2022 Fiscal Year Research-status Report
避難所機能高度化と住民の自主運営をめざす「避難所大学」啓発プログラムの開発と実践
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21K04424
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
平田 京子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (70228782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 孝重 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (20151342)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 避難所 / 住民主体 / 運営手法 / 防災教育 / 避難所大学 / ルーブリック / 文京区 / 茨城県神栖市 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害後の首都圏の避難所には避難者が殺到し、東京都では最大約200万人が生活すると想定されている(2022年想定)。避難所は既存建物が指定されていることから、設備や機能の質向上には時間を要するが、地域住民が主体的に運営することを可能にすることが重要で、これが災害後の社会的回復力を高める鍵になる。地域コミュニティの弱体化した都市住民の手で、電気等の途絶した混乱の中で始まる、過密な避難所生活を数ヶ月にわたり円滑に運営するのは非常に困難である。そして避難者に対する安全の確保や生命のかかった意思決定が随時行われる。特に大規模避難所の運営には、大地震発生前から住民主体の十分な準備が必要であり、地域コミュニティの活性化やキーパーソンの活用が鍵を握る。そこで本研究では、避難所の収容計画と運営のための住民に着目して地域活性度に応じた住民の意識啓発手法を開発、「避難所大学」と名付ける市民教育システムを構築し、その意識変容の効果計測を実施する実践型研究として実施する。日本最大級の避難所施設を有する茨城県神栖市(住民・行政意識が不活発)と文京区(運営体制があり、住民主体での準備途中)を比較しつつ行う。これらの研究から首都直下地震等に対する日本の避難所の質向上と共助に基づく生活復興モデルを世界に向けて発信することをめざしている。 当該年度は、コロナウイルスの感染状況下ではあったが、茨城県神栖市で1回実施(シリーズ2回目に該当)、文京区で応用編を2回実施した。参加者への調査から住民の当事者意識、現場の想定、意思決定力などの教育目標を設定し、各自がどこまで達成できたか、さらにグループとしての検討成果等を把握し、教育ルーブリック(達成目標)に基づく達成度の検証結果を学会発表した。またその間に本学に開設される妊産婦・乳児救護所の運営準備に本研究手法と成果を応用し、運営面の検討を学生と協働で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍が継続したため住民あるいは自治体側で延期されることが頻発し、実証実験の実施が遅延したのが理由である。しかしながら住民ワークショップ型の防災教育プログラムを年度内に2地域で合計3回実施し、両者の結果を比較して考察した。グループワークによる教育効果の測定と個人の意識変化をとらえ、どのようなことをきっかけとして自主的な運営意識が高まるかを計測している。それらの結果を学会発表にまとめ、報告した。 他方で、本研究の応用編として本学に文京区が開設する妊産婦・乳児救護所の運営準備にも研究成果を適用し、運営の詳細を立案することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大により、住民を集めての実証実験に影響が出ていたが、2023年度は5月より新型コロナウイルス感染症が5類に変更され、実証実験やヒアリング調査が通常通り実施できる見込みであり、これまで計画してきた実証実験計画を実行に移し、新型コロナウイルスへの感染防止対策を継続しながら、先方と協力しつつ実施する予定である。さらに実証実験が遅延していたためにデータが得られなかったが、データ取得が見込まれるため考察に注力する計画である。 特に実証実験を基に、結果を汎用化し、教育目標と達成度評価手法を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染状況がおさまらず、調査のための出張および実証実験で現地へ行くことが困難な状況が継続した。またコロナウイルス感染状況が影響し、予定していた研究成果の発表方式がオンラインに変更され、現地で発表するための出張旅費支出が生じなかった。実証実験の開催が当初の予定よりも少なくなっており、研究結果の分析・考察のための人件費等も支出が少なくなった。 2023年度にはコロナによる出張や実証実験の見合わせがなくなり、予定していた実証実験が再開できる見通しがついている。研究成果の発表形式も対面に戻り、本来の計画通りに支出するため、実証実験および考察のための物品費、旅費、学会発表費、人件費を中心とした支出を予定している。
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Research Products
(4 results)