2021 Fiscal Year Research-status Report
利用者希望型の地域施設の配置の効率性と公平性から既存建築ストックを評価する手法
Project/Area Number |
21K04417
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉川 徹 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (90211656)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 期待利用者数 / 離散選択モデル / 地域施設 / 公共施設 / 最適施設配置 / アクセシビリティ / ロジットモデル / 多摩ニュータウン |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では,戦後に大量に建設された地域施設の既存建築ストック(以下,施設建築ストックと呼ぶ)を活かした,少子高齢化やライフスタイルの多様化に対応する地域施設のあり方が求められている.本申請課題は,この観点から地域施設再編成計画に使えるツールとして,施設建築ストックの価値を,希望者だけが利用し(以下,希望者利用型と呼ぶ),利用確率が利用距離の増加に従って減衰(以下,距離減衰と呼ぶ)する需要を前提として,配置の効率性(社会の総効用が大きいこと)と公平性(効用の利用者間格差が小さいこと)のバランスに配慮して,定量的に評価する手法の開発を目指す.このため,利用距離,消費者余剰(経済学で用いる効用の指標),利用確率の3種の指標を対象として,(1) 効率性と公平性のバランスの観点から社会的意義(指標の最適化がもたらす利益は何であり,それを誰が享受するのか)を理論的に検討し,(2) 最適施設配置にもとづく地域施設再編成計画を市街地で立案して,(3) それを比較評価して適切な指標を検討する. 本年度は,この目的に向け,下記の研究を行った.第一に,上記の3指標の社会的意義に関する課題を解決すべく,理論的に検討した.申請者は既に,公平性を分析するために,ジニ係数を既往研究がある利用距離以外にも試行的に適用した.しかしジニ係数は集計値なので,上述の課題である地区間の公平性は分析できないという問題がある.そこで, 施設配置について,3指標の地区による有利,不利の分布を可視化して比較する手法を開発した.これによって,各指標の地域施設再編成計画における社会的意義を詳しく検討できるようになった.第二に,利用率が利用距離によって減衰することを前提とした立地ポテンシャルを発展させ,回遊行動に着目した理論的検討を進めた.第三に,生活時間に着目した地域施設の最適配置の理論モデルを検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルについては,他研究費によるものも含めて,これまでの理論研究,実証研究の成果をまとめて,世界的なオペレーションズリサーチの国際会議であるIFORSにて発表を行った.この発表によって,本研究課題の基礎となった以前の研究課題での成果を含めて,長年の関連研究の成果を奏覧してコンパクトにまとめることができた.コロナ禍の影響を受けて,オンライン開催であったために会場での直接の意見交換はできなかったが,逆にオンライン開催になったことによって,例年より出席者が多い中で発表が可能になり,出席者から有益な助言が得られた.一昨年度の学会発表における討論において指摘された,境界条件の処理に留意すべきであるとの指摘,実際の例について深化した分析を行うべきであるという指摘を踏まえて,理論的及び実証的な検討を進め,即地的比較にたどり着いた.この結果から,昨年度の課題であった,集計値としての比較だけでは,具体的にどの地点が有利になり,どの地点が不利になるのかという,地域公共施設の配置計画を考える上では非常に重要な観点からの分析が不可能であるという問題点を克服することができた.この結果を発表したところ,概ね好評を持って迎えられた.またこの分析中に,2つの指標の関数形を理論的に比較することによって即地的分析の結果を説明できる可能性があるとのアイデアを得ることができ,この研究を進め,初期的な結果を得て,学会発表に向けて準備を進めた. さらに,昨年度の研究において明らかになった,利用率が利用距離によって減衰することを前提とした立地ポテンシャルを定式化した結果を他研究費による成果と合わせて,日本建築学会計画系論文集に投稿し,査読付き論文として掲載された.これについては,さらに複数の施設をまとめて訪問する場合について検討を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)3指標による最適施設配置にもとづく地域施設再編成計画を市街地で立案 多摩ニュータウンの最初期開発地である東京都多摩市諏訪・永山地区を対象市街地とする.ここは,本研究課題の先行研究となる研究代表者等による研究によって小学校・中学校の統廃合の実態を長期的に把握してある地域である.さらに,3指標による効率性を追求した最適施設配置を具体的に求めて比較した実績がある.また,この対象市街地については,小学校の校舎を使用したコミュニティ施設の最適施設配置を算出するための計算システムを開発してあるので,様々なシミュレーションが可能になっている.そこで本研究課題では,これを発展させ,まず3指標をどのように加工して最適施設配置の目的関数を構成すれば,効率性と公平性のバランスに配慮できるかを検討する.続いて,これを用いた最適施設配置による地域施設再編成計画を立案する.このため,地方公共団体の統計書・地図収集と統計データ導入を行う. (2)得られた地域施設再編成計画を比較評価して適切な指標と評価手法を検討 上記(1)で得られた地域施設再編成計画を,これまで得られた3指標の社会的意義に関する知見を適用して,比較評価する.この際には,例えば順次建築物を撤去してゆく際にどのように評価すべきかなどの観点が含まれる.この観点の整理については,ゲーム理論を適用したモデルの援用の可能性を精力的に検討する予定である.これによって,3指標による地域施設再編成計画ごとに,それぞれの施設建築ストックの持つ価値が明らかになる.これを精査することで,適切な指標を選び,それを用いた施設建築ストック評価手法をまとめる. (3)成果のとりまとめと公表 成果をとりまとめ,学会発表およびウェブサイトなどを経由した社会への公表を行う.学会発表については,国際会議での発表の機会を得ることを目標とする.
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Causes of Carryover |
本年度は,主に理論的研究,さらに実証的研究の準備を行うことを想定して,PC及び人件費,データ購入費を中心に予算を立てた.実際には,本年度においては,理論的研究について予想以上の進展があったため,それを研究の主軸に据えることになった.また,実証的研究の準備については,他の研究費で導入したデータ及びPCを使用することができた.さらに,人件費については,実証的研究の準備に主に支出する予定のところ,上記の事情から支出を見合わせた.以上を積算したところ,次年度使用額が生じた. 次年度においては,多摩ニュータウンの諏訪・永山地区を対象市街地とした実証的研究を本格的に行うことを想定している.このことから,データ整備などの作業が発生するため,それに関連する経費として,図書やデータの導入にかかる費用や,必要に応じてストレージを拡張する費用,さらには関連する人件費を当初予算以上に支出する予定である.さらに,コロナ禍の沈静化が期待されるため,積極的な国際会議発表を想定しているため,旅費や英語での発表の準備に関わる費用を予算以上に支出する予定である.なお,国際的な研究プレゼンス向上に向けた取り組みがいよいよ求められていることから,オープンアクセスの国際的学術雑誌への投稿準備を進めており,このために掲載料の相応の支出を行うことが求められるため,それへの充当の可能性も検討している.
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Research Products
(3 results)