2021 Fiscal Year Research-status Report
モビリティがル・コルビュジエの都市計画に与えた影響に関する研究
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21K04399
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
松田 達 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (80624759)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ル・コルビュジエ / モビリティ / ガブリエル・ヴォアザン / アンドロ・シトロエン / 航空機 / ユルバニスム / 都市計画史 / 近代建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代を代表する建築家ル・コルビュジエが、船、自動車、飛行機といったモビリティから受けた影響及び、その都市計画への関連性を明らかにしようとするものである。 初年度の令和3年度は、本研究全体の基盤を整えるとともに、具体的な調査に加え、学会大会発表も行った。具体的には、第一に、モビリティと都市計画との関係をより広いパースペクティブから捉えつつ、まずは基礎的文献を収集した。特にアルベルト・マリオ・ソルダティーニの書籍を見つけ、レオナルド・ダ・ヴィンチの理想都市案をモビリティ的側面から大胆に読み取れることを再確認したことは、本研究の内容をより長スパンの都市計画史のなかに位置づけることを可能とするだろう。第二に、自動車史と建築・都市計画史との接点についての調査を進め、また日本自動車博物館での調査を行い、シトロエン及びヴォアザンとル・コルビュジエの関係を軸に進めた研究内容の発表を、日本建築学会大会にて行った。学会大会発表では、ル・コルビュジエと自動車の関わりの2つの側面、量産住宅のモデルとしてフランス版フォードとしてのシトロエンを扱っていた側面と、個人のセレブリティの観点からヴォアザンの自動車を重視していた側面を明らかにした。第三に、1910年代から1920年代頃まで、特にモビリティを強く意識していたと考えられる『建築をめざして』を執筆する前後の、初期のル・コルビュジエの行動について、日記や書簡も含めて調査を進めた。 コロナ禍のため、予定していた海外調査を行うことは出来なかったが、全体的に研究を進める順番を調整し、文献調査を中心に研究を進展させた。次年度は、さらなる文献調査を継続的に進めるとともに、できる限り海外現地調査を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究全体の基盤となるような資料を収集することができ、またモビリティ、ル・コルビュジエ、都市計画という、一見距離があるように見えるキーワードからなる研究の全体像をあらためて確認することができた。海外現地調査は、コロナ禍における大学の対応方針により行うことができなかったが、国内では20世紀初頭のクラシックカーを数百台保有する石川の日本自動車博物館の見学・調査が出来たことで、自動車史の大きな流れを現物を見ながら具体的に把握することが出来た。あわせて日本建築学会大会では、モビリティ史的側面から見たル・コルビュジエについての発表を行うことが出来た。そのため総合的には、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、引き続き資料収集、文献調査を進めるとともに、ル・コルビュジエとモビリティとの関わりを日記などから年月日単位で詳細に分析していく。自動車に加え、航空機との関連を調査するため、ル・コルビュジエがパリを一時的に訪れた1908年頃のこと、1915年頃のこと、さらに南米でサン=テグジュペリに出会い、アルゼンチンからパラグアイを飛行機で飛んだ1929年頃を重点的に調査したい。 海外現地調査は、今年度行えなければ、研究としては遅れが生じざるを得ない。出来るだけ現地調査を行うことができるよう、コロナ禍の状況が良くなることを期待したい。モビリティ史では蒸気船以降の船の歴史も早めに調査し、19世紀末から20世紀初頭にかけてのモビリティ史の軌跡を明確にすることで、ル・コルビュジエにおけるモビリティの意義を、より明確にしていきたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 最大の理由は、海外現地調査がコロナ禍のため不可能となったためである。その部分の金額の一定部分については、先に進められる別途研究部分に用いた。 (使用計画) 令和4年度の研究費は、引き続き研究上必要な国内外の文献購入費用、文具、ハードディスク、博物館などの入場料、国内旅費、及び、海外現地調査のための旅費に使用する予定である。
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