2021 Fiscal Year Research-status Report
「景観まちづくり史」研究の概念構築と体系化に関わる基礎的研究
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21K04392
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松井 大輔 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80709816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 彰 大阪大学, サイバーメディアセンター, 特任助教(常勤) (40885464)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 町並み保存 / 景観保全 / 歴史的市街地 / 官民協働 / まちづくり / 景観まちづくり史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦後日本の各地で展開した景観保全の制度や活動を歴史的視点から捉え、その結果としての景観変容を含めた全体像を「景観まちづくり史」と定義し、その概念構築と新たな研究分野としての体系化を目指すものである。初年度(2021年度)は、先行研究の悉皆的なレビューを行うとともに、目的a「行政による景観保全に関わる諸制度の歴史的経緯」を中心に、目的b「市民による景観保全活動の歴史的経緯」と目的c「景観保全における行政と市民の関係変化」、目的d「景観の実態と変容」について調査・分析を行った。具体的には、当初から対象地に挙げていた新潟市において、信濃川沿川地域における景観計画特別区域の策定経緯と行政・住民の関係変化について分析を行った。策定時に継続課題とされた高さ制限の基準値について十分な議論が行われなくなったことで、行政と景観保全を進める市民との間で考え方の相違が生じる過程を明らかにした。同様に、京都市では祇園新橋地区について文献調査と行政・市民団体などへのヒアリングを実施し、景観変容の分析に必要な古写真の収集に努めた。また、先行研究レビューや地域との関係性から、新たに石川県小松市と兵庫県たつの市を対象に加えることとした。小松市では「こまつ町家認定制度」という町並み景観の保全制度の成立過程を分析し、景観変容を明らかにした。さらに、たつの市では国の重要伝統的建造物群保存地区に選定される龍野地区における官民協働の経緯を明らかにした。これらの研究成果は、目的e「「景観まちづくり史」研究の概念構築と体系化」を検討する時の材料としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて十分な現地調査を実施することは困難であった。しかし、オンラインツールを用いた調査で可能な限りの情報収集ができたことから、この問題に対するフォローはできたと考えている。 また、研究内容としては、当初から想定していた事例対象地のうちの複数都市と、新規に対象地として加えた複数都市における分析を実施し、研究成果を蓄積できた。一方で、当初に予定していた全国的な景観保全の諸制度の歴史的経緯については、全容を明らかにしたとは言えない状況にある。以上のことから総合的に判断し、「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も新型コロナウイルスの感染拡大状況は改善されていないが、十分な感染予防対策をした上で現地調査することについては、実施しやすくなったと考える。したがって、現地調査を積極的に実施することを想定し、その準備を進めたい。これを前提に、2022年度は各事例における調査と分析を推進したいと考えている。 2021年度に研究対象地とした新潟市・小松市・京都市において分析を深めるほか、当初予定地であった佐渡市や飛騨市における調査・分析も推進する予定である。小松市では、こまつ町家認定制度による景観の変容を歴史的建造物の悉皆的調査から把握する予定である。京都市では、市民と行政の関係性を協働の観点から分析するとともに、景観の変容について古写真と現在の比較分析を行う予定である。また、全国的な視点からは制度の展開経緯を整理しつつ、最新の仕組みである「文化財保存活用地域計画」の実態を明らかにしていく予定である。また、1975年に始まった重要伝統的建造物群保存地区について、修景事業や周辺地域の保全の実態から運用状況と景観変容の分析を行うことを考えている。
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Causes of Carryover |
初年度(2021年度)は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、現地調査を実施することを見送った。そのため、「旅費」として計上していた予算の大部分が使用できなかった。また、現地調査で用いるためにiPadを購入する予定で予算を計上していたが、現地調査を実施しなかったことを受けて、こちらも購入を次年度の現地調査開始にまで見送ることとした。以上が、次年度使用が生じた主な理由である。 したがって、次年度(2022年度)の使用計画としては、主に現地調査に関わる旅費と現地調査において使用する機器の購入に次年度使用額に該当する予算を使う予定である。これとともに、2022年度の予算も計画通りに使用する。また、現地調査で得られた膨大な情報を整理する時の臨時業務に対する謝金や、研究成果をまとめた論文の投稿費及び発表に関わる旅費として使用することを考えている。
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Research Products
(2 results)