2021 Fiscal Year Research-status Report
ユニットケア型高齢者施設の共用空間における環境構築に関する研究
Project/Area Number |
21K04419
|
Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
橘 弘志 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (70277797)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 高齢者居住施設 / ユニットケア / 共用空間 / 環境構築プロセス / 環境によるケア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ユニットケア型高齢者施設の共用空間に注目し、介護のための機能的側面からではなく、入居者やスタッフ等による環境構築を前提とした相互浸透的視点から、改めて施設の共用空間の意味や役割、課題を見出すことを目的とする。具体的には、以下のことを行っていく。(1)ユニットケア型特別養護老人ホームやグループホームを対象として、共用空間における環境構築の実態把握調査を行う。環境構築の状況、過程、目的などを含め、克明に記録する。(2)環境構築の実態が確認できた施設を選定し、入居者の生活実態調査を行い、一人ひとりの個別な生活展開がどのように共用空間の環境構築プロセスと関わり得るのか、その様相を把握・分析する。(3)日常生活における環境構築のプロセスが入居者の生活に及ぼす意味・役割を、相互浸透的視点からモデル化し、環境に支えられながら本人らしさを保ちつつ、主体的かつ社会的な生活の実現をサポートする「環境によるケア」の概念導出・提案へと結びつける。 現在新型コロナ禍の真っ只中ということがあり、多くの高齢者施設においては家族の面会であっても制限されていることも多く、施設側としてもコロナ対応に追われている状況にある。部外者である研究者が施設に赴いての実態把握調査を行うことが極めて困難な状況が続いているため、今年度は現地調査のための体制を整えること、並びに、近年の高齢者施設の設計動向の把握に努めた。これにより建築関係の雑誌、医療・福祉建築協会の年次資料などから、近年のユニットケア型施設に対して、どのような設計手法が用いられ、共用空間の特徴が見られるのか、おおまかな動向を捉えるとともに、分析を進めるためのデータ化を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在はまだ新型コロナ禍の真っ只中ということがあり、高齢者施設においては家族の面会であっても制限されていることも多く、施設側としてもコロナ対応に追われている状況にある。従って、部外者である研究者が施設に赴いての実態把握調査を行うことが極めて困難な状況が続いている。本研究の最も核心的な部分が、現地調査によって高齢者施設の共用空間における環境構築の現状を捉えることであり、また観察調査を重ねることで、その構築された環境における居住者の生活形成プロセスを捉えることであるため、進捗状況としては遅れていると評価せざるを得ない。 現状としては、建築関係の雑誌、医療・福祉建築協会の年次資料などから、近年のユニットケア型施設に対して、どのような設計手法が用いられ、共用空間の特徴が見られるのか、おおまかな動向を捉えるとともに、分析を進めるためのデータ化を進めているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
進捗状況で述べた通り、高齢者施設における訪問・実態調査を行うことが困難な状況であるため、まずは現地調査に至るまでの社会的背景の確認と、近年設計・解説された施設空間の傾向の把握を進めていく。そして図面レベルで多くの施設の設計意図や空間分析を行い、建築空間のあり方から環境構築に関わる要素を抽出することを試みる。その上で、各施設の空間構成を踏まえたアンケート等の調査を行うことで、不十分でありながらも、環境構築の概要を把握する。また、新型コロナの感染状況を見据え、現地調査が可能な状況に移行したところで、少しずつ現地調査を開始する。
|
Causes of Carryover |
2021年度は新型コロナの感染状況が十分改善されることがなく、実際に高齢者居住施設に赴いての現地調査の遂行が困難であった。従って、2021年度に行う予定であった調査の必要経費として計上した旅費や人件費を使用することができず、次年度への繰り越し金が生じることとなった。 今後の使用計画は、やはりコロナの感染状況がどこまで沈静化するかによるところが大きい。まずは現地調査に臨むための機材を整えるなど準備作業を進めつつ、近年の設計事例の資料収集、アンケート調査の作成・実行・分析などを行う。感染状況が改善した場合には、当初の計画に従い、施設への訪問・視察のための旅費、現地調査遂行のための旅費・人件費などに充てる予定である。
|