2022 Fiscal Year Research-status Report
モビリティがル・コルビュジエの都市計画に与えた影響に関する研究
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21K04399
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
松田 達 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 准教授 (80624759)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ル・コルビュジエ / モビリティ / 都市計画 / シトロエン / 航空機 / 近代建築 / パトリック・ゲデス / レオナルド・ダ・ヴィンチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代を代表する建築家ル・コルビュジエが、船、自動車、飛行機といったモビリティから受けた影響及び、その都市計画への関連性を明らかにしようとするものである。 2年目の令和4年度は、ヨーロッパへの海外現地調査を行い、文献調査も進めるとともに、また学会大会発表や、学会誌での論文発表など、成果を積み上げていった。具体的には、第一に、初年度にはあまり手を付けられていなかった自動車以外のモビリティ、特に船と航空機とル・コルビュジエの関係についての文献調査を進めた。そのうえで、ドミノ計画と三葉機の形式的相同性の指摘や、南米での飛行体験の意義に触れたル・コルビュジエと航空機に関する研究内容を、建築学会大会で発表した。第二に、ル・コルビュジエから派生する人物も含めた研究を行った。ひとつは、都市計画へのモビリティの影響という面から考えた時に、その先行事例となるレオナルド・ダ・ヴィンチの理想都市構想に関する調査も進め、展覧会やシンポジウムも行った。もうひとつは、パトリック・ゲデスとの間接的な関連を調べ、ル・プレイ、エリゼ・ルクリュ、ゲデス、ポール・オトレ、ル・コルビュジエという5人の人物の関係についての論文を、都市計画学会誌で発表した。第三に、イタリア、フランス、スイス、ドイツ、ベルギーでの海外現地調査を行った。シトロエン博物館、トリノ国立自動車博物館、ヴォランディア飛行機博物館、レオナルド・ダ・ヴィンチゆかりの場所、パリ工芸博物館、ブルジュ航空博物館、ラ・ショー=ド=フォン、フランス国立自動車博物館、ポルシェ博物館などをめぐった他、現地でしか手に入りにくい、貴重な書籍等を入手した。 本年度は複数の方面から研究を進展させることができた。次年度は、継続した文献調査を進めるとともに、南米での現地調査も行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、多方面から研究を進め、文献調査と海外現地調査を行うとともに、学会大会、学会誌で研究成果発表を公開した。特にヨーロッパ諸国をめぐる海外現地調査は収穫が大きく、複数の航空機や自動車の博物館では、現地でしか得ることの出来ない情報を多数知ることが出来た。国内ではトヨタ博物館にも訪れ、ここでも貴重な資料を想像以上に多く見ることが出来た。国内外のモビリティに関する博物館に関しては、相当適度見ることが出来たと言える。 ル・コルビュジエと航空機の関係についての研究も進めた。ル・コルビュジエが最初にパリで飛行機の音を聞いた時期を、航空史とともに考えるなど、ル・コルビュジエとモビリティとの関係をより立体的に捉えることを試みた。また、ル・コルビュジエの都市計画とモビリティとの関係を、より広い視点からも捉えようとした。レオナルド・ダ・ヴィンチの理想都市構想に関連する調査では、都市を機械として考える視点を得ることが出来た。パトリック・ゲデスに関連する調査では、1920年代から1930年代にかけてのル・コルビュジエの思想の背景のひとつを知ることが出来た。さらに、横浜国立大学大学院の「都市空間研究会」においては、知人である文学研究者のアルチュール・ランボーと都市計画に関する研究発表のゲスト・コメンテーターをつとめ、文学と都市計画という観点からも考察を加えた。 海外現地調査に関しては、コロナ禍のため行えなかった1年目に予定していたヨーロッパ調査を2年目に行った関係で、当初2年目に予定していた南米調査は3年目の予定となったが、それ以外の進捗も含めて、おおむね全体的には順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、引き続き資料収集、文献調査を進めるとともに、南米での海外調査に向けて準備を進める。特にル・コルビュジエと南米の関係については、決して多くの文献があるわけではないため、研究遂行上の難所といえるが、これまでの研究ですでに複数のヒントを得ており、その観点から調査をすすめるとともに、実際に南米での調査を行うことにより、不明瞭だった点を明らかにしていきたい。 研究も3年目に入り、ある程度終わりを見据え、まとめと成果を出していく必要性を感じている。直前のヨーロッパ調査において調達することとの出来た海外図書も複数あるため、それらの読解も進めていきたい。さらには当初の問い、モビリティがル・コルビュジエの都市計画に与えた影響について、具体的な答えを与える方向に研究を進めたい。その他、溜まってきた資料やデータの整理を行い、図表化などの作業もできるだけ進めていきたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 最大の理由は、1年目にヨーロッパ現地調査、2年目に南米現地調査という予定が、初年度のコロナ禍により1年ずれて、2年目にヨーロッパ調査をしたことである。航空費用などの関係で、ヨーロッパ調査は南米調査よりも費用がより安く抑えられた。この部分の差額は南米調査に費やす予定である。
(使用計画) 令和5年度の研究費は、引き続き研究上必要な国内外の文献購入費用、文具、ハードディスク、博物館などの入場料、国内旅費、及び、南米現地調査のための旅費に使用する予定である。航空費用などがかさむと考えられる南米調査の費用には、次年度使用額を活用する。
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