2022 Fiscal Year Research-status Report
高経年マンションにおける「一棟再生」実施手法の開発
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21K04440
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
藤木 亮介 明海大学, 不動産学部, 准教授 (20875463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小杉 学 明海大学, 不動産学部, 准教授 (30410856)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マンション再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は以下二点について研究を進めた。 一点目は、昨年度から実施している杉並区の高経年マンションにおける、一棟再生に向けた実践である。2021年度の検討においては、一棟再生を二期に分けて実施することを検討すると共に、その実施手法を当該管理組合に提案した。管理組合ではこの提案を踏まえ、二期工事の内の第一期工事を2023年度に実施すべく、2022年度にはその準備活動を行った。具体的には、第一期工事の基本計画・詳細設計、それに関わる数度の住民説明会、第一期工事の施工会社選定などである。この活動には藤木(研究代表者)も参画し、その活動過程の問題点などを検証していった。また、マンションの一棟再生には多くのステークホルダーが関わるが、管理組合は建築の素人であるのでそれらの調整を一手に引き受けることは難しい。そこで、今回の第一期工事では試験的にCM方式を取り入れ、一棟再生を円滑に進めるための実施体制を検討していった。これらの経緯や問題点については、日本建築学会建築社会システム委員会の傘下に組織された「マンションマネジメント問題ワーキンググループ(主査:藤木亮介)」において報告し、議論を深めた。 二点目は、マンションの一棟再生における専有部分の扱いについて整理・検討した。一棟再生の工事前後で区分所有者が変わらない場合(区分所有者が住みながら一棟再生を進める場合)は、一棟再生に専有部分を含めることは難しい。一方、区分所有者が変わる場合(例えば再生事業者が全戸を一括して買取り、再販する場合)は、一棟再生に専有部分を含めることの合理性が高い。このことから、前者は大規模修繕工事の延長線上にある一棟再生、後者は建替えのイメージで行う一棟再生と位置付けた。これらを踏まえ、一棟再生に向かうためのアプローチを検討した。この成果は2023年度日本建築学会大会学術講演会梗概としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在すすめている杉並区の高経年マンションにおける一棟再生事業が遅延している。その理由は、新型コロナウイルス蔓延のため、会議の進捗が予定通り進まず設計作業が遅延したこと、ならびに2021年以降(東京オリンピック以降)マンションの修繕工事業界は飽和状態にあり、施工会社選定が難航したことが挙げられる。この影響により、一棟再生の第一期工事時期が想定より遅れることになった。本研究は、当該工事の評価を含めて研究をとりまとめる予定であるが、工事時期が遅れたことにより研究のとりまとめもやむを得ず遅れる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、杉並区の高経年マンションにおいて一棟再生における第一期工事の設計作業を実践するとともに、マンション改修工事業者、マンション改修設計事務所などにヒアリングを行い、一棟再生事業の実施体制や工事計画上の留意点などを検証した。 2023年度は、第一期工事が実際に行われることを踏まえ、工事実施上の問題点などを検証する予定である。また、管理組合役員や居住者にヒアリングをし、一棟再生(第一期工事)の評価を行う。 さらにその上で、第二期工事に向けた問題点を整理し、その対策や方針を検討する。特に、第二期工事においては工事費用の捻出方法や、工事費用が捻出できない区分所有者の対策を検討することが重要になる。これらの方針を示し、一棟再生の実施手法を総合的に取りまとめていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延に伴い、当初計画していた調査が十分にできなかったこと、ならびにWEB会議やWEBによる発表が多くなり旅費の支出が少なかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 令和5年度は、令和4年度に不十分であった調査の実施、対面による会議、現場での検証、学術大会の現地参加などのために多くの旅費や研究経費が見込まれる。令和4年度に繰り越した額は、これらの費用、ならびに令和5年度に予定する研究項目の実行費用として、令和5年度交付額とを併せて執行する予定である。
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Research Products
(5 results)