でいることは適応行動の阻害要因になっていたと考えられる。 各月の平均着衣量は10月0.59clo、11月0.70clo、12月0.78cloとなった。室温との相関が最も高く、ラウンジに来る前に教室等で着衣を調節していたためと考えられる。着衣変位量は着衣量と強い正の相関があり、ベースとなる着衣量が多いと、滞在時間中の着衣変位量も増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オフィスでの調査実施はできていないものの、座席を自由に選択できる空調空間における秋季から冬季にかけての適応の実態が調査できた。適応の阻害要因となりうる要素も調査結果から明らかになっている。同様の調査を夏季から秋季にかけて実施することで、環境変化の方向の異なる適応(暑い側/寒い側)に対する実態が明らかになると考えている。 国内の文献を中心に文献調査を進めているが、引きつつき海外の文献も含めて調査を進める。また、国際学会を通じた情報交換もコロナ禍で困難であったが、次年度以降、積極的に進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、オフィス以外の場所を調査対象としたことで、本研究における課題が見えてきた。コロナ禍の影響により、オフィスにおけるワークスタイルが変化してきている。在宅ワークとテレワークの併用が増えることで、オフィス空間の使われ方の転換期にある。現段階で明らかになったことが、今後は応用が難しくなる可能性もあり、調査対象の選定を慎重に行う必要がある。 また、学生同士では見られない、同じ空間の利用者同士の関係性がオフィスにはある。例えば上下関係であったり、お互いが同僚として見知った仲間であったりすることが適応行動の選択に影響を与えるおそれがある。空間や適応手段の仕様そのものが適応に与える影響を調査するには、利用者同士の関係性を限定しない方がよいと考えられ、今後は調査方法にそのような考慮が必要と考えられる。 当初の計画では被験者実験を行う予定としていたが、その手法の妥当性を再度検討する。実験室という狭い空間では、複数人同時で実験を行った際に、互いの行動が目に入る。自由に調節してくださいと伝えても、他者の影響を排除することは難しい。環境変化に対して自然に行われる適応行動の調査には、被験者(利用者)に作為を感じさせないことが望ましい。なるべく実環境における利用者の自然な適応行動の特性を明らかにできるよう、調査手法を見直す。
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