2021 Fiscal Year Research-status Report
Verification of learning effect on architectural space characteristic by simultaneous experience of virtual space with a large number of people
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21K04446
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
下川 雄一 金沢工業大学, 建築学部, 教授 (90308586)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 建築設計教育 / 遠隔授業 / コミュニケーション / 仮想空間体験 / ソーシャルVR / 会話分析 / 形式知 / 感覚知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新たな建築設計教育手法に関する研究の一環として、没入型VRとソーシャルVR(S-VR)を併用した多人数での没入型仮想空間体験(S-VR没入体験)が建築空間特性に関する理解に及ぼす影響を実践的に検証することを目的としている。 検証方法として申請者が担当する大学院の授業(建築情報特論、2021年度前学期)を対象とした。履修者は7名で、授業の導入として授業の構成やS-VR活用の意義等を説明した上で、各履修者が興味を持ちVR空間体験をしたい建築作品を各々選定してもらい、授業前半ではそれらの建築作品について調査に基づいたスライド発表と意見交換を実施した。 次に、S-VR空間の準備・開設方法を授業内で説明し、課題として各々のS-VR空間モデルを準備してもらった。その後、1回の授業につき2~3作品を対象に、各建築作品のS-VR空間に全員でアクセスし、アバターで閲覧しながら発表と意見交換を実施した。開始時はモニター閲覧によるS-VRデスクトップ発表とし、10分程度が経ったらVRヘッドセットを装着してS-VR没入体験による発表と意見交換に移る形とした。 以上のように、①スライド発表、②S-VRデスクトップ発表、③S-VR没入体験発表の3種類の発表と意見交換(②と③は同一日内で連続実施)をそれぞれ実施した内容を全て記録し、授業が全て終了した後にその意見交換内容の分析を行った。分析は2種類実施した。1つ目は会話構造ダイアグラムによる質問や意見の着眼点や会話展開の可視化、2つ目は戈木グレイヒルによるGrounded Theory Approach(GTA)を用いた会話全体のカテゴリー関連図化である。これらの分析を通して、3種類の発表形式による意見交換の特性を比較考察した。 結果、①では形式知による意見交換が目立ったのに対し、③では感覚知による意見交換が目立ち、②はその中間的な様相であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、コロナ禍での遠隔授業下においてデジタル技術だからこそ可能な新しい授業の在り方を模索したいという思いから着想を得ている。建築意匠系の授業において、建築作品をスライドで説明し、必要に応じて意見交換を行うという形は少なくないと考えられるが、リアルスケールのVR空間を没入体験しながら説明や意見交換を行うのとでは質的な差があるかもしれない。 その問いを明らかにするため、特定の建築作品についての①スライド発表、②S-VRデスクトップ発表、③S-VR没入体験発表を通した意見交換をそれぞれ実施し、その会話分析から、参加者の理解の程度や意見交換の違いを分析し、S-VR没入体験の効果を確認するという方法で初年度の研究を実施することとした。その意見交換をより本質的なものとするため、S-VRという技術活用を通してより良く建築を理解したいという共通目的を共有できるグループを参加者として検証を行うこととした。すなわち、申請者が担当する大学院の授業であれば、それが可能であると考え、2021年度前学期の授業から実験的に上記①~③の形式による発表と意見交換を中心とした授業を組み立て、実施し、その記録に基づいて授業後に分析を実施した。 授業終了後の会話分析については、研究協力者である学生と打合せを重ねた結果、会話構造ダイアグラム化とGTAによるカテゴリー関連図という大きく異なる2つの方法で同一の会話を分析し、結果、①は形式知による意見交換、③は感覚知による意見交換が中心となるという特性の違いが見えてきたことは初年度における大きな成果と考えられる。しかし、①~③の発表と意見交換を同一の参加者とともに順に実施する方法だと、徐々にその建築作品の理解度が高まるため、意見交換の質の違いが純粋に発表形式による違いと考えられない面もあり、今後、より客観的・定量的な方法での実験・分析を重ねる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、昨年度の研究成果において、同一参加者による①~③の意見交換の質の違いを厳密に分析しづらいという課題が挙げられた。今後はより客観的・定量的な形で分析が可能な発表+意見交換の実験を計画する。現在、研究協力者の学生と検討を進めている段階であり、本報告の時点ではまだ研究計画を確定できていないが、案として以下の大まかな方針を検討しつつある。 ●昨年度のように授業の中だけで検証を実施するのは困難なので、別のかたちで被験者を募り実験を行う。●一人の実験参加者が1つの建築作品について意見交換に参加するのは①~③のいずれか1つとする。●1つの建築作品について、異なる被験者に対して①~③の各方法での説明と意見交換を行い、①~③の意見交換内容の比較分析を行う。対象作品数は今後検討する。●①~③の各方法での建築作品の説明時間や内容は同一とする。●①②③の各実験においては質問や意見交換のトピック数を限定し、揃える。
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Causes of Carryover |
・「旅費」については年度内の研究成果発表ができず、旅費の執行ができなかった。 ・「人件費・謝金」については、研究実験に際し、S-VRデータ作成や分析作業の補助としてRAを適宜雇用する想定をしていたが、昨年度の研究活動では授業の課題としてS-VRデータを履修者が作成し、分析作業も申請者の研究室に所属する4年生の学生が卒業研究として実施したため、謝金等の支払いが必要なくなった。 ・「その他」については特に支出する項目がなかった。
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Research Products
(1 results)