2023 Fiscal Year Annual Research Report
A Literature Research on Urban History -Centering around the Succession of Hellenistic Foundations in the Middle East and North Africa
Project/Area Number |
21K04389
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松原 康介 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00548084)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダマスクス / アレッポ / ビザンティン / イスラーム / ローマ遺跡 / スーク / 継承 / アルジェリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中東・北アフリカ地域においてギリシャ・ローマ時代に構築された計画都市の遺産(ヘレニズム基盤)が、後年のイスラーム時代から現代にかけ、いかに継承されてきたかを明らかにすることである。コロナ対応を踏まえ、文献研究中心に実施する。 最終年度となる2023年度は、ダマスクス及びアレッポのヘレニズム基盤の老朽化と変容がイスラーム時代とともに開始されたという定説に対し、①老朽化と変容が既にビザンティン帝国末期に始まっていたこと、②イスラーム時代初期にはむしろヘレニズム的な都市建設が行われていたこと、等が明らかとなった。①については文献から、ビザンティン帝国末期には地震により舗装道路が破壊され、その修復に用いるべき石材の流通も停滞していたという事実を確認した。②については文献研究に加えて、事例の一つであるレバノンのアンジャール遺跡の現地調査も実施出来た。また、イスラーム時代には最も大きな変容が見られたが、これはイスラームに根差した商習慣に対応し、ローマ時代の沿道型大型店舗から個人経営も可能な小規模店舗に細分化されていったことが仮説的に理解された。これらの知見は、現在の都市計画、特に多文化に配慮した旧市街整備を考える際の指針となる点で重要性を持つ。 3年間の期間全体としては、ダマスクス及びアレッポの都市通史に関する文献研究が進展したことで、ヘレニズム時代からイスラーム時代への都市空間の重層化の過程に関する解像度を高めることが出来た。また、アルジェリアのドゥジャミラ、イッポーヌといったローマ遺跡のヘレニズム基盤についての現地調査を行い、現代における都市計画、観光政策上の位置付けについても明らかにした。2023年には別資金によりダマスクスの現地調査を実施することが出来たので、今後は本研究の文献研究による成果と組み合わせ、都市空間の成り立ちをより具体的に明らかにすることが期待される。
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