2022 Fiscal Year Research-status Report
地方都市の地方創生を誘導するトランジットモール実現に向けた実証的研究
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21K04433
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
本田 豊 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (00823361)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トランジットモール / 中心市街地の活性化 / 交通社会実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は研究2年目であるが、新型コロナウィルス感染症の影響から、1年目に引き続き、日本でこれまでに数多く社会実験として実施されてきたトランジットモールに関する国内事例に関する調査を実施した。一方で、ドイツやフランスの海外事例調査は実施することができなかった。 トランジットモールについては、日本の都市においては、全国的にトランジットモールの導入を目指して交通社会実験は数多く行われてきたものの、日常的にトランジットモールが実現している金沢市や前橋市では、トランジットモールとなっている商店街を通行する歩行者が極めて少ないことから、本来トランジットモールがめざす都市空間のにぎわいが創出されておらず、一方で日曜日ごとに実施する那覇市では、トランジットモールではバスの便数を普段に比べて大幅に減らして運行するなど、歩行者の利便性が確保されているとは言えないことが明らかになった。 あわせて、国内でトランジットモールを実施している事例からは、本格実施への課題として、やはり周辺住民や商業者等の自動車利用に制限がかかるため、トランジットモールへの理解を得ることに苦労していることや、歩行者が道路空間を自由に通行できる本来のトランジットモールを実現するために、交通規制に対する交通管理者や交通事業者の理解を得ることに非常に苦労している実態が改めて明らかになった。 さらに、これまでトランジットモールに取り組んできたほとんどの都市において、にぎわいづくりに資する行政計画としての立地適正化計画や地域公共交通計画にトランジットモールが位置づけられておらず、トランジットモールの位置づけが強くないことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、国内の7都市を対象に、トランジットモールの計画や実施に関する文献調査を行うとともに、富山市、福井市、姫路市において、現地調査・ヒアリング調査を実施した。2022年度は、国内の都市を対象に、継続・追加してトランジットモールに関する文献調査を行うとともに、富山市、岐阜市、金沢市、那覇市において、現地調査あるいはヒアリング調査を実施した。 一方で、2021年度に続いて新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、国内においても「緊急事態宣言」あるいは「まん延防止等重点措置」が適用される地域が多く、特に上半期を中心に国内の自治体等へのヒアリングができない期間が長く続くとともに、ドイツやフランスといった海外調査も予定どおりに実施できなかったため、限られた文献調査で把握できる範囲でしか研究を進めることができなかった。あわせて、2022年度は学内で学科長の役務を担当したことにより膨大な学内業務量が増加したことから、研究に携わる時間が大幅に制限されてしまい、想定していたような進捗が望めなくなった。 したがって、トランジットモールの整備実現に向けた実務的課題の整理、トランジットモールの本格実施に結びつける方策の検討については、まだ十分な作業にかかれていない状況にあることから、2021~2022年度は当初の計画よりやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、引き続き新型コロナウィルス感染症の影響で実施できなかった国内事例に関する現地調査ならびにヒアリング調査等を行うとともに、ドイツやフランスの海外事例調査を実施することにより、文献調査も含めてトランジットモール整備につながる資料収集とその分析を踏まえて、日本におけるトランジットモールの本格的な実現に向けて、どのような形で進めていくのかについて検討したいと考えているが、これまでのトランジットモールに関する調査結果を踏まえると、今一度基本に立ち返り、国内外のトランジットモールについて類型化することも必要と考えており、研究の実施方法の工夫や内容の変更も視野に入れながら研究を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021~2022年度は新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、国内及び海外において「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が適用される地域や国が多く、国内外の都市への調査やヒアリングが実施できない期間が長く続き、さらに2022年度は新たに学科長就任後の学内業務の過多が原因で、当初の予定どおりに現地調査等を進めることができなかったため、旅費の支出が大幅に減少し、他の費目も連動して減少することとなった。 2023年度は、これまでに実施できていない現地調査等を実施するなど、当初の予定より遅れている研究の進捗を進めることにより、旅費やほかの費目を支出していく予定としている。
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