2021 Fiscal Year Research-status Report
Theory and Development in Self-help Housing Policy: International comparison of group self built housing
Project/Area Number |
21K04425
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
早田 宰 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80264597)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 住宅 / グループセルフビルド住宅 / 相互自助住宅 / 住宅政策 / コミュニティ主導住宅 / 移住定住促進住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルフビルド住宅は世界の先進国でも類似の政策がある。さらに近年、都市縮退、グローバル化、難民の増加、都市貧困層の拡大、公助の限界等により新たなニーズが高まっており政策的議論が問われている。自助住宅は都市・住宅政策のオルタナティヴの政策として、その転換を考察することは、現代の公共政策の本質やあり方を明らかにする「映し鏡」となるのではないかと考える。 グループセルフビルド住宅、セルフビルドコミュニティ住宅、またはコレクティブセルフビルド住宅などの名称で呼ばれるものである。アメリカでは相互自助住宅プログラムがある。イギリスでは、「2015年セルフビルドおよびカスタム住宅建設法(Self-build and Custom Housebuilding Act 2015)」が成立した。さらに2016年住宅計画法では、ニーズを満たすための十分な「サービスプロット」(提供まで3年)の提供、「開発許可」を付与する条件の制定、地方自治体の義務を定めている。 日本ではまだこのような法制度はないが、移住定住促進住宅として、地方自治体によっては、セルフビルド、ハーフビルドの住宅助成制度を用意する場合がある。たとえば茨城県常陸太田市は永住を希望し、かつ定住促進住宅用地に自己の住宅を建築しようとする者で次のいずれにも該当する方へ市有地を無償譲渡し、転入促進助成金として100万円を出している。これらを使って受け入れ側と移住者が新たなコミュニティ住宅を建設することに道を開いている場合がある。これらの動向はコロナ禍により、地方移住、ワーケーションなどの流れと相互に関連しているケースもある。これらの新しいオルタナティブ住宅を求める動きについて、その実践コミュニティ、支援制度、ビルダー、住宅支援団体等の関係について考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカ、イギリス、EU、日本のグループセルフビルド住宅とその類似制度についておもに地方住宅政策と住宅建設支援団体の八視する情報から事例、進め方などについて基礎調査をおこなっている。そのタイプは供給方式から、①単一の土地をグループで私的に購入してメンバーに販売するパタン、②複数の区画をメンバーが個々に私的に購入するパタン(事前にレイアウト、デザイン、持続可能性などに取り決めを定める)、③住宅組合やグループが共同で敷地と住宅を所有するもので、居住者は完全な所有権はなく賃貸か共有権の一部を取得するもの、④共同住宅とするパタン⑤開発者組織または土地所有者が建設を管理するパタンなどがある。現在は、これらの新しいオルタナティブ住宅の事例を収集しリストを作成している。それをもとに今後、実践コミュニティ、支援制度、ビルダー、住宅支援団体等の関係について考察できるようにしている。セルフビルドは、企画、土地や建物の斡旋・仲介、住宅の設計、施工、さらに住宅設備や家具のリノベーション、DIYまで多様な関わり方がありうる。 日本においては入居者と移住・定住コーディネーター、サポーターが協力してリノベーション、DIYなどの活動をおこなう例がいくつかある(群馬県高山村など)、またそのような活動をおこなうNPO法人が地域ベースに設立されている場合もある(岩手県陸前高田市のNPO法人高田暮舎など)。今後さらにイギリス、EU,アメリカの事例についても典型事例を収集することで類型を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
日本における調査は、東日本大震災・津波後の岩手、宮城、福島の沿岸部の約30の自治体における移住・定住促進住宅、移住コーディネーター、サポーターが協力してリノベーション、DIYなどをおこなった事例があるかを悉皆調査をおこなう。オルタナティブ住宅政策に取組む適応可能キャパシティ、行政のコーディネート、住宅支援団体およびボランタリーセクターの人的資源、それらの地域格差等について考察する。 海外における調査は、コロナの状況を見定めつつ、2022年夏以後の海外渡航による調査を実施を検討する。アメリカにおける相互自助住宅プログラムの調査をおこなうとともに、イギリス、EUの動向を調査し、政策レスポンスについて比較する。たとえばイギリスでは2016年住宅計画法で地方自治体の政策レスポンスが義務化され、積極的に推進する地域(おもにイングランド)とそうでない地域の差異についてデータが公開され、積極的に格差是正をうながす政策評価が行われている。アメリカではこのような評価は目下みあたらない。日本では制度そのものがなく自治体の任意裁量、独自財源でおこなわれている。また国別の違いがある一方で、住宅政策の専門家、支援団体の中では、グループセルフビルド住宅、セルフビルドコミュニティ住宅、またはコレクティブセルフビルド住宅などについての国際的な知識統合やネットワークの動きが加速する傾向がある。これらの実態について、インタビュー調査、アンケート調査を併用しながら実態を把握し、公共政策のあり方、オルタナティブ住宅政策の位置づけについて考察してゆく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、2021年度は海外外術調査が実施できなかった。その予算を繰り越した。2022年5月現在、アメリカ、イギリスなどは渡航制限が解除されている。秋以後の現地調査の実施を検討し、前年度の予算を活用する。
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