2021 Fiscal Year Research-status Report
Influence of sugar refinery industry on area development in Taiwan between the late Qing dynasty and the early Japanese administration
Project/Area Number |
21K04456
|
Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
辻原 万規彦 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (40326492)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 都市史 / 領域史 / 濁水渓 / 卑南渓 / 下淡水渓 / 台湾総督府 / 原料採取区域 / 台車軌道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「清朝末期の台湾の社会と地域の枠組みが,製糖業の導入によって,どのような過程を経て,日本統治期における台湾の社会と地域の枠組みに変容したか」を,「多量の新聞記事,旧版地図ならびに現地調査を組み合わせることによって解き明かす」ことである。 当初は,1年目の2021度は基本情報の収集と整理を行い,基礎を固めることを計画した。具体的には,次のような計画であった。①新式機械式製糖工場以前の製糖工場である「改良糖■」(■は,まだれの下部に「部」。以下同じ。)の位置の同定と甘蔗や砂糖の輸送のためのインフラに関する文献調査を行う。②台湾総督府文書など公文書に類する史料の収集と考察を行う。③祝辰巳(殖産局長や民政長官を歴任)の経歴や果たした役割と実績に関する調査を行う,ことである。 実際には,新型コロナウイルス感染症の影響で国外はもとより国内での出張が許可されず,現地調査は全く行うことができなかった。しかし,その時間を使って,インターネットを通じて収集できる資料/史料や台湾の書店から直接取り寄せた書籍などを多量に収集することが可能となった。さらに,これまでに収集した資料/史料も含めて,資料/史料などの内容の精査と理解に時間を費やすことができた。 その結果,研究対象地域の全てではないものの,中西部の濁水渓流域(彰化平野と嘉南平野の北部),東部の卑南渓流域(花東縦谷の南部),南部の下淡水渓流域(嘉南平原の南部と屏東平野)を対象に,「改良糖■」の立地と甘蔗や砂糖の輸送のためのインフラについて検討することができた。また,台湾総督府文書を用いて,製糖業が地域や領域に与えた影響について検討することもできた。一部の地域についての先行的な調査と研究ではあるが,用いる資料/史料や方法論の有用性を確認することができ,本科研費で遂行する予定の研究を実施できる可能性が一層高まったと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画を立案した当初は,新型コロナウイルス感染症の影響がこれほど長引くとは考えていなかった。見込み違いは反省すべきであるが,その中でも何とか当初の目的を達成できるよう鋭意努力した。 文献調査については,当初計画の通り,台湾を構成する平野部ごとに,彰化平野,嘉南平野,屏東平野,蘭陽平野,花東縦谷(花蓮地方と台東平野),桃竹苗丘陵の5つの領域に分けて研究を進めることとした。そのうち,彰化平野,嘉南平野の一部,屏東平野,花東縦谷の一部については,「改良糖■」(■は,まだれの下部に「部」。)の立地や交通インフラに関する文献調査,台湾総督府文書を用いた検討を行うことができた。本来であれば,現地調査を待って,その成果を入れ込むべきとも考えたが,研究成果の確保のためにも先行して査読付き論文として発表した(ただし,嘉南平野の一部と屏東平野については投稿中。)。ただし,当初は,2年目の2022年度以降で予定していた現地調査実施前までに全ての対象地域の文献調査を済ませる計画ではあったが,前述の地域以外はほとんど手を付けることができなかった。 また,当初は,新型コロナウイルス感染症の影響があっても,1年目の2021年度から国内での現地調査は可能と考え,祝辰巳(殖産局長や民政長官を歴任)の経歴や果たした役割と実績に関する調査を行う計画であった。しかし,本学では長く県外への出張が許されず,現地調査ができなかったこともあり,祝辰巳に関する研究はほとんど進めることができていない。さらに,2021年度の研究の進展によって,他にも研究対象とすべき人物が浮かび上がっており,「人」に関する研究体制を早急に整える必要がある。 以上のように,一部の地域については文献調査が手つかずのままであること,「人」に関する調査,特に現地調査が実施できなかったことから,「(3)やや遅れている。」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況が「(3)やや遅れている。」と判断することになった大きな理由として,2020年度で終了する予定であった科研費(課題番号17K06754,「戦前期の日本の影響下にあった地域における製糖工場の建設と地域開発の関係」)の補助事業期間を,新型コロナウイルス感染症の影響のために延長したことが挙げられる。延長を承認頂いた科研費による研究と本研究では重なり合う部分もあったが,延長した科研費による研究に注力したために,本研究の進度が遅くなった。しかし,2年目の2022年度以降は本研究のみに注力できるので,進度を速めることができると考えられる。 当初計画では,2年目の2022年度以降では,以下のように,現地調査を組み込み,研究を加速させることを予定していた。①台湾総督府文書など公文書に類する史料の収集,台湾日日新報などの新聞記事の補充作業,祝辰巳に関する調査など,文献調査を継続して実施し,基本情報の充実に努める。②「改良糖■」(■は,まだれの下部に「部」。)跡の周辺環境を確認するための台湾での現地調査と空中写真の収集を行う,である。 しかし,新型コロナウイスル感染症の先行きは未だ見通せず,台湾での現地調査については今年度中に実施できないこともあり得る。そこで,台湾での現地調査の実施が後ろ倒しになったとしても,十分な研究の成果を挙げることができるように,新型コロナウイルス感染症の下でのこれまでの工夫を活かして現在実施可能な作業に一層注力することとしたい。具体的には,これまでの知見を活かして,これまで検討ができていない地域(嘉南平原の中央部,花東縦谷の北部,桃竹苗丘陵など)を対象とした文献調査の進度を速めたい。また,祝辰巳をはじめとする「人」に関する調査では,研究の新たな展開を見出すためにも,今一度,台湾日日新報の記事を洗い直す作業を鋭意進める。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額(457,034円)が生じた理由の一つは,前述のように補助事業期間延長を承認いただいた科研費による研究に注力したためである。また,当初は国内での調査旅費と成果発表旅費として370,000円を計上していたが,県外への出張が許可されなかったために国内でも現地調査を行えなず,成果発表のための学会もオンラインでの開催となったために,旅費が不要となったためである。 2022年度の交付予定額と合わせた合計1,357,034円の使用計画は,次のように考えている。新型コロナウイルス感染症の影響から年度前半は台湾への出張は難しいと考え,データベースの利用や台湾の書店などから直接文献を購入することで文献調査の進度をあげたい。年度後半には,何とか台湾での現地調査を実施したいと考えて外国旅費を確保した。また,さすがに国内での資料収集のための出張はできると考え,さらに成果発表のための学会などにも参加できると考え,国内旅費も確保した。補助者に依頼する資料整理の作業量を増やして研究の効率を上げたい。 台湾日日新報データベース利用料120,000円。図書・各種資料/史料購入費200,000円。国内旅費(資料収集,東京方面など)350,000円。外国旅費(台湾,年度後半)350,000円。謝金140,000円。消耗品費(一般文具など一式)50,000円。その他(論文投稿費など)147,034円。
|
Research Products
(5 results)